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【歌詞の意味】神聖かまってちゃん「僕の戦争(フルサイズ)」感想&レビュー●壁を壊す歌

●日本と海外の間の壁をぶち壊す名曲


『進撃の巨人』ファイナルシーズンOP主題歌である神聖かまってちゃん「僕の戦争」がフルサイズで配信解禁しました。サポートベーシストに同バンドのマネージャーも務めたことがある劔樹人さんを迎えて放つ渾身の一曲です。サポートバイオリンにはチーナの柴さん(おなじみ!)やyusaさんという方も参加しています。


「僕の戦争」は、彼らの初期の曲でいうと、「天使じゃ地上じゃちっそく死」みたいな地獄&カオスな楽曲です。あの頃よりも洗練された地獄が聴こえてきます。海野恵さんという方が編曲しているようですが、調べても出てこず…。この緻密なアレンジに海野さんがどれほど貢献しているのかは、分からないです。


『進撃の巨人』2期ED曲である「夕暮れの鳥」が鳥かごの中から自由に飛べる空を夢見るような逃避主義(エスケーピズム)にあふれた曲だとすると、「僕の戦争」は逃避しきれずに地獄を感受するかのようなサウンドだと思います。オーグメントの和音が不協和な地獄を演出しています。


曲タイトルは、イギリス映画の『ジョン・レノンの僕の戦争(邦題)』を意識したのでしょうか。代表曲「ロックンロールは鳴り止まないっ」の「ビートルズを聴いた」という歌詞から分かるとおり、"の子"はビートルズとジョン・レノンを意識しているはずです。この映画、私は未見の映画ですが、Wikiによるとコメディ映画であるようです。戦争という深刻な災禍を背景にコメディを演じるのは、病気や過去のいじめの経験などをバックグラウンドに持ちつつ、ユーモアあふれるパフォーマンスを演じる"の子"と重なる部分もありますね。


それでは、歌詞を見ていきましょう。


Destruction and regeneration

You are the real enemy


破壊と再生こそが本当の敵だと歌っています。具体的な人物を敵視するよりも、戦争と復興を繰り返す人類の宿命こそ打破しなければならないと歌っているのです(と僕は解釈しました)。スケールが大きな歌詞ですが、サウンドもそれに応えるようにスケールが大きくなっています。


1曲の中でヴォーカルに英語パートと日本語パートの両方があるのは、英語パートが世界情勢で、日本語パートが日々の日常のメタファーであるからではないでしょうか。また、日本語パートにおいて、ボイスチェンジャーを使って女声に模しているのも、英語パートの地声と区別しやすくするためではないかと思います。ボイスチェンジャーを使った"の子"のヴォーカルは、同じくボイスチェンジャーを使った「夕方のピアノ」や「るるちゃんの自殺配信」のように親しみやすく、親しみやすさゆえの切実さを感じます。


前半部の英語パートから後半部の日本語パートに移る間の間奏では、彼らが影響を受けているファイナルファンタジーのゲーム音楽と似たバイブスを感じます。


【追記2月23日: の子は伊藤賢治(イトケン)さんからの影響と曲の中盤からは聖剣伝説からの影響を受けていることをリスナーにリプしていました。ゲーム音楽からの影響は絶大ですね!】


情景をつなぐ大事なパートであるこの間奏は、シンプルかつスタイリッシュで聴き心地が良いです。この間奏をもって、最後の幻想(戦争あるいはファイナルファンタジー)は終わったのです。これに続くのは、学校の教室という終わりなき日常、緩慢な地獄……。


帰り道を無くした風景

夕焼けこやけ逆さまに

下校時間 他人の影踏み

気づいたら夜明け 1人きり

1人きりを終わらせないって

泣いていいよ今だけは

明日の準備がどうせまたあるし

宿題やって寝なくちゃね...


上記の歌詞を含む日本語パートが加わったことで、曲の捉える射程が変わった。戦争の戦場から教室という戦場に接続するが、神聖かまってちゃんにとっては地続きの世界なのだ。神聖かまってちゃん印の文学性を感じます。


原作者の諌山創さんによる「僕の戦争」のジャケットは、学校の教室を描いたものながら、白黒です。これは「僕の戦争」が鳴り響く『進撃の巨人』オープニング映像において戦争をカラフルに描く一方で、人類には白黒で色をつけていないことと対応していると思います。そして、この曲のTVサイズ時のジャケットはフルカラー写真であったことを考えると、この世界観では教室はまさに兵器入り混じる戦場であり、その戦場におもむくのは一人の生徒なのです。


この曲は、本能で人を喰う巨人のように表現のエゴを突き進んだら、大衆(海)が見えてきた稀有な曲だ。しかも、海外で更なるブレイクを果たした。アニメ『進撃の巨人』と同じく、この曲もレガシーになるだろう。僕も応援しています!

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遊道よーよーの運営する音楽ブログ『とかげ日記』です。
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