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中華街ウォーズ  作者: oga
4/11

気功習得

「水がめのイメージを作ったら、その中に水を注ぐ、そのイメージを働かせてみなさい」

チェン爺に言われた通り、3人はイメージを働かせる。

水がめに水を注ぎこむ。

「それが気じゃ。そこから相手に触る動作をしてみい」

そう言われ、3人は動こうとしたが、

「あれっ」

サモが叫んだ。

一瞬でも動こうとしたら、気がこぼれ、無くなってしまったためだ。

「動作には気を付けることじゃ。水がめを頭に乗せて移動した訓練を思い出し、慎重かつ、流麗に動いて見なさい。ほれ、リンユーを見てみい」

リンユーは、限りなく流麗で、指先にまで神経をいきわたらせた動きで、動作を終える。

「ふっふーん」

最初の動作で成功させてしまった。

「姉さん、すっげえ!」

ソウハが驚いた。

「リンユーは学校で女性らしく振舞うための授業も受けているからな。しなやかさ、流麗さは女性の美しさの一環じゃ。2人より習得が早いのは道理じゃな」

チェン爺がほっほ、と言いながら説明を終える。

「くそっ、俺たちもリンユーを見習って、女性らしく振舞うぞ」

サモが言うと、

「兄さん、流麗に、でしょ」

とソウハに正された。


5日後、リンユーは相手に触る、という所作を完全にマスターした。

他の2人はまだ少しでも動こうとしたら気が解けてしまう。

「2人とも、手を合わせてから気を練ってみなさい。そうすることで相手に触る動作の短縮ができる」

「なるほど!だってさソウハ」

「分かったよ!」

2人とも手を合わせてから気を練り、動く。

しかしうまくいかない。

「こりゃ、期日まで間に合うかの」


リンユーはこっそり抜け出し、あるところに向かっていた。

天下至高。

前回スパイに潜り込んだ隣の店だ。

閉店時刻は過ぎていたが、

コンコン、と扉をノックする。

「……閉店してますが、なにか?」

ウェイトレスらしき人物が顔を出して、覗き込む。

「あのお、オーナーに会いに来たんですが、リンの娘が来たって言ってもらえますぅ?」

ウェイトレスは店の奥に引っ込んでいき、

「変な娘が来ましたよー」

とオーナーに言った。


「……どうぞ」

あからさまに渋々、と言った様子だったが、リンユーは部屋に通された。

部屋の中では、この前襲って来たグエンが椅子に座ってショウコウ酒を飲んでいた。

(あのまっずい酒、よく飲めるわね)

グエンがくるり、と椅子を回してこちらに向き直った。

「で、なんのようでしゅか?」

ろれつが回っていない。

「あのお、戦う前に、お話ししたいなぁ、なんて、えへへ」

グエンは、

「いいでしゅよ」

と言った。

よーし、どっから話そうかな、とか思っていたが、急にキリっとした顔つきになって、リンユーは話し始めた。

「あなたの追っかけてる夢って、ブレブレですよね?」

「な、なんだと!」

急にそんなことを言われ、グエンは酔いが一気にふっとんだ。

「あなたは中華料理店で成功することが母さんの夢を追うこと、そう思ってるみたいですけど、あなたが勝手に成功したところで、母さんは一切満足しませーん」

「にゃにをう!」

「母さんは、あなたたち3人と一緒に店をやることに意味を見出していたの、おわかり?」

「にゃ、にゃんだとっ」

「あなたは今、完全に進路をそれて、全然違う方向を目指しちゃってますから。そんな夢、捨てちゃいなさい!」

リンユーの数々の暴言に、キレかけていたグエンだが、なぜか素直に聞いてしまう。

なぜならリンユーはリンの生き写しであったからだ。

なぜかののしられているのにうれしい。

そんな風に思っちゃっていた。

(も、もっとののしってください!)

「そんな迷走中のあなたに、もれなくもっといい解決策を用意してきたわ」

「なんでしゅか?」

グエンは酒を飲むと赤ちゃんみたいになるらしい。

そういうプレイも好きそうだ。

「アタシたちを見守ってほしい。昔のあなたと、今のアタシたちは似てると思う。チェン爺がいて、母さんはアタシ、ソウハが父さん、サモがあなた」

「サモが俺かよっ」

「それが母さんの夢を追うことにならない?」

確かにグエンは思っていた。

これでいいのだろうか。

小林グループに入り、一つの店のオーナーを任されるに至ったが、そんなことでリンは満足してくれるのか。

店に訪れた際も、これでリンちゃんの店を手に入れる口実ができたぜウッヘッヘ、と卑しい気持ちでやって来たが、そこでひどく動揺した。

リン!?

そして他の2人。

まるで過去の自分たちを見ているようだった。

その日は一気に気持ちをそがれてしまった。

今のこいつらを見守る……

それがリンの夢の続きなのだろうか……


「ダメだっ!そんな簡単に口車に乗るかよっ!だったら、お前たちは俺に気持ちの強さを見せつけて見ろっ!」

思わず怒鳴っていた。

リンユーの顔は見れなかった。

リンちゃんの悲しい顔は見たくなかったのだ。

「分からずやっ!ハゲっ!」

そう言ってリンユーは飛び出していった。

部屋からは呻き声が漏れていた。

グエンは泣いていた。

「リンちゃん、ごべんよおおおお」

それを陰でウェイトレスは聞いていた。

「オーナー……だっさ」


間違って一回消しちゃった てへ

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