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睡眠不足勇者の日常  作者: 夜霧
一章 寝不足勇者と夜の異世界攻略
14/54

14.対サージュ

今日も二回投稿予定

 

「フラン、うげっ、あぁ、無事……ではあるな、うん」

「ご主人様、用事は済んだのですか?」

「あぁ、そっちも大分派手に殲滅したようで何より」

 空間転移にて昨夜魔物を殲滅した場所へと移動すると途端に足元がブニブニした気色悪い感触に襲われ、見てみればそれは魔物の死体の山だった。


 真っ二つに両断されてるもの、頭が潰れてるものと死因は様々だがどの魔物もフランには触れることすら出来なかったらしい。


「昨夜の死体を処理せず残しといたから血の匂いで集まってきてるとは思ったがまさかここまでとは……」

「いえ、途中で私が勝手ながら風魔術で匂いを竜巻にぶつけたのでご主人様の予想よりも多くなっていたのかと思われます」

「いや、何してんだ。危ないだろうが」

 俺の指示はあくまで出てきた魔物の討伐でわざわざ誘う必要は無かった筈……。


「ちなみにこの真っ二つになってる奴はどうやって?」

「杖の下部に風魔術で刃を作って斬りました」

「……この頭が潰れてるのは」

「水魔術で作った立方体を風で包んで叩きつけました。血の色が少し薄まっているのは水が混じってるのもあるかと」

「……」

 確かに、他の個体から出ただろう血は暗い青色だが頭が潰れてるものは少し明るい青色に見える、若干の違いだが。


「結果的に中の魔力反応は強力なもの一つになりました。これで本日中に戦えますよ」

「……まぁいっか。眠いしとっとと出てきてくれる分にはありがたい。この後も一仕事あるしな」

 もう夏季休業に入る。

 だから明後日まではこの世界に居ても問題はない。

 そしてそれだけ時間があれば全て解決できる。


「……来たか」

 待つこと数分、砂竜巻の内側に人影が現れる。

 ゆらゆらとこちらに向かってくるその様はまるでゾンビのようだった。

 そしてその人影の頭部から伸びる髪が黄色であることを認識できるほどに竜巻に近づいたとき、それは突如として消え去り、彼女は姿を現した。

 その目は暗く濁り、焦点があってない。



「黄色の長髪に大きく反りかえった刀、間違えないな」

「ではご主人様、手筈通りでよろしいですね?」

「あぁ。やるぞ、フラン」

 フランは杖を構え、勇人も剣を抜く。

 サージュとの戦いが始まった。



◇◇◇




「『魔力奪取』、『思考速度低下』。やっぱり通ってる感じがしないな?流石の抵抗力だ」

「『氷槍』そうですね。彼女の風魔術、相当強力です。ご主人様、お気をつけて」

 戦闘開始から5分経った。

 魔力を奪い取り、自分のものにするものや脳の回転を鈍くし、体への指示伝達を遅くする、などと言った黒魔術を使っても全くぶれない、もはや自動防御に近い精度の風魔術によってフランの攻撃魔術は未だ一度も彼女の体に命中していない


「はー、めんど、眠いからさっさと倒そ、『闇刃纏い』、『……魔力対消滅』」

 抜いた剣に黒い魔力を纏わせる闇魔術で強化した後、サージュの周りをクルクルと回るようにぶつかった魔力を消滅させる黒魔術を使う。

 正確にはぶつかった魔力を別のものに変換し、消滅したように見せるものなのだが何に変換させるかは後のお楽しみ。


「よっ!はっ!」

「……」

 虚ろな目だが的確に勇人の剣を弾くサージュ。

 ここまで一言も喋らないのに疑問を持った勇人は色々と喋りかけることにした。

 

「なぁ、どうして砂竜巻の中に魔物と共に引きこもったんだ?」

「……」

「こんだけ周りを砂だらけにする魔力と剣の技量があるんだ、人間のもとに出向いて片っ端から殺した方があんたの上司の望み通りになるんじゃないか?」

「……」

「あー、もう黙ってないで喋れ!魔導師サージュ!!」

 のらりくらりと勇人の剣を無言で弾くサージュに嫌気がさし、思いっきり剣を叩きつけて無理矢理鍔迫り合いに持ち込む。


「これが本当にお前の望みか?このままだと魔王として俺に殺されることになるぞ?」

「……っ」

 至近距離で問い掛けると少し反応があった。

 目をそらしたのだ。


「お?反応があった。…って、あぶねっ!?」

「ご主人様!」

 それに喜び、気が抜けた瞬間暴風によって勇人が後ろに吹き飛ばされ、砂山に突っ込む。


「おーおー、どうやら自由意思封じられてるのに抵抗してるパターンか?大した魔力量な事で」

「うっ、ガァァァ!?」

 突如としてサージュは恐らく魔力を強化する効果のあるローブの胸元をかきむしりながら苦し気なうなり声を上げ始める。


「そこか!『闇の帳』、フラン!動きを止めろ!」

「畏まりました。『大水流』、『氷結』」

 ここまでのサージュのおとなしさと急に暴れだした様子、そして胸元をかきむしる動作を見て周囲を闇で覆う魔術を使った後、フランに水を産み出してからの氷結によるただ氷の魔術を使うよりも範囲が広くなるやり方で動きを封じさせ、その氷の波を飛び越えつつ勇人はサージュへと剣を振るう。


「『……』これで、終わりだっ!」

「っ!……!?」

 それを見てサージュも風の刃を飛ばすが先程仕掛けた『魔力対消滅』によってそれは勇人に当たる前に彼女の周りで霧散する。

 そして対消滅によって生まれたものは目が眩む程の光だった。

 事前に知っていた勇人は目を瞑っていたが目の前でその光を直視したサージュは目を抑え、膝をつく。


「理想を現実に。 全て予定通りだ」

 周囲を闇で覆い、光で目を潰す。

 環境を味方にし、サージュを無力化した勇人は彼女の胸元へと狙いをつけ、刃を振るった。





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