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プロローグ

何の因果か、かの地に転生された。

僕がそこにいる理由を見つけたように

ここに戻る意味も見つけた。

そういう冒険だったんだろう。

だけどニア、この物語を君に聞かせるのは酔狂ってわけじゃないんだよ。


--------

20歳。21世紀の日本ではこの歳で完全に大人として扱われる。

だが彼の頭は迫ってくる就職活動で頭がいっぱいだった。

まだ大学2年だから時間はあると言えるかもしれないが、

日本史を専攻していることを後悔しつつも

モラトリアムの延長を模索できないか考えたり

日本の歴史で飯を食えないか想像したりして絶望する。


彼は昔から好きだったことをそのまま大学での勉強として選んだだけだった。

それは彼にとって幸せそのものであったが、社会の中に入っていくというのは

好きなことだけやっていくには厳しいものだった。


いつものように道場で素振りをしていても心は上の空だった。

10年続けた剣道が彼の窮地を救ってくれそうにはない。

幕末のうんちくを振りかざして会社の上司に媚を売るぐらいしか

彼の立場をよくするものはなさそうだ。


彼は剣道の歴史や食品から服飾品にいたるまで様々調べては

空想の世界で楽しんでいたが

それらの深い知識が現実世界でどのように役立てるかは

まったく考えられなかった。


いっそのこと大学院に行ってさらにモラトリアムを伸ばすか。

だがその後、社会的に詰むという予感が舵をとらせないでいた。


3年になれば英国に短期留学の予定で、英語の勉強をしてはいるが

それは父親が世界を見てこいと強く言うからで、

日本のことばかり勉強している自分には気乗りのしないことだった。


素振り千回は彼の10年間にわたる食後の運動だった。

それが終われば風呂に入り瞑想し寝る。

10年のルーティン。これをしなければ落ち着かないというほどである。


祖父が死ぬまで運営していた剣道場で寝転がり、思い出にひたっていた。

(じいちゃん色々教えてくれたなぁー)

(今思ったら日本の武器だとか武術に興味を持ったのはじいちゃんのおかげかもなあ)


彼はいつの間にか眠っていた。


--------------


海や湖で少し高い波がやってきて

水中に押し込まれた経験はあるだろうか?

あるいは浜辺で眠っていた際に

気づかずに波がやってきて全身に潮水を浴びたことは?


ちょうどそんな感じだった。

道場で寝ていた彼は突然波をかぶったのだ。


鼻に水が入り飛び起きたが、地面がない。

道着が重たく感ぜられ、水中に強制的に入っていく。

何が起こったか、どういうことが起こったかわからないまま

水中から顔を出して目を見開いた。


地平線に街が見えたような気がした

--------------

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