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25年周期の都市伝説  作者: けろよん


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第5話 真実を掴む者

 彩花は父親の手帳を手にしながら、深い思索にふけっていた。手帳には父が遺した言葉とともに、数々の暗号めいたメモが散りばめられていた。それらは、彼の死後25年の間に解かれるべき秘密のかけらだった。


「君が守るべきものは、町の未来だ。どんな犠牲を払ってでも、必ず守り抜け」


 それは誰が誰に当てた言葉なのだろうか。父の覚悟の現れなのかもしれないその言葉が娘である彩花の耳にも響く。

 父が選んだ道、それは単に町を守ることだけに留まらない。彼は何か大きな「真実」に気づき、それを隠さざるを得なかった。

 もしその真実が公になると、町の人々は恐怖と混乱に包まれ、町は崩壊するだろう。それを避けるために、彼は犠牲になったのだ。


 だが、問題はその「真実」が何であるかだ。父が隠そうとした秘密、その核心に迫らなければならない。


「彩花、何か見つけたか?」


 翔太の声が、静かな部屋に響いた。

 彼は、彩花が父の手帳に没頭している間に、町の他の資料を調べてきたようだ。その手には、一冊の古いファイルが握られていた。


「翔太、もう少しだけこの手帳を見て」


 彩花は無意識に手帳を握りしめながら言った。


「代わりに私に今調べている資料、少し見せてくれる?」


 翔太は一瞬驚いた様子を見せたが、すぐにファイルを開いて彩花に手渡した。


「これ、25年前の町の最終議会記録だよ。再開発計画が本当に中止された理由について、かなり詳しく記録されている。ただし、どこか不自然なんだ」


 彩花はそのファイルを開き、ページをめくった。そこには、市議会での激しい議論の様子や、市民の声が記録されていた。だが、途中で議事録に不可解な点がいくつかあった。それは、途中から記録が不明瞭になり、ある部分が意図的に削除されたかのように空白になっている箇所が目立った。


「これは……おかしい。削除された記録がある」


 彩花は眉をひそめた。

 翔太は少し考え込みながら答えた。


「うん。誰かが意図的に、議事録を改竄した可能性がある」

「それなら、やっぱりこの町の再開発計画には、誰かが隠している重大な理由がある。私たちが調べるべきなのは、その『削除された部分』だ」


 彩花は決意を込めて言った。

 翔太は少し躊躇したが、すぐにうなずいた。


「分かった。僕も手伝うよ」


 二人は町の市役所に向かうことに決めた。市役所には、過去の資料や議事録を管理している部署がある。もし、その部分が本当に削除されているのなら、その背後に何かが隠されているはずだ。




 市役所の地下資料室。そこには、大量の古い資料が保管されている部屋があった。

 照明の薄暗い中、彩花と翔太は何時間もかけて、25年前の記録を探し続けた。


「これを見て!」

「見つけたのかい?」

「「これだ!!」」


 彩花と翔太は同時に興奮した声で言った。

 ついに、二人は「削除された部分」に関する記録を見つけた。それは、町の再開発計画が突如として中止される直前に起きた、極めて重要な出来事に関連していた。


 ここで見つけたのは、市議会の記録に残っていた「会議の中断に関する議決書」のコピーだった。その内容には、再開発計画の中止が決定された理由について、異常なまでに詳しく記載されていた。特に、計画が中止された当日、市議会の議員たちが急遽集められ、会議の内容が口外されないように徹底されたことが記録されていた。


「会議の中断に関して、町の財政的な問題や、住民の反発が理由だと説明された。しかし、裏では、それよりももっと深刻な事態が起きていた」


 翔太は読み進めた。


「計画を進めようとした企業の背後に、違法な資金の流れがあったことが明らかになったんだ。しかも、その資金の一部が町の有力者たちに渡っていたという」


 彩花は息を呑んだ。


「それは、つまり……」

「そうだ」


 翔太は静かに考えをまとめるように言った。


「町の再開発計画には、犯罪が絡んでいた。町の有力者たちが、再開発を進めることで、裏で利益を得るために動いていたんだ」


 その瞬間、彩花の頭に一つの考えが浮かんだ。再開発計画が中止されたことが、実はこの町を守る「25年前の奇跡」だったとすれば、この背後に隠された犯罪を明らかにすることが、「次の奇跡」につながるのではないか?


「この情報が明らかになれば、町は大きな混乱に陥るだろう」


 翔太は続けた。


「でも、この真実を知っているのは、もう僕たちだけだ」


 彩花はしばらく黙っていた。その後、決意を込めて言った。


「私は、この町を守りたい。お父さんが選んだ道を、私は今、引き継ぐべきだと思う。だから、私たちがこの真実を明らかにしなければならない」


 翔太はその言葉を聞き、深くうなずいた。


「君の決意を理解した。僕も、できるだけ協力する」




 その夜、彩花の家にて。

 彩花は再び、父の手帳を手に取った。その中にあった一文が、彼女を奮い立たせた。


「君が守るべきものは、町の未来だ」


 父が残した言葉が、今、最も重要な意味を持っている。再開発計画の中止は、町を守るための第一歩だった。しかし、今度はその背後に隠された闇を暴かなくてはならない。父が示した道を歩むためには、何かを犠牲にする覚悟を持たなければならない。


 彩花は決意を新たに、翔太とともに、この町を守るために戦うことを決めた。

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