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第4章『空の玉座』(22)



 穏やかな金色の光が満ちた空間に、揺蕩っていた。


 長い間――


 思考は時折浮かび上がりかけ、何かに引かれるように再び沈み込む。

 誰かが呼んでいるようにも思えたが、すぐにその声は遠退いた。



 そう望んでいた。

 それでいいと思っていた。

 ここにいれば何も喪わない。

 何も見る必要はない。


 自分も、ひとも、守るべきものも、守れなかったものも――



 だったら、ここにいればいい。

 何もかも忘れていれば、何もこの手から零れ落ちることはない。


 この場所は安らぎ、満ち足りている。




 けれどどこかに光がある。


 今いる場所――穏やかで、温かい、自分を包む満ち足りたはずの黄金の光の中に、()()はまるで()()を照らし貫くように輝きを放っていた。




 ――どこに――




 その光を知っている。

 その光の名を。

 どこかで、いつだったか、その光へ手を伸ばした。

 掴めない光だった。



 ならば初めから手を伸ばさないほうがいいのだと、誰かが呟く。

 手を伸ばすから掴めない。



 それなのに光はますます輝きを増して行く。

 輝きが、暗闇に慣れた瞳を灼く。

 そこにある、と。



 身体の中で、心臓とは異なる鼓動の音が、一つ、静かに響いた。



 手を伸ばす。

 手を伸ばしても掴めなかった光。



 だが、それは、今掴まなくては喪われる光だ。




 ――駄目だ――




 失うのは。





 もう二度と。






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