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中華街ウォーズ  作者: oga
5/11

暗殺者

約束の日まで、あと1時間を切っていた。

現在時刻は夜の11時。

サモとソウハは、気を練って動く所作をマスターしきれていなかった。

「これじゃ間に合わない……」

サモが弱音を吐く。

付きっ切りでリンユーとチェン爺が指導に当たる。

2人とも、手を離すところまではできるのだが、そこからの数センチがとてつもなく長い。

「くそおっ」

ソウハがイライラして集中を乱す。

「……ここまでじゃ」

とうとうチェン爺がタイムリミットを告げた。

すでに約束の日を迎えていた。

時刻は深夜0時。


「ここからはいつ敵が乗り込んできてもおかしくない。リンユーは2人を連れてここから離れるのじゃ」

「ど、どういうこと?」

みながチェン爺を見つめる。

「戦うのはわし一人じゃ。お前たちを危険な目には合わせられん」

その言葉を聞き、

「でも、それなら何で気功法なんて教えたの?」

リンユーが問いただした。

「あくまで何かあった時のためじゃ。リンユー、お前なら追っ手を気で攻撃して、相手の機動力を削ぐこともできる。2人は任せるぞ」

「一人じゃ危険よ」

するとチェン爺はニッと笑い、

「なあに、わしもこの年じゃ。分はわきまえておるよ」

と言った。


兄弟3人は、深夜店を出て、少し離れた寺に身をひそめることになった。

そしてチェン爺は一人どこかへ向かっていった。


一方、グエンは頭を抱えていた。

「どうしたらいい……」

グエンはリンの店を奪うにあたり、自分に踏ん切りをつけさせるため、ある暗殺集団を呼び寄せていた。

それは、小林グループお抱えの集団で、もめごとがあった際に呼び出されることが多い。

4人の矛使いと呼ばれる集団で、一人ひとりが矛の達人である。

グエンは会長に頭を下げ、今回その集団を動かしてほしいと頼んでいたのだ。

しかしリンユーが訪れ、考えが変わり、呼び寄せたことを後悔していた。


「呼ぶんじゃなかった……」

会長にしか動かせないその集団は、もはや自分の力で止めることはできなかった。

4人は酔狂なことでも知られている。

ヘタをうてば、皆殺しになるかもしれない。

「オーナー、彼らが到着しましたよ」

ウェイトレスが扉越しに声をかけた。

「……今行く」


店の中には、身長よりも30センチほど長い矛を持った者が、4人。

「で、いつ殺しに行くんだ?」

真ん中のリーダーらしき人物が、腹の底から響くような声でそう言った。

無精ひげを生やし、無造作に流した髪は歴戦の猛者を彷彿とさせた。

「……キャンセルはできないのか?」

グエンは言った。

「あんたにそんな権限はない。で、いつ殺しに行けばいい?」

何を言っても無駄な雰囲気だった。

黙っていると、4人は勝手に椅子に座り、

「明日の朝、隣の店に乗り込む。それまでここで休ませてもらうぞ」

と言った。

「安心しろ。仕事はきっちりやるさ」

そう言ってテーブルに足を乗せ、男は目をつぶった。

「兄弟には手をかけないで欲しい……」

グエンがそういうも、男はグゴゴと寝息を立て始めた。


そして、早朝。

街の中を歩く4人の集団。

その異様な雰囲気に、街の人間はみな道を開ける。

彼らを知る人間は、

「おい、絶対目を合わせるなよ!」

と小声で周りのものに伝える。

「ここか」

4人は「家庭菜店」と書かれた看板を読み、足を止めた。

一人の男が言った。

「和食とのコラボだってよ、邪道だな」

リーダーがそれに対し、

「弱者なりに活路を考えたんだろう。だが、結局は強者にひねりつぶされる」

と言った。

そして、店の中に踏み入れようとした時だった。

ゴゴゴゴ、と地響きがするのを感じた。

「ん?」


黄色いショベルカーが向かってくる。

「こんなとこで工事か?」

その車体が4人の前に止まる。

そして、ウイイインとアームが動いたかと思った次の瞬間、

「なっ!」

4人の内一人をアームがなぎ倒した。

左右に振れたアームに直撃し、吹き飛ばされ壁に激突する。

吹き飛ばされた男は頭を打ち付け、目を回した。

リーダーが言った。

「あいつがターゲットだ。やるぞ」


チェン爺は夜、中華街の近くの工事現場に向かい、ショベルカーをくすねてきていたのだ。

気を応用し、電子機器のリレーを作動させることで、車などのエンジンをかけることができる。

最近はキーではなく、キーについてるリモコンでエンジンをかけるタイプが多い。

ショベルカーもその手を使ってここまで持ってきた。


3人はショベルカーを囲んで、ジリジリと間合いを詰めた。

間合いなどお構いなしにショベルカーは一人に向かっていき、アームを振り回す。

ブオッ、と空を切る。

「こんなもの、当たるかよ!」

と言って、一人がショベルカーの席に乗り込もうとしたが、アームが動き回るため退却せざるをえない。

「こんなものを相手にするのは初めてだな」

リーダーがつぶやいた。

「こいつは骨が折れそうだ」


リンユー、サモ、ソウハはその光景を遠巻きに見ていた。

チェン爺が心配になったのである。

「すげえ!こんなのあり?」

ソウハが言った。

「勝てばいいのよ!」

リンユーがやっちゃえ!とこぶしを振り回す。

頑張れチェン爺!などと声が聞こえる。

リーダーが振り向いた。

「あいつらが例の兄弟か」




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