2-11 豹変
「私は――」
『そうはさせないわ』
突如、セイラの言葉を遮る声が響く。
そしてセイラは負傷しているナハトの腕を掴み、爪を立てる。
「なっ!?っぐ...」
苦痛に顔を歪めつつも必死に声を押し殺す。セイラの纏う雰囲気が変わっている。別人のようであった。妖艶な笑みを浮かべる彼女を見て目を細めるナハト。
「セイラさん!?」
「何者ですか」
驚愕するマレク。モルテは既に刀を構えている。別人の気配を感じているようだった。
「待って!!手を出さないで...」
すかさずセイラを庇うようにして立つナハト。傷口を抉られ苦しそうだ。
「健気ねえナハト。そんなにこの体の持ち主が大事なのかしら?」
先程響いてきた声がセイラから発せられる。
「その体はお前のものじゃない...返せ...」
「駄目よ。この体ならあなたは手出しできないのでしょう?」
「俺を好きにしていい。だから...」
セイラはナハトを掴む手に力をこめる。
「ぐああっ!!」
堪らず悲鳴を上げてしまう。それを聞き恍惚の表情を浮かべるセイラ。
「ナハト!!」
「来る...な...」
「でも...」
「モルテ!!狙いは俺だからマレクくん押さえてて」
そう言ってナハトはセイラの手を引き外へ駆けていった。
「...後で説明してもらいますからね」
モルテは今にも飛び出しそうな様子のマレクを持ち上げながらため息をついた。
「早く追わないと!!」
「もう日が暮れます。探すにしても明日にしましょう」
夜。モルテ達からかなり離れた位置に移動する2人。
「みんなの前では出てくるなよ」
ナハト普段とは打って変わって語気を強めながらセイラに詰め寄る。
「あなたは仲間を巻き込むことを一番恐れているのでしょう?」
「...ちっ。早く終わらせて」
「ふふ」
ナハトの眼前に迫る刃。彼は避けようとしない。夜明けまで2人がどれだけ惨いことをし、されていたのか。それは誰も知る由がない。暗闇が全てを呑み込むように隠してしまった




