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那朗高校特殊放送部!

那朗高校特殊放送部~今年のハロウィンは?編~

今回の登場人物:白金春人、紅葉黑音、倉井雪絵、夏輝海

筆者:白金春人


10月某日。

部室でいつものように行われている会議で、開口一番紅葉部長が発した言葉に僕は固まってしまいました。

だって、


「今年のハロウィンは、バーチャル渋谷ハロウィンです!」


なんて言いだすんですよ!?


「はっ?」


当然私のリアクションもそうなる。

他の皆もポカーンとしてる。


けれど、部長は自信ありげな顔で説明を続けました。


「ほら、今年はあんまりハロウィンでワイワイとか出来無さそうな空気感じゃあないですか?だからこそ、バーチャルでアレコレ出来るティーンである私たちの出番だと思う訳ですよ!」


「あんたよくもまあこの陽キャが全然居ないこの部でそれを提案したわね」


倉井先輩も冷静なツッコミを入れています。

これは僕の偏見何ですけど、この特殊放送部、渋谷のハロウィンでワイワイしてそうなメンツが全く居ないんですよ。


ゲーマーの紅葉部長と後僕ら輩男子勢は無論、

空手一筋の霜月先輩もそう言う感じじゃないし、

与那嶺さん…はまあ、憧れてはいるでしょうけど、参加したことは無いと思います。

夏輝先輩は、だいぶ陽の民っぽいですけど、ガチのコスプレイヤーだし、ハロウィン仮装のメンツは別の人種かなって。

三条先輩は…バンドマンだしワンチャン同族な可能性はあります。うん。



「それに、去年はハロウィンできませんでしたらね私達」

「だったら、変な捻り入れないで普通にハロウィンすればいいんじゃないの…?」



「名付けて、"Virtual渋谷ハロウィン2020!~仮想で仮装~"っ!!」


「私の話聞いてたかしら!?っていうかその絶妙にダサいネーミング止めなさい!!」



倉井先輩が吼える。

さっきまでの冷静さはどこへやら、完全にツッコミ役に…


挿絵(By みてみん)


--------------------------------




ただまあ、あれだけツッコミを入れまくっても結局部長に付いていくのが倉井先輩なので、

最終的にはその方向性になってしまうんですけども。


でもそこには大きな問題が。


「で、渋谷のハロウィンってどんな仮装するんでしょう?」

「…言わんこっちゃないわ」

「ぶっちゃけ良く知りませんからね。僕たち」


皆よくわかってないんですよ。

渋谷のハロウィンの仮装。




ホワイトボードの前で腕を組んで唸っている紅葉先輩ですけど、良いアイデアはあまり浮かばなかったので、横の与那嶺さんと相談しておきましょう!


「渋谷のハロウィンって、言うほどハロウィンっぽいホラーな物って見ませんよね」

「あぁ、カボチャとか魔女的な奴?確かに」

「じゃあ、何が流行ってるのかと聞かれると困っちゃうけど…」

「あ、でもシーツ被ったみたいなお化けとか、ゾンビはたまに見るかも」

「あのゾンビメイク、結構大変そう…」


確かに血のりとかはめんどくさそう。

準備も後片付けも。


っていうかそもそもアレ何で出来てるんだろう。

そんな事を思ってたら、


「ああいうのは専用のキットが出てるんだよ」


なんて声が横からする。

このドヤ顔が伝わってくる声は三条先輩!


「1日限りの使い捨てで、塗るタイプのもあれば、ただ張り付けるタイプの物もある」

「先輩詳しいんですね」

「知り合いに居たからな」


…やっぱり、私生活は陽キャよりだったりするんだろうか。


だったら話は早いんですけ…。


「ねぇ」

「ん、なんだ?」

「あなた渋谷ハロウィンに詳しかったりするの?」


どうやら倉井先輩も同じ考えっぽくて、知ってそうな三条先輩にグイグイ詰め寄って行ってる。


「あ?あぁ…まぁ多少はな」

「だったら紅葉に教えてあげなさいよ」



それに気が付いた紅葉もキラキラした目で見てるしね!

ガンバレ三条先輩!



「えーっとだな。渋谷のハロウィンは何を着ればいいのかって話だけどな…」


三条先輩を臨時講師に仕立て上げてホワイトボードの前に立たせて、

そして残りのメンツは机を挟んで聞きに入る。

この部では良くありがちなスタイル。



「衣装そのものには多分こだわりは無いと思うんだよなぁ」

「…と、言うのは?」


なんだかしみじみと何かを思い返しながら語る三条先輩に、紅葉部長がが聞き返してます。


「これは俺のバンドの女子の話だけど、あいつはド◯キで売ってる安物のハロウィングッズの中から、何か好きなものを、みたいな選び方してたわけよ」

「あぁー、なるほどね」


「勿論、ガチで一から作ったりしてる人も居るだろうが、全体的に見れば少数派だろうな。結局そいつも、なんかありがちなエナメルの黒いワンピースと、角付きカチューシャみたいな仮装だったぞ」



そう言われてみれば、確かにあの光景にも説明は付くし、筋も通っている気がする。

もしかして、あそこにいる陽キャ達にとっては、その一日だけの為にリソースをつぎ込むほど、重要度は高くないのかもしれないですね!!


…なんか今僕凄い偏見染みた事言った気がする!

止めとこう!もっとこう、いい感じの表現にしよう!



「お金より大事な物がある、って考えなのかもしれないですね…」


それ!

与那嶺さんのそれを貰おう。

彼らには、お金より大切な物がある!うん!





「そうなると、ネッ通とかでそれっぽいの探さないといけませんね」


何はともあれ方向性は決まった我が部。

部長が、パソコンを机の上に取り出して、パラパラとネット通販のページを眺めています。

"コスプレ ハロウィン"とか、それっぽい単語で検索すれば、それっぽいものが出てきます。


「安いのでも、結構いろんなのあるんですね…」


そんな画面をプロジェクターに映し、皆でパラパラと眺めていますが、

千数百円規模のものでも色んな種類があります。


中には、これ本当にこの値段で届くの?詐欺っぽくない?

って商品も紛れてたりはしますけど…



それらを見ながら、僕たちは各々好きな衣装を選んだり、

他の人におすすめされたりして、衣装を選んで行ったのでした。



え?何の衣装かだって?


それはほら、当日のお楽しみですよ!!







…って終わり方だとあまりにも投げっぱなしと言うか薄っぺらいので、

後日談でも載せときましょうか。




--------------------------------



数日後


ハロウィンもあと少しくらいに迫ったある日、

僕はいつものように部室で集合時間まで暇つぶしでゲームをしていたら、


「なーんか荷物来たよー?」


なんて言いながら、私服の夏輝先輩が、大きめの段ボールを抱えて部屋に入って来る。

いっつもハデハデな衣服の多い先輩だけど、今日も目立つオレンジのボーダー。

そして相変わらずいつものチョーカーは付けている。

アレ金属製の筈だけど、秋冬は冷たくないのかな…



「あー、多分ハロウィンのやつですね」


何の気なしにサラッと言ってから、ヤバいと悟る。

そう言えばあの日の会議に夏輝先輩居ないじゃん?

夏輝先輩コスプレ好きじゃん?

絶対ズルいって言い出


「えぇ?なんかやってたの?ズルイー!!」

「ほらぁー!!」


ヤッパリそうだった!


「そりゃーハロウィンと言えばホラーだけどさぁ?」


なんかすれ違いが起きてる気がするけど、それどころじゃない。

何せいまこの部室として使ってるアパートの一室に居るのは僕と先輩だけ。

弁明してくれる人は誰も居ない!


「何やるか知らないけど私も参加したかったなぁー」


そんな愚痴を言いながら、先輩は部屋の入り口近くの床にしゃがみ込み、

勝手に段ボールの箱を開けだしてしまう。


「あっ!ちょちょちょ、待ってください?」


しかし、先輩は僕の制止など全く効いてなくて先輩はついに荷物の段ボールの蓋を開封してしまった。


「ハーロウィーンなー…うん?」


先輩は、箱の中にあるはずの数多のコスプレグッズの中から、とある一着を取り出す。

あれは…倉井先輩のやつだ。


「これ着るの?」

「僕じゃないですよ?」

「それは知ってる。まー、ハル君が女の子の服着るのもそれはそれでいいけどね?」

「冗談じゃないですよそれ?」


そういう流れにするのは止めてくれー!!


「でも、これを誰かが着るんだよね?なんかホラーじゃ無くない?」

「ええまぁ。今年のテーマはどうやら、"バーチャル渋谷ハロウィン"らしいので」

「バーチャル渋谷ハロウィン?」


夏輝先輩はこっちを見て無くて、ずっと段ボールの中を見ているけれど、僕の声に露骨に反応して、

今まで左右に揺れていたからだがピタッと止まる。


「は、はい。何でも、今年は現実の方が中止になるから、バーチャルでそれを再現しようって…部長が…」

「ふぅーん…」


やや落ち着いた、というかこの人の性格を考えると、寧ろ冷ややかと言えるかもしれない位低めの声を出した先輩は、

段ボールを抱えたまますっくと立ちあがり、それを僕が座っている長テーブルに優しく置いた。


なんとなくこの空気感に、僕もながらでやってたゲームを中断するほかない。


夏輝先輩は、置いた段ボールにもたれ掛かるように、乗り出して来て、僕の顔をじっと見てきた。

なんていうか、こう、すっごい緊張する。


挿絵(By みてみん)


この空気感もそうだし、相手が先輩の異性っていうのもそうだし、前に乗り出してくるポーズもそう。


一瞬の沈黙ののち、夏輝先輩は…


「面白そうじゃん!!私もやる!!」


えぇ、分かってましたよ?

この人この程度でキレる人じゃないって事はね??


「渋ハロでしょ?うーん、どんなのが良いかなー」

「先輩は行ったことあるんですか?」

「去年一回だけね!コス仲間と行ったよ?」

「あー、去年は部としてはハロウィンやって無かったですもんねぇ」


先輩は僕が見ても分かる程露骨にワクワクしながらスマホを見ています。

多分、自分の仮装でも見繕ってるんでしょう。



「ねぇねぇ、何が良いかな?」

「ぼ、僕に振らないで下さいよ…」


なのに先輩はそのスマホの画面を見せながら僕に聞いてくる。

画面には、いろんなザ・コスプレ衣装、みたいなのが並んでる。

僕にそのへんの知識があるわけないじゃないですか。


「コスなんて各種取り揃えてるんだからさー?」

「先輩の各種はクセが強いんです」

「そんな事言っちゃってさー、渋ハロにえっちなやつは着てかないよー、もー」

「そう言う事いってるんじゃあないんですよ…」


っていうか普段からバニーガール着てる先輩がそんな事言ってて説得力あると思ってるんでしょうかね??

正直、「ハロウィンだからカボチャ水着だよっ!」とか言ってマジのカボチャくりぬいただけの衣装とか出してもおかしくないと思ってますからね?

絶対止めますけど。



「まーこういうのは自分で好きなの選ぶのが一番だし、なんか面白そうな奴探そ」

「じゃあなんで振って来たんですか…」

「なんでだろ。ハル君が私に何着て欲しいか知りたかったから?」

「え、それホントですか?」

「どうだろうねー。別にハル君で無くても良い気はするしー」

「ま、まあ、そうでしょうけども…!」



何時まで経っても夏輝先輩に振り回されっぱなしの僕。


いつか反撃できるときは来るんでしょうかねぇ?

夏輝「私露出多い奴なイメージ強いから、今年は違うのにしよっかなー」

白金「イメージっていうかそのものですけどね。っていうか今年のコンセプト覚えてます?」

夏輝「覚えてるって!!それっぽいの用意するよ!!」

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