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空模様

 ……空。

 青い空の夢を見た。

 青くて澄み渡った空の夢だ。

 何処までも澄み渡った空の上で。

 少女が一人、寂しそうに世界を見つめている。

 そんな夢を見た……。


 少女が見つめる世界は光に溢れていて。

 私にとっては眩しく感じた……。


 はっとなって、私は目が覚める。

 とりあえず窓の外を見てみる。

 そして、いつものようにため息をつく。

 今日もうんざりするほど雪が降っている。

 やっぱりただの夢かと嘆息する。


 最近よく、空の夢を見る。

 何故だかよく分からないけれど。

 決まって青空の夢。

 そしてそこで。

 たった一人ただ世界を見守っている少女の夢。


 ……よく分からない……。

 そう思いながら。

 とりあえず私の寝床で一緒に眠っていたキララをもふもふすることにする。

 もふもふ、もふもふもふ……。

 もふもふって気持ち良いな。

 猫は暖かい所が好きって言うけれど。

 いつも私の寝床に来るっていう事はソリスより私の方が、体温が高いという事だろうか。

 まぁどっちでもいいか。

 そう思い、キララをもう一度もふることにする。

 もふもふ、もふもふもふ……。


 さて……。

 今日も一日、頑張ろう……。


 隣のベッドで眠っているソリスを起こさないように気を付けながら外出用の衣服に身を包み、私は家を出る。

 そして、行きつけの市場でまきと薪を持てるだけ購入し家路に着く。

 家に帰り着いたら、部屋着に着替えて暖炉の火種に薪とまきを長く燃えやすいようにくべていく。

 これが私の朝の仕事。

 そうこうしているうちに、ソリスが眠そうな顔をして居間へとやってくる。



「おはよ、ニクス」


「……おはよう、ソリス」


「とりあえず顔洗うついでに朝食作ってくるね」


「……うん。お願い、ソリス……」



 そう言葉を交わすとソリスは台所へと姿を消していった。

 パチパチパチ……。

 薪の音が爆ぜる音が小さく響く。

 暖炉にくべたまきに小さな灯りがともっていく。


 私はぼんやりとその灯りを見つめながら物思いにふける。

 これは私の<罪>なのだと。

 この世界が雪に閉ざされたのは私の<罪>なのだと思い返す。

 そう私は許されない。

 許されることはないのだ……。

 目の前で揺れる炎が私に向かってそう告げているような気がした。


 ―――


 ニクスとの出会いはいつだっただろう。

 もう十数年も前の事がだから正直覚えていない。

 私も幼すぎて記憶はあやふやだった。

 けれど。

 私にとってニクスは一緒に暮らしてきた家族も同然の存在だ。

 この雪に閉ざされた世界で。

 肉親も育ててくれたお祖母ちゃんを失った私にとって。

 ニクスは誰よりも大切な人だ。


 そんなニクスがこんな顔をするようになったのはいつからだっただろうか。

 まだ、この世界が雪に閉ざされる前は、ニクスはよく笑う快活な子だったと思う。

 しかし、世界が雪に閉ざされるようになってから。

 ニクスから次第に笑顔が消えていったように思う。

 一昨年亡くなったお祖母ちゃんもその事だけが気がかりだと言って、ひっそりと息をひきとった。


 私はニクスに対してできる事は何かないだろうか。

 何か……。

 何か、あれば良いのに。


 そんな事を考えていたある日の事。

 こんな噂を耳にした。

 どんな願い事も叶えることができる"魔法使い"達の噂を。


 かの英雄王はその"魔法使い"達を探し続け、迫害をし続けたのだという。

 願いを叶えた代償に奪われた自由を取り戻すために。

 しかし私にはわからなかった。

 何故、英雄王は願いを叶えてくれた"魔法使い"達を迫害していたのか。

 その理由が分からなかった。

 自分の願いを叶えてくれたのだから不自由になるぐらい良いじゃないか。

 私だったら、そんなこと気にしないで、ずっと生涯笑って暮らすのにな。

 そう思う。



「あなたの願い、叶えようか?」



 しんしんと雪が降り積もる中。

 街を歩いていると。

 紅いローブを着た少女に声をかけられた。



「私の願いならとっくに叶ってるから別に良いよ」



 私は紅いローブの少女にそう告げる。

 私の願いはとっくに叶っている。

 その言葉に偽りはなかった。

 ニクスと一緒に居られる今があれば、私には十分なのだから。

 ニクスとこれからも一緒に生きていけるなら、それで十分すぎるほど幸せだ。



「本当にそうかな?叶っていない願い事、あるんじゃない?」



 そう言いながら少女はクスリと笑う。

 その言葉に私は心の奥底をえぐられたと感じた。

 叶っていない願い事。

 私が叶えられない願い事。

 それは……。

 ニクスがあまり笑ってくれない事。

 それだけが、気がかりではあった。

 だから……。

 だから、私はその少女の言葉にのろうとした。


 その時だった。

 後ろからバサリバサリと、雪の上に物が落ちる音がした。

 私は音のした方を振り返ってみてみると。

 辺り一面に散らばるのは、買ってきたばかりの食材達。

 そして……。


 その中心に立っていたのは。

 真っ青な顔して。

 まるで何かに怯えるような。

 そんなニクスの姿があった。

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