3、なっちゃいました勇者様
☆ ☆ ☆
気が付いたら茜はよくわからない場所にいた。
白く輝く光が辺りに広がっていて、周りには何もない。
『娘よ。そなたは力を求めるか?』
「誰!?」
警戒して辺りを見回すが誰もいない。
すると、声が優しく声をかけてきた。
『案ずるな。私はこの世界で神と呼ばれる者』
「神様? ねぇ、なんで他の世界の人に迷惑掛けるの? あなたが魔王を倒せばいいじゃない!」
茜は疑問を叫んだ。
気になっていたのだから仕方ない。
いつも守ってくれる姉も今はいないから自分がしっかりしなければ。
『巻き込んでしまいすまない。だが、この世界の人間にはどうしようもないのだ』
「どうして! ならせめてお姉ちゃんを帰してあげて」
堰を切ったように言葉が後から後から零れ落ちてくる。
茜には、ただ訴えることしかできない。
『それはもっと無理だ。あの方は多分“ ”だから』
「どういうこと。なんて言ったの」
茜は神と名乗るものに何とか答えを引き出そうと問い掛けた。
だが、神はそれには答えず、覚醒の儀式に移る。
『そなたには勇者の光の力を授けよう。そなたらに幸が多からんことを』
「待って! 質問に答えて!」
再度の呼びかけも虚しく、神は謎だけを沢山残して光の中へと消えていってしまった。
☆ ☆ ☆
茜がそんなやり取りをしていたことなど露知らず、彩たちは茜を中心に広がる幻想的な光景を見つめていた。
茜が光に包まれたと思ったら、次の瞬間茜は綺麗な白銀の鎧と、明らかに勇者が持つ聖剣だろうと言う剣が台座に突き刺さっていた。
「勇者様の再来だ!」
後ろから着いてきていた兵士やら魔術師やらが茜の姿に、ざわざわと騒ぐ姿にうんざりしながら、彩はセシリアに問い掛けた。
「勇者は珍しい職種なんですか?」
「ええ。こちらの世界では一等級職業です。世界に一人だけしかなれません」
「一等級? 一番偉い職業ってこと?」
よくわからなくて疑問を口にすると、セシリアは詳しい内容を避けて質問に答えてくれた。
「いいえ。この世界では確かに一等級職業が最高だと言われていますが、別格がいるのです」
「別格?」
なんとなく面倒事の予感がしたが、取り敢えず詳しく聞いてみる。
「特許職業の神子です。神子は祈ることが本業ですが、祈ることにより神から強大な力を与えられます」
「ふーん。あの子じゃなかったら誰がなるのかしら」
あれ? この台詞って何かのフラグじゃなかったかしら。
嫌な予感がしてあの台座の本に触れたくない。
その時、ずっと瞳を閉じて立ち尽くしてた茜がゆっくりと目を開いた。
「茜!? 大丈夫?」
「なに、これ……」
駆け寄った彩が茜の横に立つと、茜は自分の目の前に突き刺さった剣をじっと見詰める。
そしてぽつりと呟いた。
「聖剣“シグルド”。来て」
茜が呟いた瞬間、シグルドと呼ばれた聖剣が茜の体に吸い込まれて消えた。
それに呆然と突っ立っている彩に茜は自分の姿を見て照れ臭そうに笑っている。
「凄いね。私本物の勇者みたい」
「みたいじゃなくて勇者なのよ」
頭が痛いと言うように彩は眉間に指を押し付けた。
茜はそんな彩の様子も気にせずに、鎧をしげしげと見つめていた。
茜の今の姿は軽く、本人の体型にあったプレートアーマを制服の上に着用していた。
「茜、聖剣はどうしたの?」
「ん? 仕舞っちゃったけど」
「どうやって出すのよ……」
意味が繋がってないことに、彩は頭痛がしてきた。
その姿に漸く質問の意図を察した茜は、短い呪を口にした。
「来たれ、聖剣“シグルド”」
突風が吹いたかと思うと、茜の手には聖剣が握られていた。
「ほら、お姉ちゃんも早く!」
「いや、私は……」
拒否しようとした瞬間に、彩は茜に押されて本の上に手を置いていた。
辺りに温かい風が吹いた。
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