表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/7

冷血少女の春風正月に

うんともすんとも言わなかったドアが開きました。

  嬉しくないです!犯人が来てしまったではないですか!

  息をつめてドアを見つめたら、現れたのは意外に小柄な男でした。

  …黒い目だし帽子に黒ずくめの服装。体系的に男でしょうが…。

  それにしても安っぽい映画に出てくる怪人のようですね。

  食べ物係のようです。トレーに乗っているのはご飯に味噌汁、サケと私から見るとそこまでひどくはないようです。

  安い怪人さんはそれを持って私達の前に置き、銀色のカギを取り出して私の手錠を外しました。

  「あ、待って下さい!」

  そのまま出て行こうとしたので呼びとめたら、なぜかビクッとされました。なぜだ。

  「ト、トイレに行かせてください!」

  勿論カギを奪うためですが、トイレに行きたいのも本当です。

  その男はしばらくためらいましたが、やがて頷きました。

       *

  汚いトイレででした。狭い個室に和式便所がひっそりとものすごいアンモニア臭を漂わせて存在していました。さて、今目隠しで戻されている最中ですがどうやってカギを奪いましょう。

  ―ガチャッ

  ドアを開ける音。

  しようがないですね。

  ―ドガッ

  こっそり目隠しを取ったら私に背を向けていたので体当たりをかます。  

  空に舞うカギ束。

  二人の手は同時に伸ばされましたが、私の方が一瞬早く取れたので、男の急所にキックを蹴り込み部屋に滑り込んでカギをかける

  「っておい!」

  「はやく!」

  先程私の手錠を解いたカギを汗ばむ手で掴みだし羽山の手錠を解く。

  「お前、どうするつもりだ!?」

  「一か八かです」

  「はっ!?」

  羽山の肩に乗り天井の窓へ手を伸ばす。

  一瞬抵抗があり焦りましたが、問題なく開いて胸をなでおろす。

  「もうちょっと…高く…」

  私を見上げた羽山の顔がなぜか赤くなり下を向きます。なぜ?あ、今日は久しぶりにスカートをはいたのですが…。この非常時に何をしているのでしょうこの人は。

  「うんどこどっこいしょ―」

  「何言ってんだお前…」

  失礼な。少し悶えましたがなんとか屋根に登ることができました。

  「うんぬぃ」

  「もうちょい…」

  「どりゃぁ!!」

  犯人達が手錠を残してくれて助かりました。手錠をつなげて下から羽山を引っ張り出す。普通なら逆でしょうが、この羽山という男なよなよなのである。なよなよなよなのである。私は普段から家事をしているので。背負い投げの要領で投げ出したため羽山がボロボロですが、そんな些細なことはどうでもいいのです。

 「いだいぃぃ…」

 「しるか。行きますよ」

 「お前…だんだん本性出してきてるな」

  失礼な。

  ―ドタバタバタドタバタバタ

 『!』

 「やばいです。犯人達がこちらに向かっています。足音からして三人はいます。」

 「な!は、はやく!」

  周りを見ると、この建物の他に黒い車が一台だけで、そのほかは荒野でした。

  ……私がさっき行ったトイレはどこでしょう。

  ―ガゴン

  えっ!妙な音がしたと思ったら何故かいきなり大体二百メートル先に怪人が…!

 「飛び降ります!」                                                      

 「えええっ!?」

 なよ男を引っ張って黒い車目掛けて飛び降りる。やはり恐いので目を閉じそうになりましたが、道連  れに羽山を連れて行けることでなぜか安心してしまいました。

―ガコン、バコン

 見事に着車。十点です。

 「早くしろ!」

 ああ、そうでした。車の屋根から滑り降り、ドアを開ける。ちなみに、ドアのカギは万能カギ束でなんとかなりました。私には全く何がなんだか分かりませんでしたが、羽山が羽山らしくまない素早さで鍵を選び出したのです。流石ボンボンです。車に滑り込み羽山が選び出したキーを差し込む。

「って俺達は運転できないだろうが!お前は馬鹿か!?俺もアホだああああぁぁ!!」

頭をかきむしる羽山。煩いですね。

 ああ、怪人が…。こうなったら、

 「アクセルはっ!?」

 「…右……」   

 「よしっ」

 「…へ?」

 思いっきりアクセルを踏み込む。

 「ぎゃああああぁぁぁぁうぎゃああぁぁぁぁ!?!?」

 「うるさいいいいいぃぃぃぃぃ!」

 アクセルを思いっきり踏んでしまったため凄いスピードですが、幸い唯一ポツンと存在する建物にぶつからずにスタートできて、そして何もない荒野を走り出すことができました。

 「大丈夫です!六歳の時滅茶苦茶運転ゲームに嵌ってましたから!」

 「知るかそんなもんんんんぎゃあああぁぁぁぁ!!」

 前にあった枯れ木を跳ね飛ばしただけですよ。 

   *

ちょっとありえませんけど、所詮はこんなものです

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ