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秘密のやりとり

王女とのやり取りは伝書鳩を使って行うことになった。

といっても街に出るときに事前に連絡することだとか

王家について知るために読まないといけない本のタイトルだとか

あるいは、会った時に用意しておくべきものが書かれていた。


・街中で会うときはアンナと呼び捨てにすること

・エディンバラ西部で済む織物商の娘であること

・遠出できるように剣術を学ぶこと

・王室の歴史書を学ぶこと

・馬術を学ぶこと

・近隣の街道や地形について知っておくこと

以上は王女の命令!破ったら厳罰なんだから!


というように書かれていた。


(注文が多いなあ)

溜息が出るほど仕事を押し付けられた気分だった。

謁見式の後しばらくして、灯糸の歴史編纂の仕事が始まった。

これが思った以上にハードワークだったのだ。

3ヵ月間みっちりと英語勉強漬になったとはいえ

英英辞典で調べなければ専門的な文章は全く書けない。


調べながらであると時間が書かかるが

アビィ外交担当副官はアウトプットの速さが凄まじく

彼がその水準を求めているのは明らかだった。


にもかかわらずである。

最初、美少女のデート相手なんて行幸だと思っていたが

考え方はすぐに変わった。

多くても一日一通ぐらいの書簡を想定していたのだが

ことあるごとに伝書鳩がやってくる。


以前来たメッセージはこうだ。

「エディンバラの西側にある街について、どういったものか調べてレポートが欲しいの

織物商っていう設定を深めるために調べたいけど、庶民の生活について知ることさえ

王女らしくないって言われてしまうから。」


それを確認すると、伝書鳩がいつ帰るのかと思いながらも

歴史編纂の仕事に戻った。


30分もすると、新しい鳩がやってきた。

「王女のメッセージを未読スルーするってどういうこと!?

それに返事を持たせないとリッキーが戻ってこれないでしょ??」

伝書鳩の一羽はリッキーというらしい。

ともあれ後から返事するといことを許さないのである。


「庶民が読んでいる本ってどういうものがあるのかしら?」

「アイラ島で素晴らしいお酒を造っているらしいの」

「夜空の星を研究している人たちがいるって本当なの?」

「スコットランドの北部には地面からお湯が沸き出る場所があるそうなの。

行ってみたいわね」


その勢いに灯糸は青ざめた。

そもそも王女と文通しているのは罪に問われたりしないのだろうか。

幸いにも灯糸は個室を与えられていた。

というのも彼の持っている知識は機密事項と指定されたからだ。

目下フランスやスペインがライバルのイギリスで

遠くの東洋の知識がもし優れているなら独占したいという願望もある。

そのため他の官僚たちとは実質的に隔離されていた。


それでも15分に一度の書簡の返答はつらいものがあった。

(王女は暇なのか!?)


日々の職務に忙殺される中で、「王女命令」をこなすためにアビィに申し出た。


まず剣術。そして馬術だ。

21世紀の現代っ子である灯糸には馬に乗った経験がない。

だが広大な平原を持つイギリス領内を移動するなら早めに覚えていた方がいいと思った。


「なるほど。馬に乗りたいと。

確かに乗っていただかないと出張対応が難しいかもしれないですね。

だけど剣術をされるのですか?」


「実は日本で日本流の剣術を学んでいたんだ。毎日素振りしてたんだけど

ここんところやっていなかったからな。こっちとは勝手が違うかもしれないけど」


「興味深いなあ。だったら幼馴染が軍の特殊部隊で働いているから、そこで鍛えてもらいましょう。馬術についてもそこで学べるでしょう」


歴史編纂は週1日は免除され、金曜土曜日は訓練の日となった。

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