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冷血少女の春風正月に


だんだん街と言うか建物が見えてきました。

「お前…頼むから…安全、安全第一…安全」

失礼な。脱走して約一時間、私は極めて安全な運転をしています。ハンドルとブレーキの使い方も覚えました。

―キキーッ

田舎のようですが、街のようなものなので電話があるかもしれません。だからブレーキをかけたのですが、

「おぼがぼおまえぇ…」

大勢がつき過ぎました。エアバッグがついていて助かりました。

「こっそり出ましょう」

子供が運転している所を見られたら大変です。

   *

 やっと見つけました。約三十分は歩きまわり、やっと汚い交番を見つけました。どこもかしこも畑、畑、畑でうんざりです。

 「なんだい君達、ここの人じゃないね?」

 「はい、えっと、ここは…?」

 「ん?知らないで来たのかい?ここは静岡だよ。」

 なんと、私達はいつの間にかテストで必ず出る茶の生産地に来ていたようです。

 それにしても、このおまわりさん親切ですね。顔も親切な顔であります。

 「あ、ありがとうございますぅ。おまわりさんは方言じゃないですね?」

 ちょっと可愛く言ってみたら羽山に身震いされました。なぜ。

 「あはは、僕は東京出身なんだ。でも、この田舎の方が好きだよ。ほのぼのしててさ。」

 「そうなんですね。それで、お電話をお借りしたいのですが…」

 「うん?いいよいいよ」

 と見せてくれたのは黒電話。ああ、うちと同じ型ですね。うちはもっとぼろいですが。

 「じゃあ、お借りしましょう」

 ああ、羽山よ…貴方は敬語も使えたのですか。

 ―ジーコ…ジーコ…チーン

 「#%&$*+&$&%#&」

 ああ、羽山よ…貴方は英語も使えたのですか。

 「うわぁ、すごいね…」

 「はい…」

   *

 そこからは早かったです。十分で伝説のリムジンという黒い列車的なものが来て、そこからわらわらと黒服サングラスが十人ほど出て来て…ダンディーなおじさんもきましたね。

 「幸様あぁぁぁぁ」

 ああ、このお方は第一印象クラッシャーですね。鼻水たらして泣きながら抱きついてくるダンディーなおじさんなんで嫌です。

 「ああ、貴方が幸様に巻き込まれてしまった少女ですか。この度は誠にすみませんでした。」

 「ひっ」

 我ながら情けない声ですが美人な秘書さん、気配りを消していきなり話しかけないで下さい。

 「では行きましょう」 

 「?」

 「幸様」

 「ああ…」

 「どうぞ」

 リムジンに乗るチャンスなんてめったにありません!私は少しハイになっていました。

 「??」

 美人秘書さん、貴方が乗り込むのは当たり前ですがなぜドアを閉めようとするのですか。

 「ふー、セーフ」

 更に羽山、貴方もなぜおじさんをおいて滑り込みセーフでほっとしているのですか。

 そして運転手さんもSPのみなさんもいつものことだとばかりに平然として車を出そうとしているのはなぜですか?

 「あぁ、私をおいていかないでくれぇ…」

 「大丈夫です、あの人はこのくらいじゃ死にません」

 「いや、そういう問題…」

 「大丈夫だろ」

 「いいんですか?」

 「多分」

 おおい!

 「お前ん家、どこだ?」

 「はぁ?」

   *

 ああ、やはり…。

 あの後、私を優先的に届けてくれるというので好意に甘えさせて頂きましたが、ええ、そうですとも、アパートは半壊、救急車がピーポーピーポーと…。

 ああああ…

 「本当だったのか…」

 「あたりまえでしょう!?どうしてくれるんですか!?」

 「もちろんべんし」

 「ゆぎぃぃぃぃあいだがったよおおおおぉぉぉぉ!」

 もう少しで羽山からあの二字を釣り出せそうだったのに…!

 「なんですか」

 「さびじがっだよおおおおぉぉぉぉ!」

 「みっともないです。やめて下さいよお母さん」

 ええ、この美人が台無しを通り越し不細工にするなっている顔面べちょべちょお化けが私の母です。母は綺麗です。色素の薄い髪、色白でなめらかな肌、スタイル抜群の体。モデルと言っても通用しそうです。とても三十代には見えません。が、今は化け物にしか見えませんね。

 「一昨日の夜…ぐすっあのねぐすっなんかね…ぐすっ有希がないなって…ぐすっつぃいに彼氏ができたのかって…ぐすっでも一夜経っても戻んなぐっで…昨日の夜にいでもだって¥でもいらねなぐって…ぐずっ心配で…夜は五時間しか寝れなぐっで…」

 一夜戻らなくて彼氏だと思うのは母親として問題だと思います。そしてそこは普通夜も寝れないと思うのです。五時間は充分な睡眠です。というか一昨日って…私は丸一日眠りこけていたのですか。悔しいです。

 「いい母親じゃないか。それで少し、いいか?」

 「はい?」

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