<黒の雪>
「これが、王となった少年の末路」
「少年は強さを求めて王になり、自由になる<夢>を奪われた、と」
<黒の雪>はクスクス微笑みながら話す<小さな星>を見つめながら思う。
この子は危険な存在だと。
この子はいずれ一族を滅ぼす存在になりうると。
アッシュはこれからも私達の一族を探し出して、迫害し続けるだろう。
翼希にしてもそうだ。
いつまでも永遠に、同じ運命の輪を繰り返すだけだとは思えない。
天使となった翼希は<小さな星>が歩の<夢>を奪う前に、その力を行使して<小さな星>を完全に殺す事も出来るかもしれない。
<小さな星>は自分の庭の檻の中に猛獣を飼っていることに気付いているのだろうか。
……恐らく気付いていない。
<小さな星>は欠片も気付いてはいない。
だからこんな顔をして笑っていられるのだ。
自分は舞台の演出家であり脚本家だと思い込んでいる。
そんな事はあるはずはないのに。
<小さな星>は舞台に上がっている演者でありキャストだ。
この筋書きを描いている人物が他にいる。
<黒の雪>は気付いていた。
<小さな星>は誰かに操られているのだと。
それはいったい誰の差し金なのか。
<小さな星>にこんな事をさせている人物は誰なのか。
<黒の雪>には皆目見当がつかなかった。
<小さな星>が、何故このようになってしまったのか。
その理由は<小さな星>にしか分からない。
知りようがなかった。
―――
夢。
私は夢を見ていた。
ふわふわと浮かんだ中に様々な<夢>の欠片が浮いている。
死んでしまった幼馴染を生き返らせてと願う少女の<夢>。
遠くに行ってしまった幼馴染を取り戻してと願う少年の<夢>
王になれますようにと願う少年の<夢>。
孤児院を永遠に続けられますようにと願う少女の<夢>。
そして……。
私が天使だったら良いのにと願う少女の<夢>。
私が天使だったら良いのにと願う少女。
この<夢>はなんだろう。
<夢>の欠片を覗いてみてもその少女には見覚えが無かった。
……私はこの<夢>を知らない。
この<夢>は……、誰の<夢>?
分からない。
分からないけれど、どこか懐かしさを覚える。
「それはあなたの<夢>だよ」
どこからともなく声が聞こえた。
頭の中に直接声が響いている。
「始めようか。始まりの物語を」
「やめて!!」
嫌な予感がした。
だから私は声を上げて制止する。
声を張り上げ頭の中の声をかき消そうとする。
「やめてって言ってるでしょ!!!」
けれど響くのは薄ら暗い笑い声だけ。
「聞きたくない!!」
叫びにも似た私の声にも構わず、一つの物語の幕が上がる。
「これは、<小さな星>の物語……」
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