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中華街ウォーズ  作者: oga
2/11

黒い影

店から出てきたリンユーは敗北感に打ちのめされていた。

「これじゃ勝てないわね……」

そんなリンユーをよそに、2人はお互い感想を述べあっていた。

「おいしかったね!僕はあと5つは餃子いけたよ」

とソウハ。

「また来ような!次で全メニュー制覇だ」

サモも満足気である。

しかし、

「あんたたち、危機感を持ちなさい!」

リンユーに一蹴され、気まずい雰囲気の中、3人は帰路に着いた。


夜になり、緊急会議が店の中で開かれた。

3人はテーブルに向かい合い、それぞれ意見を述べていく。

「私が思うに、隣と同じことをやっててもダメだと思うの」

リンユーがテーブルの上に腕を乗せ、2人を互い違いに見つめる。

食べ放題をやるには、人員も足りなければ、調理場の数も足りない。

「タッチパネルを導入するだけじゃダメ?」

ソウハが尋ねる。

「ダメ、てか客が入らないのにそこを充実させてどうするのよ」

「もう明日考えるか?」

サモの提案に、ソウハが乗りかける。

「それさんせ……」

と言いかけたが、リンユーににらまれたため、

「兄さん、まじめにやろう」

と答えた。


長い沈黙が続き、時刻は深夜である。

サモが腕を組んだまま眠りに落ちようとしていた時、リンユーが声を上げた。

「中華街のリピーターが毎回同じ店に行くと思う?」

辛うじて起きていたソウハが、目をこすりながら言う。

「これだけ店があったら、いろんなところに行きたいかも」

「でしょ?そして、どこの店も出すもの大体同じ。システムも似たようなところが多い」

リンユーが話を進める。

「もし中華街の中にイタリアンがあったら?きっとリピーターは興味を示すはず。なぜならみんな最初に行く店は有名店で、最高の味を知ってしまうから。勝負するなら味じゃなくて、奇抜性よ」

ソウハが半分眠りながらコクコクとうなずく。

「いきなりイタリアンは出せないけど、○○風みたいなのは工夫すれば出せるかもしれないわ。イタリアン風中華とか、和食風中華とか、どう思うサモ?」

「グゴゴ」

「サモ!」

ビクっとなり、椅子から落ちかける。

「ど、どうしたんだよ」

「だから、和食風中華とか、できるの?できないの?」

「和食風に?うーん、味噌とかで味付けするだけでいいなら」

味噌は日本の代表的な発酵食品である。

「それいいじゃない!ちょっと変わってるし、これならすぐ実践できるわ。サモ、早速明日チェン爺と一緒に味噌のレシピ考えなさい」

「ええー、急だなぁ」

あまり乗り気ではなかったサモだが、これでようやく布団で寝れると思い、自分の部屋に戻って行った。


翌日から、味噌でアレンジできそうなメニューを考えた。

普段は厨房にいる時以外は書斎にこもっているチェン爺を連れ出し、サモと2人で試行錯誤する。

リンユーとソウハの2人は、「中華街初!和食とのコラボ!」という看板を作った。

メニューも大体決まり、食材の買い出しに3人でスーパーに向かう。

客がどれだけ来るのかは全くの未知数だったが、期待を込めていつもより多めに食材を買った。

更に翌日。


「今日は何人来るかしら」

リンユーは落ち着かない様子で店の中を行ったり来たりする。

オープンは10時。

すでに看板を表に出し、サモ、ソウハは仕込みを始めている。

メニューは、味噌ダレで食べる餃子、味噌チャーハン、味噌チンジャオロースの3つである。


サモは手際よくピーマン、牛肉を切り、それを器に移し冷蔵庫に入れる。

更に、細かく切ったニンニク、ニラ、ひき肉を混ぜ、餃子の具を準備する。

ソウハは調味料を厨房脇のシルバーの器に補充していく。

その後、釜でチャーハン用のご飯を炊いていく。


瞬く間に時間は過ぎ、いよいよ10時となった。

中華街は相変わらずの人通りで、家庭菜店の新しい看板が目に止まる客もちらほらいた。

そして、12時。

10席あるテーブルは埋まり、店の中は思った以上の客でにぎわっていた。

リンユーは内心、よっしゃあ!と歓喜した。


「オーダー、味噌チャーハンと味噌ダレの餃子!」

リンユーが声を張り、また次のオーダーを取りに行く。

一度にこれだけのメニューを受けるのは久しぶりだったが、

「腕が鳴るな!」

とサモとチェン爺の2人でそれをさばいていく。

ソウハも食器の山をガチャガチャと洗う。

「はい、味噌チャーハンと餃子」

それを受け取り、テーブルに運ぶ。

「お待たせしました~」


ようやく客が落ち着き始めたのが2時過ぎであった。

「大当たりね!」

リンユーとサモ、ソウハの3人でハイタッチをした。

「明日も忙しいといいな」

サモが言う。

チェン爺も、

「毎日これが続けば、店はつぶれずに済むのう」

と喜んでいた。

その時、黒いチャンパオを着た男が店に入って来た。


リンユーが接客にあたる。

「いらしゃいませ~」

しかし、男は黙っている。

そして、

「私の店に妙な噂を流した者がここにいると聞いた」

と言った。

「リンユー、もしかして……」

サモが言おうとしたのは、先日の麻薬成分云々の件である。

「げっ、あれを聞かれてたの?」

男が前に進み出る。

「もしその話が本当なら、我々も黙ってはいられない」

その男の背後には、ガラの悪そうな手下がいた。








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