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中華街ウォーズ  作者: oga
9/11

対面

「すぐあの車を追いかけて!」

グエンは急いでキーのエンジンをかけ、ギアをドライブに入れ、アクセルを踏み込む。

「遅いわねっ!アタシが運転するわっ」

リンユーは無理やり後部座席から身を乗り出し、グエンを助手席に座らせて運転する。

「リンちゃんっ、め、免許は?」

「もちろんないわよ!」

思いっきりアクセルをふかす。

グウウウンとスピードを上げた車は、パーキングのバーをぶち破って道路に出た。


「お金払ってないよーっ」

グエンが叫ぶ。

「えええっ、ここってお金払うの?」

しかし、すでに道路に出て、アクセル全開で車を追っかけている。

時速60キロの道路を120キロで突っ走る。

「リンちゃんっ!ブレーキ!」

前方には赤の信号。

ギキイイイイッと甲高い音を立てて車は止まる。

後ろの水晶が飛び出し、フロントガラスに直撃する。

パアアアンッという音がし、水晶は道路に突き刺さるように飛び出し、砕け散った。


「あ……」

車のガラスは砕け、水晶も砕けた。

気まずい沈黙が車内に広がる。

信号が青に変わった。

「と、とりあえず、前の車追いかけよう」

リムジンは標準速度を守る緩やかなスピードで進んでいった。

「急ぐ必要なかったね。あはは」

グエンはそう言って恐る恐るリンユーの方を向いた。

リンユーはプルプルと手が震えている。

「アタシにだって苦手なことはあるのよっ!」

そう言って、今度は慎重すぎるほどゆっくりアクセルを踏み込んだ。

水晶は砕けてしまったが、今はそこまで気を回している余裕はなかった。


フロントガラスが破損した状態ではあるが、幸い警察に見つかることもなく、リムジンを追跡中である。

リンユーには、どこをどう走っているのか全く分からなかったが、お台場から出て、新橋を通過、外堀通りを進んで六本木、そして赤坂へと進んでいた。

「行き先はTVSテレビのスタジオかな?」

とグエンが窓の外を見ながら言った。


「ってことはやっぱりテレビの収録で向かってるのね」

(有名人だったら緊張するかも……)

そう思い、割れたガラスからリムジンを覗くが、ガラスにはスモークが入っており、中の様子は分からない。


もう間もなく、リムジンはTVSテレビの建物に到着する。

「あれがそうだ」

グエンが指をさす。

ガラス張りの外観に、ユーフォーのようなものが乗っている。

リムジンは道路を曲がって、その建物の敷地内に入っていった。

「任せたわよ」

リンユーは車を道路のど真ん中に止めて車を飛び出した。

「えっ」

戸惑うグエンを置き去りにして、リンユーはダッシュでリムジンを追いかける。

(守護者が姿を現すのは一瞬だと思うわ。だから、その機は逃さない!)


リムジンは建物の車寄せのスペースに止める。

リンユーも前髪を振り乱して全速力で近づいていく。

(くっ、間に合うかしらっ……)

リムジンまでおよそ100メートル。

その時、リンユーは少し離れたところから、守護者の姿を確認した。

のっそり、とその巨体がリムジンから出てきたのだ。

(うそでしょ!)

その守護者とは、マツコドラゴンであった。


説明は不要だと思うが、マツコとは、見た目の愛らしさと自分の思ってることを率直にコメントするスタイルで国民的人気を誇るタレントである。

ボディガードが2人、マツコの前に立ちはだかった。

「止まれっ」

(止まるのはあなたたちよ!)

リンユーは気を練り込み、相手の懐に飛び込んで胸に手を当てた。

ドサッ、と2人は崩れ落ちた。

それを見ていたマツコは、

「へえ、中々やるじゃない。気の扱いをマスターしてるみたいね。で、私に何の用?」

と言った。


巨体がリンユーを見下ろす。

中々の迫力だ。

「えーと、初めまして。アタシの名前はリンユーって言います。中華街の出身で、ある人から朝陽門の守護者を探してくれって言われて、マツコさん、あなたに会いに来ました」

するとマツコは、

「やっぱりそうなのね。ってことは、大いなる災いが近づいてるってことよねぇ」

マツコは立ち話もなんだし楽屋で話しましょう、と言い、建物に入っていった。


「ちょっと2人で話すから、悪いけどコーヒーでも買ってきてよ」

そうマネージャーに促し、2人になる。

「で、あなたも守護者なの?」

「はい、確か、朱雀門って言われました」

マツコは遠いい目をし、

「懐かしいわね。中華街、そして門の守護者。親に反発してこっちの世界に来たけど、宿命ってのはついて回るものなのかもね。あと他の2人は?」

リンユーは水晶の件をマツコに説明した。


「あんた、とんだドジっ子ね!それじゃ探せないじゃない!」

シュンとするリンユー。

「守護者を集めないと災いは防げないって伝承だからねえ。それならあなた、私の番組に出て見ない?」

「えええっ!アタシがですか?」

「そうよ、マツコの知らない領域って知ってる?」

毎回様々なジャンルに精通している人間をゲストに呼び、マツコに興味を持たせようという番組で、視聴率は平均15パーを誇っている。

「そこで、中華街のことを紹介するのよ。そこであなたの店の話もちゃっかり出してさ、守護者にそこに来るようメッセージを送るのよ」

こうして、リンユーは番組に出演することが決まった。


畳みたいのに畳めない

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