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この遥か遠い、空の上へと

「何から何まで、お世話になりっぱなしでごめんね、ニクス」



 私はニクスに修繕してもらった洋服に身を通してそう告げる。



「大丈夫だよ……。私は、編み物、大好きだから……」



 そういう問題じゃないんだけどなぁと思いながらも、ニクスとソリスに頭を下げる。

 その足元には小さな猫が一匹。

 可愛いなぁ……。


 雪はこの春の陽気でほとんどが溶け出していた。

 この先、この世界からは雪は失われてしまうのかもしれない。


 あれから少年も程なくして、目を覚ましたけれど。

 少年は記憶を失っていた。

 それが<夢>を奪われた結果なのか分からない。

 分からない。


 けれど。

 この春の陽気は名もなき少年が願ったものだ。

 少年は何か一番の<夢>を奪われたのだとおもう。

 それでも。



「あのがきんちょの事は、私達が面倒見るから心配しなくていいよ」



 ソリスはそう言って微笑んでくれた。

 少年の事はニクスやソリスに任せておけば大丈夫だろう。

 きっと二人は暖かく迎え入れてくれる。


 少年も新しい<夢>を持つことができるはずだ。

 だから……。

 大丈夫。

 この春の訪れた世界でも、きっと大丈夫だ。

 そう思うことができた。



「それじゃ、とりあえず私はもう行くね」


「何処か行く当てでもあるの……?」


「まったくもって。でも<小さな星>(リトル・スター)のことは放っておけないから……。だから絶対に探し出すよ」



 ニクスの問いに私はそう力強く二人に応える。

 そう考えててもしょうがない。

 為せば成る、為さねばならぬ、何事も。

 母の口癖を胸に私は笑顔で二人と一匹に微笑みかける。



「まぁ、私達はがんばれ。としかいえないけど」


「そうだね……。頑張って……」


「うん。頑張るよ。二人もお幸せにね」



 私は意味深にそう告げて背中の羽を羽ばたかせる。

 私の言葉を聞いた二人は顔を真っ赤にしてそっぽを向き。



「もう二度とくんなーーーっ、馬鹿天使ーーーっ」


「またね、翼希……」



 二人はそう大きな声で私の事を見送ってくれる。

 私はこの春の訪れた世界から、白い羽を羽ばたかせ飛び立っていく。

 <小さな星>(リトル・スター)を求めて。

 この『暖かな場所』から、私は羽ばたく。

 『願いを叶える"魔法使い"』の元へと。

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