つぎ……は……あ、なた……?
七不思議壱番目‐美術室の首吊りヴィーナス
ひゅるるるる――
風が外を駆け回る音で目が覚める。
あなたは、暗い美術室で絵を描いている。
体は金縛りにあったように動かないのに、手だけが勝手に動いていた。
気づけば、目の前には一枚の絵が完成していた。
それは、真っ白なヴィーナス像のデッサンだった。
その時、ぱらぱらと白い石膏の欠片が落ちてきた。
見上げると――
白い人形のようなものが吊るされている。
よく見ると、それはヴィーナス像だった。
あなたが描いた絵とまったく同じ――。
血の気のない顔が、ぎこちなくこちらを向く。
血のように真っ赤な唇が、わずかに動いた。
「つぎ……は……あ、なた……?」
解説
絵が大好きだった彼女は、小学生のころから、ずっと美術室で絵を描いていたという。
放課後になると、いつも一人で――。
高校生になった彼女は、両親に美大へ進学したいと打ち明けた。
しかし、猛烈な反対に遭い、画家になりたいという夢を断たれてしまう。
その後、彼女は医学の道へ進んだが、それでも一人で絵を描き続けていた。
だが、大学生になって三年が経ったころ、彼女の体に末期の膵臓がんが見つかる。
彼女は病室でも絵を描き続けていた。
しかし、それを見つけた母親は、絵を侮辱し、破り捨てたという。
両親に否定され、絵も描けない人生を悲観した彼女は、病院を抜け出した。
そして、自由に絵を描くことのできた唯一の場所――美術室で、首を吊って亡くなった。
美術室で一人きりで絵を描く時は気をつけてください。
ヴィーナスは、一人で絵を描く生徒を、自分が描いた絵の世界へ引きずり込み、一生モデルとして描き続けるそうです。
ヴィーナスは、いつも“次のモデル”を探しています。
――生きている者の手も、目も、すべてを次の作品へ変えるために。
読了ありがとうございます。
好評でしたら弐番目以降も連載します。
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