ファミレス・オムニバス(1)
問題です:今回の主役は誰でしょう?
やはりお坊ちゃまは凄い。
あの狂乱女を黙らせて、バーじゃなくファミレスに連れて来ちゃうなんて、どう話を持っていけばこうなるのだ? しかも、彼女はかなり機嫌がいい。どうしたらこうも変わるのだ? 全く『はぐらかす』ことと『ごまかす』ことに関しては天才的なんだから。『はぐらかし選手権』なんてものがあったら優勝間違いなしでしょう。
しかし、ファミレスのド真ん中でこの面子…。私の隣にお坊ちゃまが座りましたが、注文の後はすまして座っているだけ。
こういう場合、絶対ご自分から会話の口火は切らないのですよ。いつもそう。面白そうなメンバーの場合、黙って観察して楽しむという意地悪なところがあるのだから、困ったものです。それにしても、
私の隣はお坊ちゃま、そしてあの凶暴女。向いの席には彼女と互角位に戦っていた大男、そしてなぜかバーの中にいたほのぼのとした中年の男性までお連れになってる。全員と繋がりがあるのはお坊ちゃまだけなハズ、ご紹介頂かないと困るのですが。
「ねぇ、とにかく自己紹介しましょう♪」
やはり、口火を切ったのは彼女ですね。それにしてもナゼに『♪』付き? 何故?
「じゃ、アタシからかしら。名前はローズ・スミス。王子さまに今、付けて頂いたの♪ よろしくね」
シンプルというかそのままというか、ひねりナシ。でも、まず、彼女は機嫌がいいのだから何よりです。
「あー、俺は地球では、鈴木です。鈴木太郎」
この方もシンプルな名前だなぁ。あっ、スミマセン世界中の鈴木太郎さん。そう言う訳じゃなくて、(どういう訳?)あの、このバカでかい巨漢のハゲのガニ又の髭もじゃのえーとあのその、%#$%&…。
「お待たせいたしました」
メイドさん、じゃなかったウェイトレスさんが来た、ほっ。(ナニがほっ?)注文の品が並べられます。
「へぇ、ナニこれ? うわっ苦っ…」バラ、じゃなかったローズさん。
「コーヒーでございますが」
と、ウェイトレスさん、目が点になってる。コーヒーを知らないのは、この時代において怪しまれるのでは…。
「コーヒー!?」
…だからローズさん、空気読んで!空気! この話題掘り下げちゃダメですよ。
「はい、コーヒーですよ。コーヒーの木に生る豆をローストして、粉になるまで挽いて、それからフィルターに入れて、お湯を掛け、出てきたものです(笑顔)」
「げっ。キモッ!」
ローズさん! そんなこと言っちゃいけませんてば。でも、『あんたがたどこさ』系の表現だなぁ。確かにちょっとグロい。(センバ山にはたぬきがおってさ、それを猟師が鉄砲で撃ってさ、煮てさ、焼いてさ、食ってさ…。)怖。
「こっちは?」ローズさん、もう止めましょうよ。(汗)
「ココアですが」
「うん、こっちは美味しいかも」
「それは良かったです。これは、カカオ豆をローストしたものを、よく挽いて、牛の乳と合わせて練り合わせて砂糖と混ぜ、お湯を注いだものです」
「げっ!」
ウェイトレスさん! そんな表現ヤメテください。このファミレスどういう教育してるんですかっ!
「こ、こっちは?」
「ローズティーです。特別にローズ・ヒップも加えて…」げっ、
「ウェイトレスさん!」
私はたまらず遮ってしまった…。ローズさんに植物の実をどうこうするお話は勘弁してください!
「もう、ヤだっ。やっぱり人間って残酷だわっ。生命の源をなんだと思ってるのっ!『実』とか『卵』は大事なのよ。それを料理するなんて、グロすぎる!」
ああ、ヤバい。ローズさん。もう怪しまれすぎのセリフです。ああ…。しかし、どうしたんでしょう。鈴木さん。ローズさんのセリフに継いで、お口の中の食べ物をふきだして…。もう、汚いじゃないですか。
「オムライスは心配無い。たぶんそれは無精卵じゃろうし(笑顔)」
おじさん!! 何故か先ほどから参加しているおじさん! もう、事を掘り下げないでくださいっっ。っていうか、もっとマシなフォローないんですかっ!
簡単でした?
ハザマでした。