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現実にて

 愛花の病室は空になった。真っ白なベッドが部屋にぽつりと置いてある様は、どこか悲しげであった。

 桜の木が、葉を落とす頃だ。また、寒い時期がやってくる。

 その日は雨だった。霧雨程度の降りだったので、彼女は傘を持たずにいた。その、確かに現実として降る霧雨とその音に、耳を澄ます。


「ほら、風邪ひいちゃうよ」


 彼女の母親の声。

 雨雲の切れ間に、虹が見えた気がした彼女は、胸を張って、誇らしげな顔をしていた。


「ほら、愛花――」

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