病名は
今日も雨だ。
どんよりとした外の景色を見ながら、栢山愛花は溜息を吐いた。雨は嫌いじゃないけど、こう何日も降り続くと流石に嫌になる。
愛花はそんな気持ちにさせてくる景色から目を逸らし、ベッドに仰向けになった。天井に見える、整頓された無数の穴は、見れば見るほど不思議なものだと思った。
数えたいけど、数えきれる気がしなくて、やっぱり数える気が失せて。それでも気付けば数えてしまう。
入院生活は二か月を過ぎた。愛花は何度も精密検査を受けた。だが、先生も親も病名を教えてくれない。聞くと、何となく気まずい雰囲気を醸しながら、話を逸らす。
そういう空気に、愛花は何となく、重い病気なのかな、と察していた。
「あーあ、早く元気になりたい」
雨の音をBGMに、愛花はそう呟いた。
突然の事だった。
先生の言葉に、愛花は言葉を失った。
「愛花ちゃんは、あと一年の命です」
愛花の母親が、抑えきれない感情を吐き出すように泣き出した。
当の本人はというと、悲しみとか、恐怖とか、そういうものは一切感じることができず、ただ実感が湧かないと言った風に虚空を見つめていた。
「病名は――」
先生が聞き慣れない、長ったらしい医学用語を言った。
中学生の愛花の頭では、よく分からない話だった。心臓がどうとか、手術がどうとか。全てが現実味を帯びていない、ドラマの世界の話みたいだ。
母親のすすり泣く声。
昔もこんな声を聞いた気がする。そうだ。あの日も雨だった。
愛花はそう思って、おぼろげな記憶の内容を頭の中で反芻した。




