1.王との謁見
さて、最強主人公ものです
私の別作品の主人公はそこそこの強さですが、これは公言します、基本最強予定です(予定は未定)
数日間は二回更新予定
ブクマ、評価、感想等貰えるとモチベになります
「勇者ノワールよ。此度の戦果、大義であった」
「勿体無きお言葉です」
広々とした謁見室にて数段高い位置に座す王と王の安全のためか数人の騎士に囲まれた状態で跪く黒髪の青年がいた。
「面を上げよ、褒美を取らそう。希望はあるか?」
「私が望むのは数点の貴金属と食料でございます」
「む?領地や金、地位などいくらでも与えるぞ?」
「私はすぐにこの世界を去る身、地位やここでしか使えない金銭、ましてや領地などを持たされても困りますが故に……第一、領地運営なんてやってらんねぇよ、これ以上やる事増やされたらマジで睡眠不足で死ぬわ」
「ん?何か言ったか?」
「いいえ、何も」
周囲に内容が聞こえないように愚痴りつつ大学の事を考える。
(えぇっと……帰ったら六法と教材をリュックに詰め込んで定期……あれ、俺定期何処に置いたっけ……後でフランに聞くか)
とても王と謁見しているものの頭の中とは思えないほど日常的な思考が繰り広げられていた。
「うむ、では従者と共に別室にて待機するように。騎士達に我が国選りすぐりの貴金属と食料を持っていかせよう」
「ではこれにて失礼させていただきます」
去っていく青年に向けて兵が敬礼をし、扉の番をしている者達が巨大な扉を開け、その後王命によって青年を従者の待つ別室へと案内する事となった。
◇◇◇
「騎士長、勇者ノワールはどうやってこんな短期間、十日間であの魔物どもを制圧して魔王を倒した?」
「……あの青年が本気で動けば三日もかからずに魔王を倒せたことでしょう」
「なんだと?あの者は手を抜いていたのか?」
「神から告げられていた通りでございます。勇者ノワールは通常、夜の数時間の間しかこの世界にいない。しかし、全ての世界を守護する五人の勇者の中で間違いなく最強の存在だ……と」
「本当の事だったのか……しかし、我らが世界の平和が優先されないことを嘆くべきか想像以上の速度で魔王が倒されたことを喜ぶべきか……」
「……それはさておき、報酬の件はいかがなさいますか?」
「うむ、既に大臣に用意させておる。問題はなかろう……あの勇者をここに縛り付ける事が出来れば惜しくない出資だ」
◇◇◇
「はぁ……フラン、報酬が運ばれてきたらすぐに帰るぞ。それと俺の定期って何処にあるか知ってるか?」
「かしこまりました。ご主人様が利用される地下鉄の定期券でしたら床に放り投げられていたので学習用の机の上へと戻しておきました」
「サンキュー、道理で何処に置いたか覚えてないわけだ」
「ひとえに、それは睡眠不足も影響していると愚考します。記憶能力の低下は睡眠不足状態における代表的な不利益です」
「あー、そうか。まぁ明日……つーか日付変わってるから今日か、まぁとりあえず寝る時間やっと作れるから問題ない。」
謁見していた時とは比べ物にならないほどだらけ、用意されたテーブルに突っ伏しながら銀髪の少女、フランと他愛もない会話を続ける。
「いやぁ、十日ぶりの収入と食料調達だぁ……。つっても前の世界でもらった食料まだ残ってるよな?どれくらいあったっけ?」
「私が料理するだけなら二週間は一般的な食生活を送れます。鍋パなるものを開催したり友人様に差し上げたりする機会がある場合のご主人様の消費ペースなら一週間程度かと」
「オーケー、そんでそういう予定は今のところないと思うんだがどうだ?」
「ご主人様のスケジュールを見る限りそのような予定はございません」
「よし、じゃあさっさと……お、来たか」
扉をノックする音が聞こえた瞬間、部屋に入った時に少し着崩していた服装とだらけた表情を勇者として恥ずかしくない程度に整えて扉を開ける。
「勇者ノワール様、こちら報酬の貴金属類と食料でございます」
「……ご主人様、私は王女が貴金属扱いされてるこの国に吐き気を催しそうなのですがこれは一体どういうことなのでしょう?」
「いや、これは多分貴金属と一緒に娘も貰ってこの国に尽くしてくれってアピールだと思うぞ。……そうだよな?」
途端に冷たい目になったフランを横目に見てこめかみを揉みながらそう問いかけると貴金属を身につけたこの国の王女は笑顔になって首肯する。
「はい、私は勇者ノワール様と婚約し、共にこの世界を守りたいのです」
「……フラン、予定変更だ。食料だけ空間魔術で収納して今すぐ帰るぞ」
「それでは収入が……あぁ、なるほど、承知しました」
「お、お待ち下さい!何か不都合がおありでしたら私が王に直に伝えます!何があなた様の機嫌を損なったのでしょうか!?」
その白々しい言葉に舌打ちをしながら大量の食料を空間魔術によって異空間に収納し、王女へと目を向ける。
「何処の世界の国も俺を何とか縛り付けようと婚約者を宛がったりしてきたがここはその中でもトップファイブに入るくらい汚い。恐らくはお前から貴金属を奪おうものならそれらにかけられた呪いの魔術が発動して俺を逃がさないようにするんだろうよ。残念ながら俺にそういう呪いの類いは効かないが呪いの魔術が付与された貴金属は大抵その呪いが発動したと同時にゴミみたいな価値しか残らない。ならお前に触れたり怪我させたりして既成事実を作られる前に逃げるのが一番楽だ」
「そん、な……」
その言葉を聞いて王女は崩れ落ち、涙を浮かべる。
この涙もどうせ嘘だ。何度も目にした。
ただ嘘だと分かっていても罪悪感が沸いてしまうのは何でだろうか。
「悪いな、俺には何よりも優先すべき事があるからこの世界には居られない。まぁまた魔王が現れたら神様に頼み込め。そしたら来てやるよ。……行くぞ、フラン」
「承知しました」
フランが空間魔術を展開し、穴を開ける。
その先には見慣れた日本の風景が広がっていた。
「あぁ、一応王様に伝言だ。……次の機会がもしあった時、同じ事をしたら国は滅ぶと思え。以上だ」
そう言い残し、穴をくぐって元の世界へと帰った。
できたらこっちも見て欲しいなぁ一応結構書いてるので(行き詰まってる)
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