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どんな願い事も叶えてあげる。~少女の紡ぐ人々の願い~  作者: 牛
第六章 向日葵

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きょうちくとう

 ぼんやりとこんなことをおもう。

 なんで、わたしはここにいるのだろう。

 どうして、わたしは、ここにいるのだろう。


 そもそもここはどこだろう。

 おほしさまのインテリアでかざられたちいさなおへや。

 そのちゅうしんには、ひとりのしょうじょがぼんやりとわたしをみつめてすわっている。



「私の名前は<小さな星>(リトル・スター)。……あなたの願い、叶えてあげるよ」



 しょうじょはポツリとそうつぶやく。



「……あなたの一番の<夢>を犠牲にして、ね」



 しょうじょはクスクスと、えみをうかべながらそうつげる、

 そのことばに、わたしはせすじがゾクリとした。


 わたしのねがいを、かなえてくれる。

 わたしのねがい……。

 それは……。


 でもそのだいしょうに、いちばんの<ゆめ>を失う。

 そのことに、ためらいをおぼえる。

 けれど。

 それでも。


 わたしはねがいをかなえることにした。

 わたしのいちばんの<ゆめ>をだいしょうにして。


 ―――


「彗夏……っ。彗夏……っ!!」



 うー……。

 今日も五月蠅いなーー……。

 わたしはもう少し眠っていたいのに……。

 わたしは願いを叶えたのだから……。

 わたしはもう少し眠っていたいの。



「彗夏ーーーーーーーーーっ!!!」



「うるさーーーーーーーーーーいっ!!!」



 いつもの如く耳元で大声を出されて、わたしはたまらず飛び起きる。

 うーん……。

 縁側で人が気持ちよく眠っているのを、妨害するのはやめて欲しいんだけどな、いやマジで。

 始はKYなんじゃないだろうか、まったく。

 本当に田舎の子は、教育がなってないね。



「そもそも、遊びに行く約束をしたのは、お前だろ」



 む……。

 そうだっけ?

 なんか頭がまだ夢見心地で、よく考えが纏まらない。



「で、今日も行くんだろ。ひまわり畑」


「あ、うん」



 わたしはぼんやりとした口調でそう答えると、ふらふらと壁に向かい帽子かけにかかっている麦わら帽子を手に、ふと考える。

 ……わたしは何を願ったんだっけ。

 帽子を被った自分の姿を鏡で見つめながら、考える。

 ……わたしはの一番の<夢>ってなんだったっけ。

 ……分からない。

 ……分からない。

 鏡の中のわたしの顔は難しそうな顔に歪んでいる。

 わたしが鏡を見つめながら、うんうん唸ってかんがえていると。



「そんなに見つめてても、そんなに可愛くならないぞー?」



 縁側からデリカシーの欠片も無い言葉が飛んでくる。

 ああもう。

 本当に田舎者はいやだいやだ。

 わたしがこんなにも悩んでいるというのに、無神経な言葉をかけてくるなんて。


 わたしはいつにも増してぷんすか気分で縁側へと向かう。

 そして無言で始を置いてひまわり畑に向かって駆けだした。


 わたしの背中からは始が待てよという声がかけられるけれど、KS(既読スルー)。

 なぜわたしはこんなにも怒っているのだろうか。


 わからない。

 なんでだろう。

 けれど、胸の奥底がチクリとしたのを感じた。

 胸の奥底がざわざわとするのを感じていた。


 だから、それを。

 その気持ちをかき消すように。

 頭の上の麦わら帽子が吹き飛んでいかないように手で抑えながら。

 全力で青く澄み渡った空の下を、駆け抜ける。

 赤い夾竹桃の咲き乱れる路地を、駆け抜ける。

 ただ、がむしゃらに、駆け抜ける。

 なんだろう、この気持ちは。


 ひまわり畑の中に入り。

 ひまわり畑の中心で。

 わたしは、はぁはぁはぁ、と息を切らせて、汗を拭う。

 何してるんだろう。

 わたしは。


 始に八つ当たりみたいなことをして。

 本当に……何をしているのだろう。



「あなたの願い、面白かったよ」



 突然、背後から声をかけられた。

 その声は。

 その声の主は。


 わたしを<小さな星>(リトル・スター)の元へと導いた声の主。



「でもね。あんな……あんな<夢>じゃ足りないんだよ。もっと強い<夢>じゃないと……」



 クスクスと笑みを浮かべながら紅い洋服の少女はそう告げる。

 わたしの<夢>。

 わたしが代償にした<夢>を馬鹿にするなんて。

 そんなことは絶対に許さない。

 絶対に。


 わたしは紅い洋服の少女をキッと睨む。



「あー……怖い怖い」



 お道化る様に少女は嗤う。



「何がそんなにおかしいの?」


「ううん、なんでもないよ。ただ、あなたの新しい<夢>に興味があったから。だからもう一度願わない?あなたの新しい願いを」


「……何で……そんな事……」



 冷たく嗤う少女にわたしは問いかける。

 わたしの新しい願い……。

 新しい<夢>……。

 甘い誘惑にわたしの心は揺さぶられる。

 駄目だ。

 駄目だ、そんな事。

 この新しい<夢>だけは。

 この<夢>だけは失うことはできない。

 失っちゃいけないんだ。

 だから。

 わたしは。



「わたしはもう二度と願わないっ。この<夢>だけは手放せないっ!!!」



 叫ぶようにそう告げる。

 はっきりと決別を宣言する。



「そう……、じゃあしょうがないね。気が変わったらまたおいでよ、<小さな星>(リトル・スター)の所に」



 わたしの言葉に嘲笑うように少女は、ひまわり畑の奥へと消えて行った。

 わたしは青い空の下。

 黄色いひまわり畑の中。

 消え去っていった、紅い洋服の少女の姿をただ見つめ続けていた。

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