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25年周期の都市伝説  作者: けろよん


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第9話 破られた約束

 杉本市議の言葉が、彩花の耳に重く響いた。


「すべてはもう終わっている」


 そう告げた彼の冷徹な眼差しが、二人の前に立ちはだかっていた。翔太は背筋を伸ばし、彩花もその言葉に鋭く反応した。


「杉本市議、どういうことですか?」


 翔太が声を荒げた。

 杉本は静かに一歩前に出た。その表情に一切の躊躇は見られなかった。


「君たちはもう、この町の秘密に足を踏み入れてしまった。だが、それがどれだけ危険なことか、君たちはまだ分かっていない」


 彩花は彼の言葉を無視して、手に持っていたお父さんの手帳をぎゅっと握りしめた。


「私たちは真実を知りたいだけです。町がどうして25年前に変わったのか、それを知ることで、今の町を守れるかもしれない」

「守れる? この町を?」


 杉本は嘲笑するように笑った。


「守れるのは、君たち自身の命だけだ。君のお父さんが選んだ道を知ることで、君たちも同じように命を賭けることになる」


 翔太は怒りに震えながら言った。


「それは違う。彩花のお父さんが守ろうとしたのは、この町の未来だ! それを守るために、僕たちが何もしないなんてことは許されない!」

「そうかもしれないが、君たちが手を出してはいけないものに手を出した時点で、もう戻れない」


 杉本はその目を鋭く光らせた。


「君たちが掴んだその手帳も、お前の父親が一生隠したかったものだ。それを引き継ぐことで、君たちは否応なくその運命を背負うことになる」


 彩花は一歩前に出て、杉本に対して冷静に言った。


「それでも私は知りたい。お父さんが残したものが何だったのか、そして、それを暴いたら町がどうなるのか、きちんと理解したい」

「君の父親は、結局、町を守るために自分を犠牲にした」


 杉本は無情に続けた。


「そして、そうすることで君たちの手を汚さないようにしたんだ。君たちが今この道を歩むことは、君のお父さんの意志を裏切ることだ」


 翔太が鋭く反論する前に、杉本が再び口を開いた。


「だが、君たちには選択肢がある。もし、今すぐに調査を止め、その手帳を渡すのなら、君たちには危害は加えない。これ以上、この町の歴史に関わらない方がいい」


 その言葉を聞いた瞬間、彩花の胸に疑念と迷いが湧き上がった。父の残した手帳には、きっと町の秘密とともに何か大きな代償を払う事が含まれているのだろう。杉本の言う通り、それを暴いてしまうことで自分達がどうなってしまうのか、想像もつかない。

 戸惑う彩花を庇うように翔太が前に出た。


「調査を止めることは絶対に無理だ。僕たちは、たとえそれがどんなに危険でも、知るべきことを知りたい。町を守るために、それが必要なんだ!」


 杉本は、しばらく二人をじっと見つめていたが、やがて一歩後ろに下がり、手を振った。


「それなら、君たちは自分で選択した結果を見届けることになるだろう」


 そして、彼は深く息を吐くと、冷たい声で続けた。


「だが、覚えておくことだ。君たちが選ぶ道には、必ず代償が伴う」


 そのまま杉本は暗闇の中へと消え、彼の姿は次第に見えなくなった。


「どうする?」


 翔太が息をついて言った。


「もう引き返すことはできない」


 彩花は低くつぶやいた。


「お父さんが残したものを、私は知りたい」


 翔太はその言葉に頷き、二人は再び手帳を手に、倉庫の中の資料を調べ始めた。杉本が警告した通り、手に入れた情報がどれほどの重荷になるか、二人はまだよく理解していなかった。しかし、ここまで来た以上、引き返すことはできなかった。


「25年周期の奇跡、私たちにどんな結果をもたらすのか。見守っていて、お父さん……」




 その日の夜、彩花は家に帰ると、再び父のことを考えていた。杉本の言葉が頭を離れなかった。彼が言うように、父が選んだ道には、確かに命を賭ける覚悟が必要だった。それを今、彼女が引き継ぐことで、何かが変わるのだろうか? それとも、この町にとっての新たな「奇跡」へと繋がるのだろうか?


「あるいは破滅か……」


 翌日、二人は再び資料を追い詰めていった。手帳の中には、町の重要な土地に関する記録がいくつも残されており、どうやらそれらの土地は、町の経済を動かす「見えざる力」に関連していたことが分かってきた。そして、さらに調べるうちに、ある人物の名前が浮かび上がった。


「……村上」


 翔太が突然声を上げた。


「この名前、見覚えがある。杉本市議とも関係が深い人物だ」


 彩花は驚いた。


「村上……? 私も聞いたことがあるわ。よく思い出せないけど……」


 翔太はすぐに調べ始めた。


「彼は、この町で長年裏の顔を持っていたと言われている。町の不正取引に深く関わっているんだ」


 その時、彩花の頭に、急に冷たい感覚が走った。村上の名前が、お父さんが何かを隠すために使った「取引」の相手なのではないか、という予感がした。


「村上が、この町の暗黒面に関与しているなら、父が守ろうとしていた『秘密』とは、まさに彼の存在に繋がるものだ」


 彩花は決意を固めた。


「翔太、私たちは村上を探さなければならない」


 その時、遠くで物音が聞こえた。二人が振り向くと、暗闇の中から、またもや予想もしない人物が現れた。


「その必要はない。君たちの行動は何もかもが遅すぎたのだ」


 その声に振り返ると、目の前に現れたのは村上だった。

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