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どんな願い事も叶えてあげる。~少女の紡ぐ人々の願い~  作者: 牛
第三章 私が天使だったら良いのに。
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"魔法"

 一口に"魔法"と言っても様々な種類がある。

 何かものを破壊する攻撃系の"魔法"から、精神に作用する精神系の"魔法"。

 身体を強化する強化系の"魔法"に、あらゆる事象を拒絶する防御系の"魔法"。

 物質や生物を修復する癒しの"魔法"や、時空に干渉する時空干渉"魔法"なんてものもある。

 流石に時空干渉"魔法"は、色々と(ことわり)がぐちゃぐちゃになってしまうので滅多には使わんけど。

 遅刻しそうになるたびに時間を巻き戻すとかしてたら、世界はそれこそぐちゃぐちゃになってしまう。

 なので、時空干渉"魔法"はあまり使っちゃいけない。

 使ってはいけないのだ。

 一度、羽衣もお遊びで使ったことがあったけど、その後ばっちゃにめたくそに怒られた。

 それはもうめたくそに。



「それじゃ行くよ、羽衣っ!!!」


「はいはい、よろしくどうぞーーー」



 今、羽衣は静空とグラウンドで向かいあって立っている。

 これはもはや恒例行事となっている事だ。

 静空が新しい"魔法"を覚えるたびに羽衣が試し打ちの実験台にされるのだ。

 先生達はよぼよぼのじっちゃんばっちゃんばかりだし、生徒の中では静空以上の魔力を持っているのは羽衣しかいない。

 だから、羽衣が実験台にされてしまう。

 迷惑な話だよね、まったくさ。



「我が呼び声に応えよっ、そして熱き炎の矢を穿てっ!!!」



 静空の詠唱が完了するとともに、無数の炎の矢が私に向かって放たれる。

 相変わらずこういう攻撃系の"魔法"好きだなぁ、静空は。

 まぁその方が羽衣もやりやすいんだけどさ。



「我が前に深淵を作れり。その深淵をもって万物をも拒絶せよ……」



 詠唱が完了すると共に羽衣の周りには見えないバリアが展開されて、全てを遮断する。

 遮断したのは良いけどこの"魔法"の難点は視覚以外の全てを遮断してしまうので、静空の次の手が読めない事なんだよね。

 まぁこの鉄壁の深淵を貫ける"魔法"なんて存在しないワケなんだけど。



「〇×▲〇〇×▲〇、×〇▲■×〇▲■!!!!」


「×〇▲■×〇▲■、〇×▲〇〇×▲〇!!!!!」



 静空がバリアの外で何かを詠唱しては、氷の槍やら風の竜巻やらで攻撃してくるけれども私のバリアを貫けるわけもなく。

 でもなんか校舎や近くの森がちょっと静空の"魔法"でダメージ受けてるんだけど、あれ、羽衣が治さないといけないんだろうなぁとかぼんやりと考えていたら、静空が魔力切れをおこして力尽きた。

 ので、羽衣はバリアを解除する。

 倒れ込んだ静空に向かってスタスタと歩いていき、問いかける。



「とりあえず、気はすんだ?静空?」


「はぁ……羽衣。あんたのその深淵"魔法"、強すぎなんだけど……」


「悔しかったら静空も深淵"魔法"を契約することだね」



 そう。

 静空が言うこの深淵"魔法"こそが、私だけが契約できた"魔法"。

 羽衣だけが使える"魔法"だ。

 この深淵を貫ける"魔法"は存在しないし、深淵を防ぐ"魔法"は存在しない。

 つまりは羽衣ちゃんは最強無敵なのです。

 えっへん。



「くそーーーー!!いつか見てなさいよーーーーー!!」



 静空は言いながら地団太を踏む。

 羽衣はそんな静空をしりめに少し傾いた校舎や森に向かって、修復"魔法"をかけて回ることになるのでした。

 ちゃんちゃん。


 ―――



「変な夢ねぇ……」



 私が修復した森の中でのんびりとお昼のお弁当をつつきながら静空は呟く。

 羽衣と結詩と静空はいつも森の中で弁当を食べていた。



「それっていつからなの?」



 静空に問われて考えを巡らせる。

 あの夢を見るようになったのはいつからだったか。

 昔はそんな夢、見たこともなかったはずだ。



「んー……ここ最近かなぁ」


「ふーん。まぁそんなんじゃ安眠も出来なくて、まじでぴえんでぱおんよね」


「……ぴえんでぱおん?」


「どっかの世界で流行ってる言葉だよ。悲しさ極まった時に使うらしいよ」


「……いいかげん時空干渉、止めた方が良いと思うよ、静空」



 羽衣は半目で見つめながら静空に警告する。

 時空干渉は良くないことだ。

 時空干渉したらばっちゃにめたくそに怒られる。

 そうめたくそに。

 羽衣はそう学んだ。

 強制的に学ばされた。



「だってさー、異界って面白いんだもん。見てて飽きないよ」


「そりゃまぁ……そうだけどさ」



 羽衣も一回お遊びで時空干渉した時も凄く楽しかった。

 見たこともない異界はとても新鮮で。

 とても幻想が溢れていて魅力的なものだった。



「でもなー……時空干渉はなー……ばっちゃにめたくそに怒られるからなぁー」


「ほんと、羽衣はお祖母ちゃん子だよね」


「しょうがないじゃない。ばっちゃには勝てないし……」


「え”。ばっちゃって深淵使っても勝てないの?」


「いやいや、さすがにばっちゃに深淵なんて使ったことないよ……」



 何処の世界に親族に最強"魔法"ぶっぱなすやつがいるっていうのさ。

 そんなやつがいたら一度顔を拝んでみたいよ、本当に。



「とりあえずさー。羽衣の唐揚げくれ」



 結詩が空気も読まずにそんなことを言ってくる。



「はぁ……あんな嫌な夢なんか見たくないなぁ……。憂鬱だよー……」


「……これが世に言うKS(既読スルー)か……」



 静空が笑いながら羽衣達を見つめている。

 そんな平和な日常が流れていく。

 羽衣はそう思っていたし、結詩も、静空もそう思っていたはずだ。

 そのはずだった。

 あの日が来るまでは。

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