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眠るときの気持。

 「…というのは冗談ですが。」


 水槽からごく普通な表情でハザマが出て来ました。


「アンタ!ハザマのくせに脅かすんじゃないわよ。余計な演出下手な癖にっ」


「酷いなぁ、出会ったばかりでそんな言い方されるなんて。私にも遊び心はあるんですよ、それに…」


 濡れていない方のハザマは、言葉のキツイ割にはすっかり腰を抜かしているモトバラを、そっと抱えてソファーに。


「すっかりお坊ちゃまに楽しまれていますよ。私たち」


「私たち…って、アタシも含まれるわけ?」


「当然です。というか、主にあなたのリアクションを面白がられているようですよ、さっきから」


「そうなの!?」


 キッっと振り返ったモトバラの視線はプロミネンス級。たとえ王子でも石になりそうな勢いですが、なんとかこらえ…というか、そういう状況も楽しそう。冷静を装っても染み出てくる、王子の楽しんでる雰囲気。


「ごめんごめん、悪意は無いんだ。ごめん。なんかこういうの久しぶりで楽しいんだもん。訓練所にいた頃みたいで」


「訓練所って楽しい所でしたっけ?」(ハザマはすぐ本気にする…。)


「楽しかったよ。次に何が起こるか分からない状況ってワクワクしない?」


「しないしないしないしない」(ハザマくん、首とれちゃうよ。)


 頭を振り回して大否定するハザマと一緒に、他の4名も否定。…多数決により、王子の負け?


「つまんないなぁ、君たちって。新規探査傾向が足りないんじゃない?」(多い人ばっかりでも困るんですけど。)


 王子はともかく、場の空気はちょっと重くなってきたみたいな・・・。




「あの、せっかくですから、お茶でもお召し上がりになりませんか?」


 メイド1号の提案で事態は水入りに。偉かったねメイドちゃん。


 ☆☆☆☆☆


「でも、ナンかハザマの構造分かったでしょ?」


 王子は早速運ばれてきた紅茶の香りで、すっかり気分が良いご様子。


「そうね、随分分かった気がするわ。他にもっとあるの?謎の体質」


 モトバラは新しい話題にもうノリノリ。こっちの方がケロッとりょく高いっぽい。


「うん。実はね・・・」


「おぼっちゃま」


 乗り出した王子に、すかさずハザマは釘を刺す。


「うん」


 王子はハザマに引きつった笑顔を送りつつも会話は続ける。


「もともとハザマの本体は、あの水槽の中身全部なんだ」


「全部って、液体の?」


 モトバラ、超ノッてきた。


「液体に見えるけど、透明な細胞。それが一個一個意思を持って生きてる」


「何、アンタってミジンコの集合体!?」(モトバラの発想ってそんなもん。)


「いえ、ミジンコとかじゃないですけど。」(ハザマくん、テンションどんどん下り坂。)


「あそこでバラバラになっているのが一番リラックスするんです。多分、皆さんで言うと眠っている状態に近いと思うんですけど」


「近くないと思うんですけど。」


 モトバラ。


「うーん、何て言ったらいいのか…。私から見たら、立ったまま寝ている動物とか、泳ぎ続けている魚とか、皆さんみたいに、眠っていても心臓などの臓器が動きっぱなしの方が不思議で理解できないんですよ。そんな程度の違い」(ボキャ貧困。)


「もの凄く違うってことは分かったわ。了解」


 それで良いのかバラ・・・。


「それよりほら、このお茶おいしー!! 凄い美味しいよ」


 モトバラのベクトルは既にハザマから離れたもよう。ホント早い…。


「ありがとうございます。これは王宮御用達のお茶です。生産量がごくわずかなので、王族でも滅多にお口にできないものなんですよ」


 メイドは嬉しそう。


「きゃー。そういうの大好き!」(レア好き女め!)


「ねぇねぇ子猫ちゃん♪(メイドのこと?)折角せっかくだもん、一緒に分け合って飲みましょ、レアよ」


「そ、そんな、申し訳ないです。結構です」


「アタシ、美味しいものとか楽しいことは全員で分かち合いたい人なのよ。ねぇ、飲も」


「いえ、でも…」メイド1号が困っていると、


「それ、僕も賛成」


 と言いつつ王子さま、厨房ちゅうぼうから追加の紅茶セットとシェフとメイド2号を連れて現れました。いつの間に行ってたの?


 しかし、モトバラとメイド1号のやり取りはまだ続いていて、


「もったいないですよ。そんな」


「なぁに、アタシのしゃくじゃ飲めないってぇ?」


 …似合いすぎです。モトバラさま…。


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