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夕凪

 羽衣は深い闇の中をさ迷っていた。

 深い深い闇の中を一人、揺蕩っていた。

 これは一つの夢の形。

 それは深淵と呼ばれるモノの中。


 ぼんやりと羽衣は考える。

 何故そもそも私だけが深淵を扱えたのか。

 羽衣だけが深淵を操ることができたのか。


 静空が纏っていた闇も、実は深淵だったのではないか。

 深淵と闇は実は同一のものだったのではないのか。

 この闇の中で羽衣はそう思い始めていた。


 長い長い時間の中。

 羽衣は闇の中をさ迷いながら一つの<夢>の欠片を見つける。

 それは闇と深淵の<夢>。

 それは羽衣の<夢>の欠片。


 遠い、遠い彼方の記憶。

 羽衣の奥に封じられた彼方の記憶。


 ―――


 私はぼんやりと手にした深淵の<夢>を見つめる。

 この中に羽衣がいる。

 そんな気がしていた。

 だから、この夢は私の中に還さないといけない。



「それは止めといたほうが良いと思うよ、翼希」



 私の向かいのベッドで同じく深淵の<夢>を見つめていた静空は告げる。



「その<夢>はきっと今のあなたに扱う事はできない。それは羽衣の<夢>だからね」


「でも、この中に羽衣がいる気がするんだよ」


「……私達は待つことしかできないんだと思う。これは"魔法使い"としての勘だけどね……」


「そっか……」



 私はそう呟きながら深淵の<夢>を一撫でして、ベッドの横のテーブルの上にゆっくりと置く。

 早く、羽衣が帰ってきますようにと願いながら。

 この体は羽衣のもの。

 だから、早く帰ってきて、羽衣。


 ―――


 夢。

 夢を見ていた。

 幼い日の夢を。

 まだ、羽衣達が幼い日の事を、夢見ていた。

 羽衣達はまだ幼くて。

 "魔法"というものがどういうものか分からなくて。


 けれど。

 羽衣達は"魔法"をたくさん使うことができた。

 羽衣達にとって、"魔法"を使うことが当たり前のことだった。

 何故、羽衣達がこんなにたくさんの"魔法"を使うことができたのか。


 それは。

 羽衣達が、そう<夢>見続けていたから。

 いつの頃からかその<夢>が羽衣に力を与え続けていたから。

 その<夢>は『始まりの"魔法使い"』の願いから生まれたモノだったから。


 羽衣。

 暗闇の中で呼ばれた気がした。

 羽衣。

 真っ暗な闇の中、呼ばれた気がした。

 羽衣。

 深淵の中、はっきりと呼ばれた気がした。


 ここが何処なのか分からない。

 けれど、羽衣は誰かの呼び声に誘われるように物語のページを捲る。


 そう、これは、始まりの"魔法使い"の物語。

 それは一つの『<夢>』の物語。

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