2-7 沈黙
モルテが体力のない2人を担いで移動したことによりあっさりと山に登ることができた。マレクは山頂で大きな魔力がぶつかるのを肌で感じていた。緊張からか額に汗を滲ませる。だがモルテが傍にいる。これほど心強いことはなかった。
「遅かったな」
山頂に到達した一行。まずその目に映ったものは、血濡れのハイスとナハトであった。互いに負傷はしているもののハイスがナハトの腕を掴んでおり、ナハトはだらりと力なくぶら下がっている。形勢は一目瞭然であった。
「っ!!」
「ひっ!!」
マレクとセイラはその惨状を目撃してしまい悲鳴を漏らす。
「まじでハイスじゃないですか。まだ生きてたんですか」
モルテだけは動じず真っすぐハイスを見据えている。
「誰かと思えばモルテか。そちらこそよく死にぞこなったものだ」
モルテは無言で刀を構える。それを見たハイスは高らかに笑っている。
「おっと動くなよ?こいつがどうなってもいいのか?」
ハイスはナハトを掴んでいた手に力をこめる。
「が...ぁ...」
みしみしと骨がきしむ音がする。ハイスはこうなることを見越してナハトを人質にしていた。
「モルテ。貴様は強いが同時に誰も失いたくない甘ったれたやつなことを知っている。大人しくしているんだな」
ハイスはモルテが人質に弱いことを知っているようだった。モルテは黙って刀を鞘におさめる。口角をつりあげるハイス。その瞳がマレクに向けられていることを視認した瞬間。
飛び散る鮮血。ハイスの視界が真っ赤に染まる。
「な...に...」
巨大な氷の刃がナハトごとハイスを貫いていた。ナハトの体は両断され、血だまりを広げていく。ハイスには致命傷とまではいかなかったが胸元に大きな切り傷ができている。かなりのダメージを与えられているようだ。
「モル...テ...?」
酷く怯えた様子でモルテを見つめるマレク。信じられないと言わんばかりの視線を感じたのかモルテは目を逸らす。セイラは受け入れられないのか手を口元に当て嗚咽をこぼす。
先程の攻撃は正真正銘モルテが行ったものだ。苦悶するハイス以外全員口を閉じており、沈黙が場を支配していた。




