2-12 契約
夜が明け、モルテ達は2人の捜索に向かった。
見つけるのは容易であった。麓付近の雪が白であることを忘れるくらい赤く染まっていたからだ。赤い雪を辿っていくと、仰向けで倒れているナハトを発見した。セイラの姿はない。
「ナハト...!!しっかりして!!」
慌てて駆け寄るマレク。ナハトの上体を起こし支える。
「...ぁ、マレク...くん...」
ナハトは声を出す気力もないのか掠れた声で答える。
「汚いから触らない方がいいよ...このくらいじゃ死なないから...心配しなくていい...」
「そんなこと...!!」
「では何があったか説明してもらいましょうか」
モルテは表情を崩さず、冷静に状況を把握しようとしていた。
「あれ...はセイラちゃんじゃ...ない」
ナハトは弱弱しい声でゆっくりと経緯を説明していく。
ナハトが言うにはあれは”ギーラ”という存在らしい。実体を持たぬ魔族で生物の体を乗っ取り魔力を食らう性質を持っている。セイラも乗っ取られているそうだ。そしてナハトに執着している。
「セイラちゃんをどうしても助けたくて...俺は...」
「代わりに...自分の身を差し出したんだ」
「!?」
個人が保有する魔力。その多くは血液と共に体内を廻っている。セイラの魔力を食らう代わりにナハトが自らの血液を提供し続けた。つまりギーラがナハトをいたぶるのは合意の上ということだ。それによりセイラは完全に乗っ取られず無事である。
「じゃあ今までずっと...あんなことを...?」
「うん...セイラちゃんはこのこと知らないから内緒ね。たぶん傷つくと思うから」
ギーラはナハトが手出しできない人物を標的にし、乗っ取った。そしてナハトと契約を結び、ナハトの魔力を食らう代わりにセイラの安全を保障していた。また護身目的以外での殺生を禁じた。セイラはハイスの眷属であるためギーラもあまり勝手はできない。今回はハイスに始末されることを事前に察知していたギーラがナハトに助けを求めたのだ。
「どうしてそこまでするの...?」
「...大切な存在なんだ。セイラちゃんの体に入られたら俺はどうすることもできない...」
「隠しててごめんね」
微笑むナハト。そのぎこちない笑みは普段のおちゃらけた様子と違い、酷く悲しそうに見えた。




