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睡眠不足勇者の日常  作者: 夜霧
一章 寝不足勇者と夜の異世界攻略
18/54

18.最強勇者の剣術事情

 

『おい、ユート。お前には剣術の才能はない』


『ちっ、分かってるよ。んなこと』

 

『まず致命的に身体能力が低いな。白魔で強化しなければ最低ランクの魔王にすら劣る』


『そこまでかよ……』


『まぁ戦いが無かった場所から来たからだろうが……とりあえずそれはいい、お前は自前の固有魔術で無理矢理白魔術を使えるからな、ただの黒の勇者だったら終わっていた』


『あのクソ女神め……受験シーズンの中学生に何させてくれてんだ……』


『ジュケン……というのは分からんがまぁ何かやることがあったのは分かる。そしてそのために一ヶ月でこの世界から出る事を目指してる……それで良いな?』


『あぁ、さっさとおさらばしたいね。こんな世界』


『……これでも良い世界だったんだがな……。まぁいい。お前の所の神に頼まれたから役目は果たそう』


『役目?』


『俺のとっておき。剣術を教えてやる。名は……そういえば俺はいまや空神くうしんと呼ばれているらしいな、だから『空神流剣術』だ。ただし、これを使うときには条件がある』


『それは?』


『必ず身体強化を十分にすること。でなければお前の四肢は千切れる』


『……それだけか?』


『直前……分かりやすく言うには前日には十時間以上寝ろ。俺もつい先日気づいたことだがお前には隠れた身体能力がある。それは恐らくだが寝ている間のみ発揮される……十時間その力に身体が染まるとその直後一日だけはそのスペックが残っている。それを上手く使え』


『十時間……なかなか難しいな』


『だろうな、だからこいつをやる。それを使えば一時的にその身体能力を借りれる。後々皺寄せが大なり小なり来るがそれくらいは我慢しろ。いいか?順転起動で一度、反転起動で五分だ。使うなら順転にして奥義の一撃で終わらせるのを推奨する、どうせ人器ならどの技でも一発が限界だからな』



 ◇◇◇



「『ヴォイド・クロック』順転起動」

 左手に紫の懐中時計を握り、魔力を込める。

 それによって勇人に膨大な魔力と頭がスッキリとする感覚が生じた。


(身体強化はさっき使った。これで…行ける!)

「『空神流剣術』……!」

「邪弓よ、全てを焼き、滅せよ!」

 二人は向かい合い、先にアロイーズの矢が放たれる。


「『ヘルイレイザー・シュート』!!」

 全てを焼き、滅する地獄の炎を纏う矢が放たれる。


「奥義…『逢魔(オウマ)(ドキ)』!」

 剣へ纏わせる闇魔術を固有魔術で増幅、それは周囲を暗闇へと誘う。

 それに飲み込まれた者に災いをもたらす一撃。


 迫る矢へと剣を振るうとその先に居たアロイーズまでその闇は侵食し、胸部を袈裟に大きく斬りつけた。


「ぬぉぁぁっ!!」

 その勢いにアロイーズは遠くの砂山へと吹き飛んでいった。



 ◇◇◇



「……ハハッ、まさか人器でこの鎧を裂くとはな……」

 衝突した砂山は全て砂が吹き飛び、硬い山肌が見えていた。

 そこに膝をついているアロイーズはもう身体がハラハラと崩れ始めていた。召喚の時間切れだ。


「だが、これほどの一撃だ。その剣はもう使えんのだろう?ほら、もう崩れ去る」

「……」

 勇人は肯定も否定もせず無言、だが実際に今振るった一撃で剣身はボロボロ、一回軽く振るだけで無惨に崩れるだろう。


「チョロチョロと逃げ回る事が大半な貴様だがこれで我が貴様に傷を受けたのは二回目だな……。次回までに神器、もしくは聖剣を用意しておけ。次はこうはいかないぞ?満足に使える武器が無ければ『魔纏』持ちの本気の我々には勝てない」

「お前ら『四騎士』を完全体でかつ十分な時間呼べる奴なんてそうそう現れてたまるかよ」

「ところが、な。そろそろ我らが主、邪神様方の計画が最終段階を迎えるのだ……ハッハッハ、我らが求める混沌の時代はすぐそこだ!」

 こちらを指さし、宣言する。だが、その指もすぐに崩れる。


「……時間だ。此度の戦いは楽しかったぞ?また殺り合おう」

 そう言い残し、アロイーズは完全に消えた。


「……面倒くせぇ、頼むから他の勇者の所に行ってくれねぇか……?」

 魔王の強さによって呼べる騎士の格も上がる、だがそもそも呼べるほど格が上の魔王が少ない。

 もう少し他の勇者が成長すれば勇人が相手をする事も少なくなるのだろうが……如何せんそこまで成長の機会が与えられず、新人勇者は死んでしまう。


(最近だと白と赤は死亡報告を聞かないが……強くなってくれてると良いなぁ)

 ノイル様の言うとおりなら他の勇者が魔王を倒す速度を上げれば勇人の負担も軽減される、はずだ。

 今現状の勇人一強の状況が悪いと見ている。


「ご主人様!ご無事ですか?」

「フラン、こっちは大丈夫だ。二人にも怪我はないか?」

「問題ありません。サージュ様も雷の直撃は避けていたため白魔術での少しの治癒で大丈夫でした」

「そうか、それなら良かった」

 生き残るべきサージュとシェスカも無事、周囲にいた操られた兵士達も勇人とアロイーズの戦いによる流れ弾に当たった者はいない。


「理想を現実に。完璧だ……」

 砂地の上に仰向けに倒れこむ。


 砂の魔王、討伐完了〆

 黒の勇者ノワール



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