独白
これは誰が読むでもない。ただの記録である。
僕は視力と上半身以外全ての感覚を失った。
歩けない。耳も聞こえない。声も出ない。味も感じない。だから、ベッドの上でこうやって物を書いている。
最近、毎日夢を見るんだ。
僕の家族の夢だ。
妹の夢だ。
愛花の夢だ。
もう何年会っていないだろうか。愛花はきっと物心がつくかつかないかの頃だったろう。所謂、生き別れってやつで僕らは会うことができなくなった。理由は――いや、それはもうさほど重要なことじゃない。――運の悪い事件だった。
夢の中の愛花は成長していて、多分中学生くらいだった。
沢山話しをした。夢の中では、僕は何でもできた。歩くことも、会話をすることも、何でも。
そんな世界だったから、僕は楽しかった。幸せだった。だけど、愛花はそうじゃないようだった。あの子は、もうすぐ死ぬらしい。
だから、僕は僕の命をあの子に託すことにした。無論、夢の中の話だから、それであの子が救われるとは思わない。というか、あの子の余命が幾ばくも無いということ自体、ただの僕の妄想かも……。
あの子が、愛花が生きたいと望むのならば、僕は次、愛花に会うときに、そうしよう。僕よりあの子の方が生きるべきだ。
愛花が元気に生きているのなら、僕はそれでいい。
愛花よ、どうか生きて。
以上の記録が、栢山愛生と名乗る全身に障害を持った謎の男性の枕元から発見された。栢山愛生は安らかに眠っていた。
遅れましたが三月分でした。どうしてもアイデアが思い浮かばなかったので、中学生の頃に書いた小説のリメイク版です。
話の筋が当時と全く同じなので、拙く見えるかもしれませんが、それもまたリメイクならではの味と言うことで許してください(笑)




