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6、喧嘩売っちゃいました

 先程までと違い現実へと戻って来たことに気付いた彩は、無意識に茜の無事を確認してホッとしていた。

 取り乱して泣いてしまうなんて恥ずかしい。

 それでも、この世界を守る理由はできた。

 あの短い時間で、クロスロードの存在が大切なものに変わっていたから。

「お姉ちゃん、大丈夫?」

「ええ、平気よ! 心配掛けてごめんね」

 茜の頭を撫でてあげると、茜は懐かしそうな嬉しそうな表情で笑った。

 彩は決意し直した。

 何があってもこの笑顔を守る決意を。

 そんなこと望まれてないことなんてわかってる。

 それでも、あの日守れなかったものを今度こそ守りたい。

「お姉ちゃん、魔術師何だって!」

「魔法使いじゃないの?」

 不思議そうに小首を傾げた彩に、茜はえへんと威張って答えた。

「一般的には魔法使いって呼ばれるんだけど、職業だと魔術師になるんだよ」

「で、誰に聞いたの?」

「セシリアさん!!」

「他人から聞いたんじゃない」

 呆れたような溜め息を吐いた彩に、茜は乗せられたことが恥ずかしかったのか、消え入りそうに小さくなった。

 彩は茜の真っ直ぐさに頭が痛くなってくる。

 知らないことは恥ではないのだ。

 知らないことこそが恥なのである。

 今までの人生で色々経験した彩が学んだのは、そういった生き抜くために必要なことだった。

「お姉ちゃん勇者じゃなかったね……」

「そうだねぇ(私はそれ以上に厄介な職業だよ)」

 言えないことが苦しくて息が詰まりそうになる。

 それでも、公に大変な職業についてしまった妹にこれ以上心配ばかり掛けるのは躊躇われたのだ。

 それが罪悪感から来るものだとわかっていてもーー。

「それでは、国王様に謁見しにご案内致します」

「セシリアさん」

「すみません、セシリアさん」

 姉妹二人の会話に入って来たセシリアに、茜は置いてきてしまったことを、彩は存在自体を忘れ去っていたことを謝った。

 訳の分からない儀式を受けさせられた後なのだ。

 不安がっていても仕方ないだろうとセシリアは思っていた。

 実際は二人ともあまり不安だとは思っていなかった。

 もしこれがどちらか一人だけだったら確かに不安だったし、もう片方が心配で仕方なかっただろう。

 けれど、二人は一緒に召還された。

 そして、向こうに彼女らを心配してくれる相手はいないのだ。

「王様はどちらにいらっしゃるのですか?」

 彩が問い掛けると、セシリアは案内すると立ち上がった。

 座り込んでいた彩はいつの間にか黒いローブを羽織っていたのだ。

 茜の時に見たが、まさか自分まで変わるとはびっくりだ。

「玉座の間にいらっしゃいます。お越し頂けますか?」

「王様から来ないんですか」

 射抜くようにセシリアに向かってそう告げた彩に、周りがざわめき出す。

「不敬だぞ!」

「お前如きが王に謁見できるだけでも光栄だと思え!」

「無礼者が!」

 そこかしこから上がってきた彩を非難する声に、茜が口を開こうとした瞬間彩が遮った。

「無礼はどっちだ、愚か者共。異世界から人を誘拐しといて誰一人罪悪感を抱かないのか? そこの黙っていた人たちを少しは見習え。私は常識の話をしているんだ。普通に考えれば勝手に呼び出した側が礼を持つべきだろう。それなのにさっきから自分の威厳ばかり。恥知らずばかりなのかこの国は」

「そ、そんなの詭弁だ」

「そうだ。一国の王なのだぞ」

 彩の痛烈な批判に、役人たちは必死に言い返せる部分を探して足掻いた。

 その姿が彩には滑稽にしか見えず嘲笑する。

 ここで不穏分子は大体把握しときたかったのだ。

「一国の王ならあなたたちの世界では人を浚うのか? 随分立派な王様だな」

「許せん、この小娘が」

 一触即発な空気が漂った瞬間、ある人物が動いた。

「お止めなさい! みっともない。非は此方にあるのですよ。頭を冷やしなさい馬鹿者」

「セシリア様」

 セシリアが一喝した瞬間、辺りが静まり返る。

 その現状の理解度と彩たち異世界人に対する対応に、セシリアは彩から高評価を受けた。

「お姉ちゃんも言い過ぎ。ですが、私も同意見です。頼むのなら自分から来るべきだと私は思います。最低限の礼儀もない世界はちょっと守る気になれないです」

 茜の真摯な想いを聞いて、役人たちはうなだれた。






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