使命のために!…まずは顔合わせ!?
またまた、主役交代です。というか、本来はアンタが主人公なんだよ、リナちゃん。ダメッ、そんなウルウルした瞳で私に視線を送っても、もう騙されないんだからっ。ホントにもう、隙があればすぐ逃げるっっっ!!! すぐはぐらかすっっっ!!!
・・・やっぱり、アレです。振り回されっぱなしな作者です。(後悔)
「深夜の新宿は…深夜じゃないみたい」
やたら明るいこの町じゃ、変わった動きは目立つかも知れない。この位は僕でも分かる。で、ガラの悪い男に絡まれた女性を保護して、男の方にはマーキングして…、って犬のそれじゃ無い、宇宙警察的な誰にも気付かれないマーク。以後、この男の行動に監視が付く。(機械で。感情を持った人に監視されたら嫌でしょ。)なので、とりあえず安心。さっ、戻って飲み直しって、…なんだこりゃ? いつから3人、仲良くなったんだろう?
僕の目の前には先輩とモトバラと、…たぶんハザマ。なんで一緒に騒いでんだ?
「お、お前! 勝手にどっか行きおって! 俺に尻拭いばかりさせるとは酷ぇ奴だなっ。くそっ」
セリフの最後『くそっ』に関してはモトバラに向かって言ったみたい。それにしてもどうして先輩はモトバラを羽交い絞めにしてるんだろう。バラの方も何て言うか、すっかりスーパーサイア化してるんですけど。
「お前! ナニ回れ右しとんじゃ! 事態の収拾に努めなさい!」
ああ、先輩の声は、聞いたことも無いくらい悲痛。でも、あの強力で、ガニ股で、ツルピカはげで、無駄にでかい先輩をあそこまで手こずらすなんて凄い! 僕が参加しても無意味な世界が出来上がりきってる。バケモノ対バケモノ対バケモノ(ハザマも勝手に加えちゃった。)なところで僕のできるのは、
「センパ〜イ! 頑張ってくださ〜い!」
と、コレくらいだ。というかそれ以上参加したくないカンジ。
「どうでもいいから早く何とかこの酔っ払い女を静かにさせろ!」
(えっ、飲んでないはずだけど…)いきなり超難問。
「あら、王子さま!? いつの間に戻ってらしたの?」
って、表情を戻さないうちにこちらを見ないでください。バラ(怖)。
「お? お前に気付いたら急におとなしくなったぞ、この女。知り合いか?」
「え、あ…」
脳全体がというか身体全体が否定したがっているけど、かろうじて前頭葉が抑えている。
「知り合いです(ナンカ敗北感。ナゼ?)」
「じゃ、お前何とかしろ、この女の絡んでた石像。粉々(こなごな)だからな。器物損壊だからな。あと、ボッタクリバーの件も忘れて無いんだ俺はっ!」
「…はい(ぼったくりってナニ?)」
しかし、バラは徹底的に踏みつけちゃったんだ、ハザマを。
「惜しい奴を亡くしたな…」
「あら、粉々でも死なないんでしょ? アノ人」
「う〜ん、どうだろ? 試したことないし」
「ええ! だってミジンコになっても戻るじゃない?」
だからミジンコって…。
「水槽持ってきてないし、命令系統が破損してたらどうしようもないけど…」
「ええ! アタシ殺人犯じゃないよね。だってアレ人間じゃないし。大丈夫、うん、大丈夫よ。気を大きく持ちなさいアタシ。ファイト!」
「ファイト! って、酷いですよ。ご自分の立場より僕を心配してください」
なんと、どこからかハザマの声。生きてるのか!
「どこにいるんだ、ハザマ」
「お坊ちゃまの右側の茂みの中です」
見れば、頭だけが植え込みの中で、空き缶に混じって転がっている。
「ポイ捨てはダメなのに…」
「僕のことですかっ、空き缶ですかっ!」
「いや、何に限定しなくても、ポイはダメでしょう」
「お坊ちゃま、これでも命からがら逃げたんですよっ! 私の恐怖を知ってて言ってるんですかっ!」
「ごめん、ごめん。無事で良かった! うんうん♪」
「また、笑顔でごまかす…」
ハザマの首を、道路で粉々になったモト身体というか、砂の近くに持っていくと、まるで超強力な磁石に集められるようにまとまり始めた。良かった。ホッ…。
「なんだぁ。さっきから! T2でも始めんのかよ」
さすが先輩は宇宙人。多少の事には動じないらしい。ようやく復元したハザマは、服に付いた埃を叩きながら、
「お坊ちゃまがあんまり急いで店を飛び出すから、この方が、後を追おうとしてキかないんですよ。もう、同行させる訳には行かないから何とか引きとめていたのに…、酷い目にあったなぁ」
「そうか、ありがとう。君のおかげで僕の初仕事は無事に終わったよ。君はいつも僕の見えないところで活躍してくれてる。ホントにありがとう」
謝辞。で、ハザマは満足そう。とりあえず良かった。でも、
「長い間、お店の外で待たされるって大変なのよ。分かる! お詫びに頂こうかしら? アタシにもお酒を」
「げっ!!!」
というセリフは、僕ら3人同時に発してしまった。(アーメン…。)