目覚め
ぅうぁあぁあぁあっ!!そう唸り声をあげた自分の声で目が覚める。
なんだか、酷くずいぶん長い夢を見ていた気がする。重い目蓋をゆっくりと開けると、視界一杯に広がる眩しい光。あまりの眩しさに再び目を閉じる。
そしてもう一度覚悟を決めて目を開けると、そこはどこか部屋の中のようだった。
ここはどこだ?
頭を動かして周囲を確認しようとするが、少し動かすだけで首のあたりにひどい痛みが走り、一旦周囲の確認を諦めた。
一体、何があった?少し、まだボーッとする頭で自分の記憶を辿る。
そうだ!!玲緒奈は!?
急いで体を起こそうとすると、気の遠くなるような激痛が全身を駆け巡るが、それを押さえつけ、なんとか首だけを動かして周辺を見渡すが、玲緒奈の姿が見当たらない。近くに少女のような姿が見えたが、俺が動いたのを見ると急いで部屋から出て行った。
玲緒奈、 玲緒奈 ・・・!
全身がバラバラになるような痛みに耐えながら腕を持ち上げ、自分の寝かされていたベッドから出ようと体を動かす。しかし、まったく思うように力が入らず、直ぐにベッドから転げ落ちてしまった。
「ぐあ」
打ちつけた衝撃で、それまで耐えていた痛みが一気に押し寄せてきて、耐えようとするのも虚しく、意識が吹っ飛んだ。
次に、目を覚ますと、また、俺はベッドの上に元の姿勢で寝かされていた。あまりの体の痛さに、気が遠くなるような思いだが、それでも必死で耐えていると、俺に意識を失う直前の記憶が蘇ってきた。
そうだ、玲緒奈は間違いなく殺されたんだ。ニックの裏切りによって。玲緒奈は命をはって俺を庇って、ここまで転移させたんだ。俺があまりにも弱いばかりに。自分の弱さ、ニックの裏切りに気づけなかった間抜けさに対する情けない気持ちとニックと自分に対する激しい怒りが体中を駆け巡った。そうだ、俺は死んでもあいつに復讐すると誓ったんだ。
燃えたぎるような思いが、相変わらず続く全身の激痛を意識の片隅へと追いやる。命ながらえた今、復讐する機会を得られたことをありがたく思おう。玲緒奈は復讐などせずとも、俺が生きていればそれでいい、と言いそうな気がするが、それでは全てを失ってしまった俺には生きる意味がない。
それにしてもここは一体・・・?
そこでやっと周辺を複数の人影が囲っていることに気づいた。2、3人ほどの屈強そうな男達が俺を警戒するように立っている。その奥には90才くらいの、いや寿命を伸ばす延寿治療をしていなければ50才位だろうか、とにかく初老の見た目のおじいさんが何やら聴き取りにくい発音で、喋りかけてくる。
「#@_+#”_)?」
えらく、聞き取りづらい喋り方をする人もいたもんだ。
「「ぅお、 ぃあい!」」 申し訳ないがなんと言っているかわからない、そう言おうとしたが声もまともに出ないことに気づく。少し気を抜いたせいか、また全身の激痛の波が押し寄せてきて、あまりの痛みに「っぅああぁあ!!」と声にならない声をあげる。そうやって痛みに耐えていると、おじいさんが俺に近づいてきて手をかざして何かぶつぶつ言い始めた。
すると、先ほどまでの痛みが嘘だったように、急激に引いていく。こんな劇的な治療術があったのか、と驚きながらも
「「アあ、タスかっタ。また意識ガとぶかト思った。」」
なんだか音程がめちゃくちゃだがなんとか声に出してじいさんに礼をいう。お礼が伝わったのかそれかこちらに害意がないことがわかったのか、警戒していた男達が爺さんに何かを指示され、警戒を解き、1人を残して部屋から出ていった。
それを見ながら、そろそろ体を起こそうと腕とお腹に力を込めるが全然体が起き上がらない。どういうことだ??俺が混乱していると、爺さんが俺に向かって何か言い始める。
「#@#”_)_~~~#_~~~~+」
悪いが、全く聞き取れんな。最初は、この爺さんの発音が独特すぎて聞き取れないのかと思って注意深く耳を傾けてみたものの、途中からこれが全く別の言語であることがわかってきた。
「すまないが、どうやら全く違う言葉みたいだ。何を言っているのかさっぱりわかんないよ、爺さん。」
と俺が困った顔をして言っていると、爺さんも言葉が違うことを理解したのか、非常に困った顔をしながら、話す代わりに身振り手振りで俺に何か伝えようとしてくれる。それを何とか解釈するに、爺さんがさっきやったのはのは治療じゃなくて痛覚を麻痺させただけのようだ。。まあ、冷静に考えてみれば、治療できるなら最初から治療してるわな。
ということは、当面はニックへの復讐をしたくても、やりようがないというわけだ。
でもとりあえず、お礼だけでも伝えないとな。顔だけおじいさんの方を向けて
「「とにかく、本当に助かった。ありがとう。」」
と丁寧目に礼を言った。伝わったかはわからないが、爺さんが満足そうな表情を浮かべているので、伝わったと思う。
それにしても、俺は全く知らない遠い地にたばされたらしい。近年、北側世界の言語は基本的に世界語と呼ばれる共通言語に統一されており通じないとするとよほどの辺境地域の独立遅滞か南半球側の国家群くらいだ。基本的に南半球側と北半球側の移動手段は先だっての戦争以来ほぼ壊滅的な状態なので、今の体の状態といい、言葉が通じない土地といい、ニックへの復習までは、気の遠くなるような遠い道のりになるだろう。
でもやるべきことは決まっている。はやる気持ちはあるが、それをなんとか押し留め、まずは体の回復と言葉を覚えるところからだな。そう思いながら、先ほどから襲ってきている睡魔に抗えず、また目を閉じた。
俺強系ではないです。そうなるかもしれませんが、少なくとも、いきなり俺強いぜ!みたいなことにはしないつもりです。
器用なところもあれば不器用なところもある、すこし人間味のある主人公にしていきたいなと思っています。
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