No.EX02 クイーン&ビジョップ
私とチェレンは仙国蓬莱の辺境の地で産まれました。そしてチェレンとは幼馴染みとして育っていましたが日々の暮らしは最悪でした。理由は簡単で、2人とも異能力者だったからです。異能力者だとわかってからは両親すらも私達の事を奴隷の様に扱うようになりました。朝早くから起こして仕事をさせその日の仕事が終わるまで寝ることすら許さらませんでした。食事は与えられるもののその食事は生ゴミを使ってつくられたものでとても人間が食べる物ではありませんでした。というよりも他の動物達でさえ食べるとは思えませんでした。それでも食べなければ生きていけなかったので毎日吐きながらも私達は食べ続けました。毎日、理不尽な事を押し付けられ言った通りにしなければ暴行を延々と受け、私達2人は頭を地面に擦り付けて謝り続けました。自殺をしようとしても暴行を受けました。寝る場所は屋根の軒下でした。それは雨や嵐、雪が降っても変わりませんでした。しかしそんな地獄の日々は急に幕を降しました。その日の仕事を終えていつもと同じ食事を摂ろうとした時でした。一瞬でしたが物凄い風が吹き目を閉じた瞬間にいつの間にかいつもの食事ではなくそこには温かいスープとパンが置かれていました。私達は不思議に思いつつも周囲にバレない様に隠れて急いで食べました。そして私達は食事を摂った後、眠くなりいつの間にか眠ってしまいました。そして目が覚めると私達は家の中で毛布を掛けられて眠っていた事に気付き周りを見ると辺りは血の海になっていて私達の親達もそれに沈んでいました。そして家の中に血塗れの黒いコートを羽織り大量の血が付いた刀を持った男の人が入って来ました。それを見たチェレンは速攻で異能を発動させて魔術を強化して放ちましたが魔術を男の人は斬りました。今度は私も異能を発動してチェレンの事を強化して魔術を放ちましたがそれすらも斬られました。その時、私達は死を覚悟しましたが男の人は刀を鞘に納めて頭を下げて謝って来ました。
「ごめんなさい。僕がもう少し早くここに来ればもっと早く地獄みたいな生活から抜け出せていたのに。本当にごめんなさい。これはそのお詫びです。これを使って穏やかにそしてまともな生活を送ってください」
男の人は大量の金貨が入った袋とそして大量の食料と衣服が入った袋を渡して来ました。そして家から出て行こうとした時にチェレンが今度は男の人に質問をしました。
「もしかして昨日、パンとスープを置いて行ってくれたのはあなた何ですか?それにこの家で毛布を掛けて寝かせてくれていたのも」
「ええ、それとスープに睡眠剤を盛ってしまった事をお詫びします。とても疲れている様に見えましたしそれに周りを見てもわかる通り沢山の人を斬り殺す瞬間なんて見せたく無かったんです。それでは僕はこれで失礼します」
そう言って男の人は今度こそ家を出ようとした所を今度は私が引き留めました。
「沢山のお心遣い感謝致します。ですがこんなに沢山の物を受け取れません」
「いえいえ、受け取ってください。僕の父の教えなんです。本当に困っていた人や困っている人は絶対に見捨てるな、相手が救いを拒んでも助けろっていうね。ここでそれを返されて家に戻れば間違いなく父に殴り飛ばされますから」
男の人は微笑んでそう言った。
「「ですがやはりこれ等は受け取れません。その代わりにあなたと一緒に行かせてください」」
私達はいつもやっていた様に床に頭を擦り付けてお願いしました。
「ええとちょっとだけ待って頂いていいですか」
そう言って男の人はコートの中から宝石を取り出して宝石に向かって話し掛けていた。
「ハルです。龍帝様詳しい話はまたそちらでお話しさせて頂きたいと思いますが先日の件は承るという形でお願いします。ええそれとこちらで保護した2名の受け入れと治療もお願いします。それでは」
男の人の会話を聞いて私達は心の底から驚いてしまった。
「あのハルさんでしたっけ、もしかしなくてもあのアヴァロンの方なんですか」
「はい、それと取り敢えず許可は頂けたので近くにある転移門で早速アヴァロンの方へ向かいましょう。えーとお2人のお名前教えてもらっていいですか」
「私はツバキと言います。年は19歳です」
「僕はチェレンと言います。年は17歳です」
「じゃあ僕より年上だったんですね。それでは行きましょう」
そう言って私達はハルさんの案内でアヴァロンまで行くと龍帝殿と呼ばれる神殿の様な場所の治療室に寝かされて傷のあった場所に治療術式を掛けられて身体には注射針を刺されて点滴を打たれました。
「お忙しい中申し訳ありません龍帝様」
僕は頭を膝をつき頭を下げる。
「気にする事はない。それよりもだ。何故急にこの間、話していた何かあった時はこの国は関与を否定されて孤立すらあり得る組織の設立を受け入れる気になった」
「僕は今まで父さんと母さんに拾われて師匠達に鍛えられて貴方の国に守られてきました。ですから今度は僕が誰かを助け救いたいと思っただけです。しかしながら僕がその組織の長に僕がなる以上、僕や僕の仲間に手を出したならば僕は如何なる相手でも誰であれ牙を剥き剣を向けます。それだけは忘れないで頂きたい」
僕はそう言い終えた後龍帝様に一礼して龍帝様の部屋を出た。そして僕は治療室に向かった。
ここに来て暫く経ったある日僕達の治療室にハルさんが入って来た。そして暫くハルさんは黙った後に口を開いた。
「僕について来れば確実に血塗れの道を歩く事になる、それでも2人とも僕について来て来れますか」
僕達はツバキ姐さんと揃って言い返した。
「「例えどんな道であってもハルさんと同じ道を歩きます。それが血塗られた道であろうとも」」
「ありがとう。そしてようこそ僕の組織へ。これとこれはツバキさんへ。そしてこれとこれはチェレン君へ」
ハルさんから僕達は大きな袋を2つ僕達に渡してきたので貰い直ぐに中身を出してみると中には白黒のコートが入っていた。そしてもう1つの袋には剣やナイフそれに治療薬等が入っていた。そして最後に僕とツバキ姐さんに小さい何かを手に握らされた。
掌を開くとそこにはチェスの駒を模ったネックレスがあった。そしてハルさんも自分の首にチェスのポーンの駒を模った物を着けていた。
「そのネックレスはこれから僕達が仲間だという証です。受け取ってください」
僕と姐さんは直ぐに首からネックレスを下げた。僕のネックレスはビジョップで姐さんの身につけているネックレスはクイーンだった。
そしてこのネックレスを貰った次の日に揃って退院して新しい職場兼住まいとなる詰所と宿舎に入り私達は新しい生活を始める事になりました。