君と僕しか
これは夢だから。幻だから。私だけの世界だから。
愛花はとにかく遊ぶことにした。キリサメと二人で、色んな話をしながら。キリサメも、どうせ自分が創った幻だと思えば、何でも話せた。
ある日は鬼ごっこをした。ある日は折り紙をした。ある日は歌を歌った。ある日は……・。
……きっと全てやった。
この街で出来得ること。思いつくこと、全て。そして、愛花は呟いた。
「なんで、楽しいのに、楽しくないんだろう」
キリサメはその言葉に、目を伏せた。屈託のないその言葉に、狼狽えた。
「それはきっと、ここに君と僕しかいないからだ」
「どういうこと?」
愛花は真っ直ぐにキリサメを見つめる。
「ずっと二人じゃあ、つまらなくなるに決まってる。人は人との繋がりを得ることで、人生の楽しみを見出すんじゃないのかな」
キリサメの説教じみた言葉に、愛花は首を傾げた。
「つまり、愛花ちゃんは、まだ孤独のままだ」
愛花には分からなかった。キリサメの言うことが。
私にはキリサメがいる。この世界がある。それだけで十分だと思ったから。
現実の愛花の体は、もう一切動かなくなっていた。意識もない。昏睡状態の中、愛花はずっと霧雨の降る街にいた。




