神聖かまってちゃん「ロックンロールは鳴り止まないっ」
僕は「意味」から抜け出したいと考えていた。
この言葉の意味は? この行為の意味は? 意味のあることをしよう。
あらゆる意味にへとへとに疲れてしまった。
意味の世界を、どんな意味でも「これでいいのだ」と言ってのける天才バカボンのように、抜け出したくなっていた。
神聖かまってちゃんの『ロックンロールは鳴り止まないっ』という曲は、ロックンロールは意味に回収されないことを歌った歌だ。
この曲の主人公は駅前のTSUTAYAでビートルズとセックスピストルズを借りる。しかし、「何がいいんだか全然分かりません」。
その後、夕暮れ時に部活の帰り道でまたビートルズとセックスピストルズを聴くと何かが以前と違う。「MD取っても、イヤホン取ってもなんでだ全然鳴り止まねぇっ」。「なんでだ」と言って鳴り止まない理由を分かっていない。
時が過ぎ、この曲の主人公はギターを持ち、それを掻き鳴らし、吐き出すように歌を歌い始める。近くや遠くにいる「君」に向かってギターを鳴らす。その時、「君」が曲の意味が分からずとも、「ロックンロールは鳴り止まないっ」と主人公は言う。
意味が分からなくても、ロックンロールは鳴り止まない。
この曲にあるのは、熱だ。「ロックンロールは鳴り止まない」と歌う最後(「今!」)まで、時間が経つにつれて曲の体温は上昇していく。ロックンロールと同様、熱も意味に回収されない。皮肉家はちゃかすが(それも大切)、熱くなるのに意味などいるものか。の子が「do da」と歌うのは、意味のある言葉では熱を語ることはできないからだ。
TOWER RECORDで『友達を殺してまで。』がパワープッシュされていて、1曲目のこの曲を聴いてすぐに、僕はレジに直行した。意味に疲れた僕にとって、この曲は意味の世界を超えた何かがあった。理性ではそんなことを考えていなかったが、直感がそれを悟ったのだと思う。
ロックンロールは死んでいない。勝手に殺すな。生きているよ。ロックを進化論で語り、進化が止まったから死んだのだと語る人は、ロックンロールが意味に回収されないことを見落としている。僕や大勢のリスナーのように、ロックンロールに体温を感じる人間がいる限り、ロックは生き続ける。