呪われし大地
「それからどうなったの?」
俺は問いを投げ掛ける。
「最後まで国の人々は大国相手に戦った。圧倒的な人数差なのにも関わらずその国の秘術である空間制御魔法を使ってひけをとらぬ戦いをみせた。」
その顔は誇りを持った騎士みたく前を真摯に見つめていた。
ただその目だけは反するように悲しみにくれていた。
「空間制御魔法?」
「その名の通り空間を制御つまり作りかえることができる魔法のことだ。」
なんだそれっチートの域超えてるな!!俺にもそんな才能が・・・
俺が目を輝かせながらレイシャを見つめる。
「だが、それには代償が必要で発動者の魔力を全て奪うこと、周りの空気が発動にかかる爆風によって無くなるのだ。だから、酸欠と魔力不足により大抵のレイズの者は気絶する。」
「使えない・・・。」
何だその一回使ったら負け戦な魔法
しかもその原理でいうと
「もしかして発動者が気絶すると、魔法の発動も打ち消されます?」
「いや、発動者がやめない限りそのままだ。」
なぜか勝ち誇った顔をレイシャはする。
何がそんなに嬉しいんだが、
すると
「レイシャ様!!!!!!」
扉の外からそう呼ぶ声が響いた。
何だ?
俺は声のする方を振り向く。そこにはリール同様に獣耳を生やした男が立っていた。客観的にみれば美青年といえるその男は
俺の方を睨み付ける。俺、何かお前にしたか?見たとこ初対面なんだが。
「レイシャ様やはりこのようなクズ男、隣に置くには危険過ぎます。」
もう一度言う。俺お前に何かしたか?
「そんな奴に構うなら私を・・お殴り・・・・っ!!」
えっ?
突如として獣耳男の姿が消えた。
比喩ではなく本当に消えたのだ。
どこいった?
と思う前にドゴォーン何かが壊れる音が盛大に響く。
「なっ何が!!?」
辺りを見渡すと
壁には巨大な穴があいていた。
そしてそこには腰に差した剣を構えるレイシャの姿が
うん、想像がついたが敢えて考えないようにしよう。
ただ、一ついえるのは異世界でも女は怖いということだ。
「気にしないでください。いつものことですから。」
リールが目配せをする。
「さぁて、ロキお腹空いたであろう。私もクズと言う名前の虫を退治して少々疲れた。」
「えっと・・・壁・・・」
大穴が空いた壁は外からの風が流れこんできていた。
「あぁ、忘れるところだった。リール壁を直すのを頼む。」
そういうことじゃないんだが・・・って直す?
「はい。お任せ下さい。」
そういうと、リールは手を前にかざして
『時すでに過ぎ去りしもの一周戻りて生を宿せ!!』
そう呟くとまずリールの手のひらが淡い緑色に輝きだした。
それに続き、周囲に散らばった瓦礫や木材が浮かび上がり
まるで元の姿に戻ろうと意思をもったように繋がっていく。
あっという間に形を成していく。
「すごい・・・」
思わずそう言葉にだしていた。
リールは尻尾を揺らし顔を赤らめながら
「そう言ってもらえると嬉しいです。」
と恥ずかしそうに呟いた。
「リールは魔法が使える獣人ととても珍しいんだ。特に回復魔法が得意でな。よく私が色々なものを壊してしまうから、そのせいかもしれないがな。」
聞くところによると獣人は大抵は肉体派で特殊な武術を使うそうだ。そういえばレイシャは吸血種なんだよな他に何があるんだろう。
さっきの話もあの変態獣人男のせいで聞けなかったし。
「レイシャ、この世界には何種族いるの?」
「それを含め後で説明しよう。今は本当にお腹が減った。
虫・・・じゃなかったハーミッドが作ってくれているだろう。」
外をみるとさっきまで血を流し倒れていた男の姿が無くなり
おそらく、レイシャの言った通り家事をしに行ったのだろう。
食堂に行こうと思い部屋を出ると異常にその屋敷は広々としていた。
幾つもの部屋が並んでおり、おそらく20は部屋数はあるだろう。
どうやら俺がいるのは1階の部屋らしい。食堂に着く
夕食が長テーブルに並べられていた。どれもこれもとても美味しそうだ。
席につき改めてさっきと同じ質問をした。
「この世界には正確ではないが10の種族がいる。
その中にリールやハーミッドの種族である獣人。そして私の種族である吸血種。他にも屍人種・天使種・小人種・人魚種・精霊種・竜種・人種・そして闇の種族だ。」
「闇の種族?」
闇の種族とは
俺の今なっている種族。
そしてもう一つ伝説とされいる一切の情報が分からない種族
通称黒の種族・・・らしい。
それ2種族とは数えないのね。嫌われてるからかな?
あれか、得体の知れない種族はまとめとこうということか。
「その黒の種族は今どこに?」
「それは、お前の方がよく知っているだろう。消滅した大陸に新たに出来たのが・・・」
「ちょっと待って消滅ってどういうこと?」
消滅ってまさか!!?
「この事も知らなかったのか。
お前の種族は最後に残った子供を除いての全国民を犠牲にしての大魔法を放った。
そのせいで大陸全てのものが一瞬にして滅び『黒土』と呼ばれる呪われた大地となった。」
やっぱりそうか
まぁ、そうでないとそんな世界中に嫌われる種族にはならないか
その後その『黒土』に調査団が行ったが帰って来ず、興味を持った旅人が何千と行ったにも関わらず帰って来たのはたったの数人だった。
帰って来た者に話を聞こうにもまったく答えず
喋ったかと思えば
「あの種族は危険だ・・・。」
と言うだけ。
分かることは理性を狂わせる霧みたいなものが発生していること
それと高レベル魔獣がたくさんいるということ。
そして、黒の種族の存在だけ。
その帰って来た勇気ある者たちもある日、突如として行方不明となった。
「生き残った子供たちは?」
「転移魔方陣で他の大陸に行った。」
なるほど。だから俺はその生き残りという設定なわけか。
俺が考えながら料理に手を伸ばす。
口の中に入れると
「っ・・・」
俺はとっさに近くにあった水をがぶ飲みする。
どうしたというようにレイシャが首をかしげてこちらを見ている。
「辛い!」
口から炎がでるかと思った・・・
周りを見渡すとハーミッドがニヤニヤとこっちをみていた。
やっぱりお前の仕業かっ!!
同じようレイシャが食べる
「なるほどヤンムか。」
レイシャの話によるとヤンムはこの地域で一番辛い料理のことらしい
それを平気な顔で食べてるのが怖い。
「とにかく、黒土に行きたいならそれほどの実力をつけてからにしろ。」
つまり、手がかりなしと言うことか・・・。
どうすれば俺がそう思っていると
「あの・・・だな。」
レイシャが呟く。顔を見ると何かを迷っているようなそんな表情をしていた。
「悪い。今はまだ話せない私の心が決まるまで待っててもらえないだろうか。それとも、森の中にある家に帰るのか。」
そういえばレイシャには俺が異世界の住人ということを言っていない。今ここで帰されたら魔獣いる中での野宿確定という
命がけギリギリな自体になりかけない。
「待ちますよ。それで、もし良かったでいいんですがもうしばらくここに居てもいいですか。」
「何をっお嬢様にこれ以上迷惑をかけ・・・」
「もちろんだ。その代わり家事など色々手伝ってもらうからな。
リール部屋の準備をしてくれ。」
リールは笑顔で
「はい。」
と言って走って行った。足速いな
こうして、若干一名を除いて俺が家にいることを許してくれた。




