リナちゃん大地に立つ!?
「ここが地球か…」
朝靄の中で少年の声がします。
王子様の声ではありません。もっと若い…。最近すっかり人の気配を忘れていた薔薇は、色めき立ちました。
「確かに、あの人がハマりそうなところだ」
声の主は何気なく近付いて来るようです。薔薇はヤキモキしました。靄が全ての視界を奪っているんだもの。
ふいに、木々の間を逃れた朝日が、彼を照らしました。彼を包んでいた靄だけがスッと消え、やわらかなスポットライトが、薔薇の好奇心に答えをくれます。
「キレイな人・・・」
その人は後ろ姿。
黒っぽい服を着て、ズボンのポケットに手を入れたまま、空を見上げているようです。腰の辺りまである長い髪は、黄金に輝いて、朝の風に軽く揺れています。
薔薇の好奇心は返って強くなりました。
「もっとよく見たい」
このままアノ人がどこかに行ってしまったら、何かこう、私の全ては終わりってカンジ。 私が植物なのは、根を張っているのは、動けないのは、もう、何かの呪いですかっ!ってカンジだわ!
しかしその人はそのまま、コメカミに手を当て考え事をしながら立ち去り始めました。薔薇が力いっぱい揺れているのにも気付きません。
「ヤだ。このシチュエーション。やっぱり、ナニかの呪いかっ」
もう、独り言でツッコミまで言っちゃいます。
「・・・? 呪い?何かあったの?」
「ええっ?」
「君でしょ。今、呪いとか言ってたの。大丈夫?」
少年がくるりと振り返って近付いてきます。
「え、あっ、はい」
まさか、まさかの大逆転。盆と正月とクリスマスが一緒にやってきてこんにちは状態じゃん! …と薔薇は小躍り。…ジャンプできないけど。
「何かあったの?」
少年は薔薇の高さまで屈んで話しかけてくれます。
「いえ、何でも。・・・というか、あなたは私の言葉が分るのですか?」
ここはひとまず、しおらしく。とことんしおらしく。
「うん。分るよ。心配しないで」
その人は、柔らかな笑顔。絹みたいにキレイな肌に、空より青い透き通った瞳。すっきりした顔立ちが薔薇のすぐそばに近付いてくる。
「どうしたの?」
「いえ、あの・・・」
少年の無垢な美しさに、薔薇は目も合わせられません。
「ん?」
小首を傾げて微笑む少年に、薔薇はもう気絶寸前。でも、ここで踏ん張らなくちゃ!千載一遇のチャンスよ。頑張れファイト一発!
「ブゥーーーー!」
「ブゥーーーー?」