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はははうちうじん  作者: 葉山麻代


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1/5

はははうちうじん

 うちの母は、たぶん変わっている部類なのだと思う。

 本人曰く、「早く時代が私に追い付けば良いのに」らしい。


 母が気に入ったものは、大体廃盤になる。

「あー、○○社製のシャンプー、○○の香りだけ廃盤になったー!」

 今日も嘆いていた。



 今日たまたま行ったスーパーで、身障者用駐車スペースに停めている、年中ハロウィンみたいなセンスの車から、ファッションもハロウィンな感じの人が出てきた。今は春先だ。


 足が不自由な人なら、見てすぐわかるかもしれないけれど、見てもわからない病気の人もいるから、なんとも言いようがない。


 その時、ふと、幼い頃に母に言われたことを思いだした。


「どうしてここに停めないの? お店近いよ?」

「この場所はね、足や体の不自由な人が買い物しやすいように、空けてある専用スペースなのよ」

「そうなんだ。ここに停める人は、早く良くなると良いね」

「そうね」


 そんな会話をしていると、車高短の改造マフラー車がそこへ停めた。ブァオン ブァオンと、マフラー音が異様に五月蝿(うるさ)い。

 降りてきた人は、咥え煙草の、見た目に健康そうな若者だった。


「ママ、あそこに停めた人はどこが不自由な(わるい)の?」

「んー、頭と、モラルと、性格かしら」

「そんなにいっぱい不自由(わるい)なんて、かわいそうだね。早く良くなると良いね」

「うふふ、そうね」


 ちょー!当時の母、皮肉がわからない純粋な子供に何教えてんの!?



 そういえばその当時、若い男性がおにいさんで、若い女性がおねえさんで、それより年上が、男性はおじさんで、女性の呼称を教えてくれなかった。


「すべての女性は『おねえさん』って呼んでおけば良いのよ」


 母が言うのだから、そうなのかと、そう呼んでいたが、試食販売の販売員の女性に「おねえさん、ママがどれを売ってるのって聞いてた!」と、美味しかった試食のそれを買って貰おうと商品を聞いてみたら、売り出しの商品を渡された他に、おまけをものすごくたくさんくれた。

 母に渡すと、さすがにおまけの多さに驚いて、販売員さんのところまで話を聞きに来た。


「あら、このお坊っちゃんのお母様かい? 」

「何かありましたか?」

「おねえさん、だなんて、初めて言われたよ!」

「女性の呼び方は『おねえさん』しかないと教えているもので」

「素晴らしい教育してるね! みんなそうあるべきだよ!」


 当時の、ばあばくらいの年齢(アラフィフ)の販売員さんだった。

 結局、母は教えてくれず、幼稚園に入って聞くまで「おばさん」と言う呼称を知らなかった。



完全自由服の高校に行っていた頃、ここは異世界か?という程、色々な髪色の生徒が居た。

 茶髪なんて全く目立たない。金髪、銀髪、まだら、赤、ピンク、緑、紫、黄色と、リアルアニメ髪、髪色の見本市のような状態だ。

 生まれつきの少し茶髪を気にしていたが、ここでは黒髪の扱いだ。


「なあ、髪染めないの? 就職したら無理だから今のうちだぜ!」

「成る程、何色似合いそう?」

「青って居ないから、青は?」

「青か。考えてみるよ」


 友人とそんな会話をして家に帰った。


「髪、染めようと思うんだけど」

「へぇ」


 あれ?反対しないんだな。


「何色に?」

「青なんてどうかな?」

「何色に染めても良いけど、青は、しっかりブリーチしないと青く見えないよ」

「そうなの?」

「若干茶髪と言っても、適当な抜け具合に青を染めると、発色が緑っぽくなるよ」

「何でそんなこと知ってるの?」

「若い頃に、ロングのソバージュヘアを青いヘアマニキュアで染めたら、あだ名が若布(ワカメ)ちゃんになりました」

「うわ・・・」


 生まれながらの茶髪ヘアは、母譲りなのか?

 母の髪も、染めずに茶色い。(母の方がより茶色い)


「ところで、何で反対しないの?」

「反対してほしいの?」

「いや、そういう訳じゃないけど」

「なら、正論ぶちかましてあげよう。青を染められるほどのブリーチは、毛根にダメージが大きいから、あまり繰り返すと、将来」


 そこまで言って、母は目線を泳がせた。

 目線を追った先には、父の頭皮が。


 なんという説得力!


「それでも反対はしないんだ」

「自己責任でしょう」

「反対する事柄は無いの?」

「犯罪と入れ墨は反対するよ」

「だからピアスも何も言わなかったのか」

「まあ、驚いたけどね」


 ピアスについては、母よりも父の方が驚いたらしい。


「ピアスするなとは言わないけど、いきなりだから驚いたよ」

「そんなに驚く?」

「なら、学校から帰ってきたら、父さんがピアスしていたら驚かないか?」

「とりあえず、正気を疑う」

「まあ、開けないけど、それと同じくらい驚いたよ」


 そして、ブリーチせず、自宅で青く染めてみたが、髪色が黒く見えるようになっただけだった。

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