プロローグ
少し、設定が難しかったかもしれません。
暖かく見守ってください。
それは夜の繁華街の路地裏、シトシトとふりつづく雨の中、あたり一面、赤で染まっている。そこには、3つの人影以外、人の気配はない。
20代と思われる、3つの人影のうち倒れ伏している1組の男女から流れ出るものが、地面を赤く染め上げていた。男の方は、まだ息があるのか同じく伏せている女に向かって何かを呻いている。
「玲緒・・奈・・・・。なぜ・・・俺なんか・・守って・・・」
そして、立っている方の人影に向かって、精一杯の声を出す
「どう・・してだ・・・ ニック・・・。なぜ・・玲緒奈を・・・」
立っている男が、冷えた声で答えた。
「なぜか、なんて知る必要はない。でも、そうだな。親友だったよしみで、少しだけ冥土の土産に教えてやるよ。
俺たちはな、もう・・・、どうしようもなかったんだ。アレが完成した時点でほとんど選択肢はなかった。
お前が、その使い道に反対さえしなければ、今も俺たちは笑ってただろうな。玲緒奈もこんなことにはならなかった・・・。だが、お前は反対しちゃあいけないものに反対したんだ。お前はもう不要ということだ」
その時、男、どうやらニックという名前らしい、の言葉が途切れた。ニックの耳元にあるカフス状の装置が点滅している。どうやら、何か通信が入っているようだ。
「わかってるよ。。もうこれ以上余計なことは言わねえよ。どうせ、死ぬんだしこれくらいいいだろうよ。・・・・・・。だからわかったって。すぐ、やるよ。」
そして、ニックは手元に持っていた、黒い銃の銃口を倒れている男に向けた。
「じゃあな」
しかし次の瞬間、
ニックに横方向から車で轢かれたように、壁まで吹き飛ばされ、壁の一部を崩壊させて、瓦礫の中に埋もれた。
ニックにむかって腕を伸ばしているのは倒れている女の方、玲緒奈と呼ばれていた名前の女性。かろうじて一命を取り留めて、衝撃波のような物を放っていた。
「タツキ・・・だけは・・ゴポッ、殺させ・・ない。」
倒れている男の方はタツキという名前らしい。
そして、玲緒奈がまだ生きていると気づいたタツキは玲緒奈に向かって必死で、呻き声に近い声で叫ぶ。
「玲緒・・奈!!お前・・だけでも・・逃げ」
「ダメよ・・あなたを・・・まもる・・」
しかし、玲緒奈はタツキに向かって今度は最後の力を振り絞って、手を掲げ、何かを唱え出す。
「座標・・指定。・・・バリア。」唱え終わると、タツキの周辺にバリアと呼んだ、ドーム状の膜ができる。どうやら玲緒奈は空間を操る異能者らしい。
そして、立て続けに異なる言葉を唱え始める。
「空間・・・転移、第一・・・座標確定。・・・第二座標・・確定。」
その時、先ほど吹き飛ばされてできた瓦礫が動き、中から、ニックが何事もなかったかのような格好で出てきて、すぐにタツキに銃口を向け赤いビームを飛ばした。しかし、赤いビームは先ほどのバリアに弾かれる。
「ちっ。まだこんな力を残してやがったか。」
そう言いながら、玲緒奈の方を睨み、銃口を玲緒奈へと向けようとする。
「やめ・・ろ・・。やめ・・・てくれ・・・。玲緒奈だけは・・・」
「うるさい。どうせ二人とももう死ぬんだよ!」
その時、小さく詠唱をしていた玲緒奈が、詠唱を完成させつつあるのか、先ほどのバリアの内側に別のドーム状の膜ができる。
「くそっ、悪あがきすんじゃねえっ!!」
ニックが焦ったように銃口を玲緒奈に向け引き金を引く、その時、
玲緒奈が、タツキの方を向いてなけなしの笑顔で呟く「生きて・・・タツキ・・・転移開始!」
言い終わると詠唱が完成したのか、タツキの周辺を包むドームが発光しはじめた。だが同時に、ニックの銃口から赤いビーム状のものが発射され、玲緒奈の頭を貫く。その瞬間バリアはパリンっという音と共に壊れる。ニックがすぐさま銃口をタツキのほうに向け、引き金を引こうとするのが見えるが、タツキにはもうそれに抵抗する力もない。ただ、タツキはなけなしの力で、くぐもった声にならない声で、ただ吠える
「絶対に・・お前だけは・・・死んでも許さ・・・ねえ・ ニックぅううう」
ニックの中からビームが発射されると同時に、タツキがいた空間には何も残されていなかった。そこには、一人立つ男と、血を流して、事切れている女だけ。
「くそっ!間に合わなかったか!」
また、ニックの耳元にあるカフスが点滅する。
「うるせえ!玲緒奈がまだあんな力を残してやがると思ってなかったんだ。でも、もうあんな状態じゃどの道、タツキももうすぐ死ぬよ。・・・・。だから約束は約束だ、これで俺の方の条件は飲むんだよな?わかったよ、一応、死んでるかどうかは確認するって。・・・・え?なんだって?あいつがいなくなった??・・・・。わかったよ!探し出して、殺ればいいんだろ!!その代わり、ちゃんとさっきの条件と報酬は約束しろよ!」
そういって、カフスの接続を切る。
「一体なんだよ。ただ、いう通りにすればいいだけだっただろうが!どいつもこいつも、なんでこんなに分からず屋ばっかなんだよ!!」
ドンっ、と壁を叩くと、壁は砂でできていたのかと思うように大きく凹み、剥がれ落ちる。
ニックは、冷静さを取り戻すためか、大きく深呼吸して、頭を一振りした。
「まあでも、しかたねえよな。そうする以外ねえんだから。恨むなよ、玲緒奈、タツキ。」
最後に、倒れている玲緒奈と、タツキのいた空間を一瞥し、ニックは路地裏から去っていった。
それと同時期に、この惑星の裏側、元は栄えていた機械都市だったのだろうか、入り組んだ建物が立ち並んでいるが、今は荒廃しきってジャングルのようになった土地に人一人を覆うサイズのドーム状の膜が出現していた。その周辺にいた一人の少女が、驚きで声もあげられずに口をぱくぱくさせている。
ドームが消えた後には、血だらけで今にも死にそうな、虫の息をした黒髪の男が倒れいた。男は少女の存在に気づいたのか、少女の方を見て何かを呟いている。少女は怯える様子を見せながらを男の元へと近づき、何やら声をかけ、何処かへとすぐに走り去っていった。
男は、何か諦めたような、そんな表情で、気を失った。
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設定はなかなか難しいですが、これからも頭フル回転で作っていきます。