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A legendary adventurer  作者: tricolour-hear
プロローグ
1/7

episode:0

主人公最強ものですので、抵抗がある方は遠慮してください。

また、初めての投稿作品なので乱筆にて失礼します。

 視界が霞んでいく。


 体が粉砕されるかのような衝撃、同時に走る激痛。

 さっきまであったそれは、今では幻のように何も感じない。


 しかし、体の自由が効かないことから、それらが現実のものだったことがわかる。

 指一本すらも動かすことができない。


 俺を轢いたであろう中年の男性が、俺を蒼白な顔で見下ろしている。


 心配するなよ、おっさん。俺は平気だよ。

 虚勢を張ってそう告げようとするも、言葉が俺の耳に達することはない。

 俺の口は動いたのだろうか? それとも、言葉を発することができなかったのか?


 その男性は、慌てたように携帯を取り出して電話している。救急車を呼んでいるのだろう。

 まさか、車に轢かれるとは…情けないものだ。


 俺は、だんだんと重くなっていく瞼が閉じるのを必死で耐えて、空を見上げた。

 今にも雨が降りそうな、どんよりした雲が広がっている。


 ふっ、最後くらい晴れてろよ。


 俺は全身を包もうとする「死」に身を任せた。




 俺の意識は、肉体という器を離れて遥かなる闇へと放り出された。


 これが死というやつなの?

 しかし、俺に自我があるのはどういうことだろうか?


 完全な無に至るまでの、わずかな時間が存在するとういうことか?

 それとも、まだ俺は生きている?


 分からないことを考えてもしょうがないか…。


 俺はこの何もない空間で精神を保つためなのか、今までのことを思い返していた。




 小学校に入るまでは幸せだった。覚えていないことも多いけれど、いつも優しい母と一緒に笑っていた記憶がある。その時はまだ父も笑っていたような気がする。


 変わったのは、小学校に入学してからだ。もともと病弱だった母が亡くなり、全てが一変した。


 父は非常に厳しくなり、何か俺が悪さをしたり、学校の成績が悪いと暴力を振るうようになった。そして、毎日のように「強く生きろ」と俺に言った。

 なぜ、強く生きなければならないの理解できないまま、俺は父の機嫌を取るためにひたすら努力をした。


 俺は父にどれだけ暴力を振るわれようと、父を嫌いにはならなかった。

 なぜなら、父と俺は共に母を愛していたからだ。俺と父のその歪んだ関係は、俺にとっても父にとっても、必要な生きる目的だった。


 父の「強く生きろ」という言葉、そして暴力は確かに俺を強くした。母の死を悲しむ暇もないほど俺は努力をした。そしてそれは、俺が高校に入学した直後に終わった。


 今度は父の死であった。父は長い間、重い病を患っていたらしい。

 父の「強く生きろ」という言葉には「俺が一人でも生きていける力をつけろ」という意味があったのかもしれない。それも確認しようがない、父は遺書を残さなかった。


 そして俺は一人になった。

 今までひたすら勉強ばかりしていたため、小、中学校では親しい友人は作れず、父の残した使いきれないほどの金だけが、俺のもとにあった。


 父を失ったことにより、俺は努力をすることをやめた。


 何かを求めても、それは気まぐれに去っていく。俺がどれだけの努力をしようと。


 人生の終わりを感じていた俺だが、いいこともあった。

 高校の同級生は最初のころはなじめなかったが、段々と話すようになり、ようやく友人と言うものができ始めた。

 友人ができることによって、俺は変わったと思う。忘れていた笑顔というものを取り戻すことが出来た。友達という大切なものを作ることが出来た。


 やっと人並みに、生きることに幸せを感じることが、出来るようになっていた時だったのに。


 

 そして、俺は今この闇にいる。


 結局、俺は生きている間に何かを得たのだろうか?

 大事な人を失い、今度は守れるようにと「強く」なろうとしても、また失い。

 大事な人を作れたと思えば、今度は自分自身を守ることが出来ずにいる。



 結局わからないままだ。

 何もわからず、何も得ず、何も残さず俺は消えていくのか。


「生きたい」


 俺は、この当たり前のような感情を声にした。その声は、精神のみの存在である俺にも温かみを与えてくれた。


「生きてーーーー!!!!」


 俺は叫んだ。自分という存在を声として、全身全霊で。

 すると、闇の空間に一筋の光がさした。その光は段々と強く大きくなる。


 俺は、その光に飲み込まれるようにして消えた。






 …はずだった。


「私のいとしい赤ちゃん。名前は…そう、レインね」


 目の前には、銀髪の綺麗な女の人がいた。




(10/10)少し修正しました。

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