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ミルフィーユ
_____私の幼き頃の話をしよう。
私は、夢から簡単に現実に戻れる方法を知っていたし、とあるビルがミルフィーユに見えたこともあった。
恐竜は今でもいると思っていたし、宇宙人だっていると思っていたから、夜道を歩いているときは必ず空を見ていた。
しかし、いつしか夢から現実に戻ることができなくなって、まんまと悪夢に騙されてうなされるようになった。
あのビルは高校生まではミルフィーユに見えていた。
当時付き合っていた彼に、ミルフィーユに見えることを伝えると、「瀬奈はかわいいね。」と、小馬鹿にされた。
私は、天然を装って言ったわけではなく、本当にそう見えたのだから、心底この人とはやってけないな。と思ってしまった。
しかし、この件があって以来、あのビルはただのビルにしか見えなくなってしまった。