青海原 ※挿絵有※
<夢>。
赤い<夢>。
青い<夢>。
黄色い<夢>。
白い<夢>。
黒い<夢>。
様々な色をした<夢>を私は集めて回る。
この海の中を泳いで。
様々な色をした<夢>達を集めて回る。
人々が諦めた<夢>達を集めて回る。
この海には。
人々が諦めた<夢>達が集まっていた。
人々が叶えられなかった<夢>達が輝いていた。
叶えられなかった<夢>はやがて、新しい<夢>となって光り輝く。
新しい<夢>は流星となってその人の元へと還っていく。
その繰り返しだと思っていた。
その繰り返しのはずだった。
けれど、人々に還っていく<夢>の数は、日に日に少なくなっていった。
それは全て、<小さな星>という少女が奪い去ってしまったからだ。
これでは、世界に新しい<夢>が届けられない。
新しい<夢>を届けるために私は願う。
光り輝く海原を見上げながら私は願う。
この世界に、再び<夢>の欠片が満ちますようにと。
その<夢>達が人々の新しい<夢>となって還っていきますように、と。
―――
ある日のことだった。
人々の<夢>の欠片達が一斉に流星となって飛び去って行った。
こんなこと、私がこの仕事について初めてのことだった。
慌てて下界の様子を探ってみると、人々に新しい<夢>が芽生えている事が分かった。
願いを叶える"魔法使い"がこんなことをするなんて……。
願いを叶える"魔法使い"は何を考えているのかよく分からない。
つい先日まで<小さな星>は人々から全ての<夢>を奪い去っていたはずなのに。
それを人々に還す願いを叶えるなんて。
<小さな星>はいったい何を考えているのかと、思いを巡らせる。
けれど、考えは全然纏まらなくて。
とりあえず私は日課の<夢>の欠片を集める事にすることにした。
海から上がって砂浜に<夢>の欠片達をちりばめていると。
空から、白い羽根が舞い降りてきた。
降って来た方を見つめると、そこにはよく見慣れた少女が立ってこちらをみつめていた。
「<小さな星>……、何しに来たの?」
「あれ……あなたは羽衣の事知ってるんだね。なら話が早いや」
<小さな星>はきょとんとした顔で空中から降り立った。
この子は<小さな星>だ。
ただ一点違うのはその背中には白い羽が生えている事。
<小さな星>に何があったのかは分からない。
けれど。
「私の名前は夢海。この<夢>の海の管理者。<小さな星>が<夢>を……<夢>の欠片を還さないから、この世界は<夢>が生まれなくなってきている……」
私は敵意のこもった口調で<小さな星>に語り掛ける。
「そうだね。だから、羽衣は世界を元の姿に戻したいと思ってる。あるべき姿に……」
「今まで、人々の全ての<夢>を奪ってきた人間のいう事なんて、私は信じられないよ」
そう。
<小さな星>は今まで、人々の一番の<夢>を奪ってきた。
ここ数カ月は輪にかけて酷かった。
人々の全ての<夢>を奪い続けてきたからだ。
そんな人間のいう事なんてそう簡単には信じられない。
信じられるとしたら、それは相当なお人好しだ。
「羽衣はこの特別な<夢>をここに還しに来たんだ。だから、この<夢>を少しの間、管理して欲しいかな」
「……特別な<夢>?」
私は<小さな星>から手渡された<夢>を見つめその内容を伺う。
その<夢>は淡くて儚い恋心の夢。
この<夢>にそんな力は無いと思うのだけれど……。
「この<夢>は世界の人々に<夢>を与えるために生まれた<夢>だから。見た目よりも強い力を秘めているよ」
「……そう……。なら、この<夢>は私が預かる。それで、あなたはここに何しに来たの?用件はそれだけではないでしょう?」
「うん……まぁね。この二、三日の間に<紅き黄昏>っていう"魔法使い"がやってくる。その<夢>を狙ってね」
「はぁ!?何それっ!それってこの<夢>の海を戦場にでもしようとでもいうの?」
「えーっと……まぁそういうことになるね……」
<小さな星>は苦笑いしながらそう告げる。
「あのー……そんな面倒なことに巻き込まないで欲しいんですけど……」
「まぁまぁ。何も考えも無しにこの<夢>の海を戦場にしようっていうんじゃないからさ。そこは見逃して欲しいかな」
「<小さな星>……私、やっぱりあなたのこと嫌いだわ……」
私は大きくため息をつきながらニコニコと微笑む白い羽を生やした<小さな星>を見つめる。
はぁ……何でこんなことになってるんだろう。
この<夢>の海の世界を舞台にドンパチなんてやられたくないんだけどなぁ……。
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