プロローグ その2
王子様は立場上、延々(えんえん)と地球に入り浸っている訳には行きません。故郷に戻ってすべき仕事は沢山あるのです。しかし、惑星を離れても、心はべったり離れられませんでした。
「はぁ…」
毎日ため息ばかり。
「息子よ。なぜため息ばかりついておるのじゃ?」
見かねた王が声をかけました。
「いえ、何でもありません」
…地球で、禁断の『人間繁殖』をしているなどと、言う訳にはまいりません。
しかし王とて、『あなた、いくらお仕事が忙しいからと言っても、息子の事だって見てあげてくださいね。』と、王妃に言われてしまっている以上、「そうか」では引き下がれないのでした。若干恐妻家なので…。
「息子よ…」
「・・・ふぅ」
深いため息のその背中に、王は困り果てました。その時です。王の頭の中で電球が千ワットの勢いでピカッと光りました。(注:もちろん比喩です。サイボーグじゃありませんから。)
「そうだったか。確かにそういう年頃だ」
王は何の確認もせず、一人納得しながら立ち去りました。
…それで良いのか。『宇宙の支配者』!
☆☆☆☆☆
それにしても、『宇宙の支配者』というものには、強大な権力に比例して、面倒な依頼も入ってきます。例えば、息子の縁談。
政略結婚ミエミエですが、星の数ほど持ちかけられます。結婚は恋愛で・と考えていた王でしたが、息子に彼女がいるというお庭番からの情報もナシ。わが子ながら、生まれてこの方、女性との縁が無い様子を見ていると、胸が詰まる思いにもなるものです。
で、さっそく息子に勧めてみると、
「いいよ」
全く摩擦のない返事・・・。
まぁ、アレです。政略と言えども、星を代表してやってくる女性なら、容姿も性格も選りすぐっているでしょうから、こだわりナシの王子なら、抵抗する理由もありません。あるとしたら、むしろ女性の方。
そういう訳で、ドタバタドタバタと顔合わせの儀とか結婚の儀とか、よく分らない儀式が次々と進み、めでたく妻を娶った王子でありました。