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25年周期の都市伝説  作者: けろよん


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第13話 目の前の闇

 鉄の扉が重々しい音を立てて開かれると、暗闇が二人を包み込んだ。最初は何も見えなかったが、坂本が持っていた懐中電灯をかざすと、そこには広大な地下空間が広がっていた。空気はひんやりとしており、湿気を含んだ土の匂いが漂っていた。


「これが……?」


 翔太は驚きながらも一歩踏み出した。足元には古びたレンガの床が広がり、その先には巨大な石造りの壁が延々と続いていた。その壁の一部に、いくつかの扉や隠し部屋があった。


 坂本は黙ってその先に進んでいき、少し離れた場所にある小さな扉の前で足を止めた。扉の周りには、明らかに新しい痕跡が残っていた。まるで最近開けられたばかりのような形跡だった。


「ここだ」


 坂本は振り返り、無表情で言った。

 彩花はその言葉に、胸が締めつけられる思いを抱いた。何が待ち受けているのか、想像がつかなかった。けれど、もう後戻りはできない。お父さんの死と、この町に隠された秘密がすべて繋がっている。目の前にある扉を開けることが、その秘密を解き明かす唯一の方法だと、彼女は直感していた。


「中に入って」


 坂本の声が響く。

 彩花は深呼吸をし、翔太と共にその扉を開けた。中には、暗闇の中で何か光を放つものがあった。それは、巨大な金属製の箱のようなものだった。周囲には無数の管や電線が絡まり合っており、まるで工場のような機械的な音が微かに響いていた。


「これが……」


 翔太が声をひそめた。彩花も息を呑んでそれを見つめる。


「これが『遺物』?」


 坂本はうなずいた。


「その通りだ。しかし、この遺物が何を意味するのか、君たちはまだ理解していない」


 彼の言葉には、どこか冷徹な響きがあった。

 彩花はその箱に近づくと、機械的なデザインの中に異常なほどの精緻さを感じ取った。まるで現代の最先端のように見えるが、その技術は確実に現代のものではない。何かが隠されている、という直感が彼女を駆り立てた。


「これ、どうやって動かすんですか?」


 翔太が問いかけた。

 坂本は冷笑を浮かべた。


「動かす必要はない。この箱はすでに動いている。そして、君たちが考えるべきは、この箱がなぜここにあるのかということだ」

「なぜここに?」


 彩花がその言葉を反復する。

 坂本は深く息をつくと、扉の前に立ち、静かに語り始めた。


「25年前、町は再開発の名のもとに、これを埋めることを決定した。この『遺物』は、町の支配権を握るための鍵だ。君のお父さんも、そのことを知り、この箱が町の未来を決定づける存在だということを理解していた」


 彩花は目を見開きながら言った。


「この箱が支配権を握るための鍵……?」


 坂本はうなずき、さらに続けた。


「君のお父さんが選んだ道、それがこの『箱』に関わることだった。そして、再開発計画に乗ったのも、そのためだ。しかし、君のお父さんは、この箱を『封印』することを選んだ。箱が発する力を利用すれば、町のすべてを掌握できるが、その力には危険が伴うことを、彼は知っていた」


 彩花はその言葉を反芻しながら、箱をじっと見つめた。


「でも、何のためにそんな力が必要だったんですか? 町を支配するためだけに、このようなものが必要だったのでしょうか?」


 坂本は一瞬黙ってから、低い声で答えた。


「『遺物』には、町を発展させる力があると言われている。その力を手に入れることができれば、町を支配し、さらに大きな権力を手に入れることができる。そして、その力は一度解き放たれると、どんな手段でも制御できなくなる」


 翔太は急に冷や汗が背中を伝わった。


「制御できなくなる? それって、どういう意味だ? 爆発でもするのか?」


 坂本はゆっくりと後退りしながら、再び無表情で言った。


「箱が持つ力は、ただの物理的な力ではない。意識を持ち、人々の思考や行動に影響を与える力だ。それを使う者によって、町が滅ぼされることも、支配されることも可能だ。だからこそ、君のお父さんは、この箱を封印し、誰にも触れさせなかった」


 彩花はその言葉を聞き、ますます胸が締めつけられる思いを感じた。お父さんが守ろうとしていた「秘密」が、こんな恐ろしいものだったとは――そして、それを手に入れようとする者が現れた今、どうすればよいのか分からなくなった。


「じゃあ、この箱を開けたらどうなるんですか?」


 翔太が尋ねる。

 坂本は冷ややかな笑みを浮かべた。


「その質問に答えるのは簡単だ。この箱を開ける者によって、町の未来は決まる。君たちが開けた時、すべてが変わる」


 その瞬間、彩花の心に一つの疑問が湧き上がった。


「坂本さん……あなたがこの箱を手に入れたのに使わない理由は何ですか?」


 坂本は一瞬、静かに彼女を見つめた後、答えた。


「私はこの町を支配したいのではない。私は、この力を利用して、町を再生させるつもりだ。だが、箱の中にある力を完全に解き放つには、君たちが必要なんだ」


 翔太と彩花は互いに顔を見合わせた。坂本の言う「力」を解き放つことが、町を救うことなのか、それとも破滅させることなのか。その選択を今、二人がしなければならない時が来ていた。


「でも……私たちは、その力を解き放ちたくない。ただ真実を知りたいだけ」


 彩花は静かに言った。

 坂本は無言で笑みを浮かべ、そしてゆっくりと足を進めてきた。


「君たちの気持ちはわかる。しかし、もう後戻りはできない。さあ、選べ。力を解き放つのか、それとも封印して何も知らず去るのか」


 その言葉が、二人の心をさらに迷わせる。箱の力を解き放ったとき、町が再生するのか、破滅するのか……その答えは、二人の手の中にあった。

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