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冷血少女の春風正月に

 私にとってお正月という行事はクリスマスとかバレンタインだとかと同じように、他人が楽しむ姿を見せつけられるだけの忌々しいものですが、それでも一つだけ、良いことがあります。お年玉がもらえることです。子供っぽいですが、私は子供なのだからいいのです。お年玉と言ってもお母さんの一人分ですが、私だけの金というのは我が家ではなかなかないのです。さて、そろそろ疑問でしょうが、私の名前は小川有希。桜木小学校という平凡でありふれた、おっと口が滑った。平和なところに通うごく普通な六年生です。趣味は金集め、好きなものは金、嫌いなものはボンボン坊ちゃん。将来の夢は金持ちを捕まえること。父が五年前借金を千万残してとんずらしたためうちは貧乏なんです。母は大雑把でボーつとしているので私が母が稼いだ金を管理しているのです。母の働き先は知りませんけど、母は美人なので大体の見当はついています。というより私は先程から何をしているのでしょうか。とにかく早く金子さんを銀行おばさんに預けて利子さんを生んでもらいましょう。

          *

 さて、銀行に着いたのはいいですが、これはどういうことでしょう。

 今、私の前には大きな財布様がいらっしゃいます。

 今、私の前には福澤様のお顔が何人も覗いている財布様がいらっしゃいます。

 そして、誰も見ていません。何故か今は銀行はがらんとしていて数人しか客がいなのです。

 もう一度いいます。誰も見ていません。

 こっそりねこばば、おっと口が勝手に動いた。そんなことするわけないじゃないですか。

 こういうことは追い詰められている時でないとやりません。そんなときはやるのかというツッコミはありませんよね?かなり中身のある財布ですので、落とし主は戻ってくるかもしれません。

 とりあえずパラパラいる人に聞いてみましょう。そう決心して、財布に手を伸ばしたとき、

 「ははっ」

 誰かの笑い声が響きました。まだ声変わりしていない男の子ですが、パラパラといた客の中に男の子はいなかったはずです。そう訝しみ、顔を上げると、

 「お前、そんなにその財布が欲しいのか?」

 いきなり失礼なことを聞かれました。その男の子は見るからに高級そうな服を着ていて、背は私と同じくらいでしょうか、顔は後数年したら女子蟻に群がられる砂糖になりそうな整った顔立ちです。

 「おい」

 もしかたしら将来捕まえる金持ち用に神様が送ってくれたのかもしれません。金持ちそうなのは一目見たら分かります。しかし、この男の初対面の女の子に対する態度などを見ると絶対将来ろくなものにはならないでしょう。女の子を騙しまくった挙句騙されて全財産失くしそうです。やはりやめておきましょう。この男のことはボンボン下種ナルシスト坊ちゃんと呼びましょう。自分のすべてに自信を持っていそうですし。

 「おい!」

 いけません、ボンボンを忘れていました。

 「なんですか、ボンボンちゃん」

 しまった。口が滑りました。

 「なっ!お、おまえっオレに」

 ―ガシャーン、バリバリ

 「え?」

 ボンボン君がボンボンという種族特有の言葉をいいかけたら黒い車が…

 

うそ

 

声が出せなくなり、私はそのまま崩れ落ちてしまった。


 ああ、まだ金を銀行に預けていないのに…


 そんな事を思い私の意識はブラックアウトしました。気を失う直前、あの失礼な男の子が私と同じように崩れ落ちるのが見えました。


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