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Ado「うっせぇわ」と神聖かまってちゃん&うみのて【嫌いという感情を歌に託して】

(ナマ)なヘイト表現が支持と反発を呼ぶ


巷で話題のAdo「うっせぇわ」。曲を作った男性コンポーザー”syudou”とそれを歌う女性シンガー”Ado”とという組み合わせは、「夜に駆ける」が大ヒットしているYOASOBIを連想させる。ただ、YOASOBIのボーカルである幾多りら(ikura)とは違ってAdoは顔出ししていない。(しかし、Adoの顔写真が流出しているようで、ネットは怖いなと悪寒が走る。)


この曲は、サビでタイトルの「うっせぇわ」を連呼する分かりやすさや、女子高生シンガーであるという珍しさがウケているのだろう。ただ、いかにもDTMで作りましたという打ち込みサウンドを含め、音楽的には僕は評価しない。(僕は下手くそな元ベース奏者ということもあって各楽器にプレイヤビリティを感じる曲が好きだ。)


しかし、 ボーカロイド的な音楽のテクスチャに魅力はなくても、その表現のストレートさに価値はある。オブラートに包んでいた本音である原初的なヘイトの感情を曝け出してぶつけるような歌詞、歌唱、サウンド。決して取り繕っている訳ではないそれらに共感するリスナーも多いだろうし、受け取るリスナーによっては、(ナマ)のヘイトの感情に当てられて気持ち悪いと感じる方もいるだろう。


原初的なヘイトを吐き散らした曲で自分が連想するのは、神聖かまってちゃん「夕方のピアノ」とうみのて「UNKNOWN IDIOT」だ。


神聖かまってちゃん「夕方のピアノ」は、Ado「うっせぇわ」よりも酷いかもしれない。だって、うるさいどころではなく、ボーカルの"の子"が「死ねよ佐藤」と連呼する曲なのだから。「うっせぇわ」は社会の大人に対する恨みを歌っていたが、「夕方のピアノ」は佐藤という実在する人物に対する恨みを歌っている。学生時代に佐藤は”の子”(大島亮介)をいじめ抜いた人物で、その時に「大島宇宙人」というあだ名を"の子"につけた。"の子"はその経験から「Os-宇宙人」という曲を作っている。佐藤へのヒリヒリするような憎しみが切実さを呼ぶ「夕方のピアノ」は掛け値なしの名曲だと思う。


一方、「UNKNOWN IDIOT」は、うみのての笹口騒音さんが2ちゃん(現:5ちゃん)のうみのてスレにいらついて作った曲だ。


”いいかお前の体を10年後か100年後だかに蝕むのは

毒でも水銀でも放射能なんかでもない

お前の腐った腐りきった心だよ

匿名の名無しのお前よ 気づかれないとでも思ってるのか? ”


"匿名の名のもとにしかなーんにもいえない弱ーい弱い名無しのお前

でも大丈夫だよ 安心しろよ

俺が死ぬまで見ててやる

お前がお前に気づくまで"


「死ね」という言葉を使わずにヘイトの感情をこれほど豊かで辛辣な言葉にしたためた歌を僕は知らない。また、原初的なヘイト感情が吹き荒れる匿名掲示板の欺瞞にこれほど迫った曲を僕は知らない。こうやって「僕は知らない」を連発してしまうほど、この曲は希少価値がある曲だと思う。


しがらみを押し付ける職場の上司にしても、自分をいじめるクラスメイトにしても、悪質な書き込みをする2ちゃんねらーにしても、その罪を世間に告発されてしかるべきだと思う。そして、その告発にスカっとするリスナーもいるはずだ。


人間の感情って、"好き"や”愛してる"だけではないでしょう? "嫌い"や"憎い"という感情だって当然あるはず。"嫌い"や"憎い"という感情に寄り添える歌も良い歌なのではないかと思う。原初形態で加工されていない生のヘイトの感情を忖度せず歌い遂げる度量に拍手です。

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