リナちゃん王子さまになる!?
少年が時空の狭間に作ったという、ここ、秘密基地に来ただけで驚きだらけのモトバラなのに。
「なにコレ、趣味悪ぅ・・・」
思わず口にしちゃった。
だってホント、なんていうか、『冒険好きの男の子が夢に描く隠れ家っぽいけど、アタシのようなセレブというかレディは嫌い・大嫌い』というカンジのダイニング。
なんで壁のあちらこちらがスカスカなの? マンモスか恐竜かなんかの長〜いキバを幾つも重ねてつくる壁って、ちょっとワイルドすぎてキモイ。
お部屋はたくさんあるんだから、ベッドルームだっていくらでも出来そうなのに、なぜ? ダイニングのど真ん中にベッド? しかも天蓋付き。何、この男の子、そういう趣味だったの!?
「ふん、ま、いいわ」
こんな美しい少年から、こんなイメージ外の挑戦突きつけられて、ドキマギしているアタシじゃないわ。野性味あふれるバラの凄さをしっかり教えてあげましょ。(・・・謎。)
と、モトバラが脳だけ別世界へロケット発進しているのを知ってか知らずか、
「ここの食事の仕方には決まりがあって、ちゃんと守れないとお仕置きだよ」
少年は涼しい顔でモトバラを席に案内。モトバラのテンションは宇宙のカナタまで行きそうな勢い。でも、外見はいたって優雅に優雅に・・・。
「おまたせしましたにゃ」
うぉ、さっきのメイド猫二匹が、ナンカ凄いものを持ってきた。ボディボード並みのデカさの皿をそれぞれ頭に乗せて。
「ドーーーン!!!」(皿ごと空に飛んだっ。)
「どうぞお召し上がりくださいにゃ」ぺこり。
凄い、凄すぎる。
かなりの距離をものともせず、頭の上の皿を、モトバラと少年の前のテーブルにドーーーンと投げた。ストライク、完全ど真ん中。神技と言えるかも。
驚きを隠しきれないモトバラに、少年はにっこり、
「じゃ、頂こうか」
ワインを乾杯しようという姿勢。申し分なく、嫌味なく、ステキかも。
「あ、そうだ。ハザマいる?」
急に何? 王子さまったら。
「はい、厨房手伝ってます」
奥の方からハザマの声。なぜに、ここでハザマなの? モトバラは勝手にがっかり。
「食事が終わる頃、留守の間の報告してほしいんだけど」
「お父上の件ですね」
「うん。それとその周辺」
「わかりました」
「じゃ、デザートはハザマの分も用意するようにシェフに伝えてくれる?」
「はい、ありがとうございます」
という声と共にパタパタと誰かが走って来る音。ハザマだ。
「すみません。大事な報告忘れてました」
「どうしたの?」
「王様が引退を表明され、それに伴い、お父上様が次代の王様となることに・・・」
「ああ、前からそんな話はあったね」
「お坊ちゃまがお留守の間、戴冠式が行なわれました」
「あっ、列席案内来てたの忘れてた」
「ということで、おぼっちゃまが今は王子様という事になります」
「ああ、エスカレーター式だ」
ダイニングに集まったシェフやメイド達はお祝いムードの笑顔なのに、モトバラだけは驚きすぎて完全に固まっている。なんていうか、
逆メデューサ!